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1980年に加藤精彦教授のもとでスタートした当教室は、中澤眞平教授(1992〜2007年)を経て2007年から杉田完爾教授へと引き継がれ、教室同窓会の会員は120名になりました。2010年1月現在で在籍中の教室員は70名で、うち48名が山梨医科大学・山梨大学医学部の卒業生です。山梨県内には、山梨県立中央病院の11名(小児科5名、新生児科6名)を筆頭に常勤小児科医が4名以上の関連施設が6施設あり、関連13施設の全てで常勤医が2名以上となりました。加えて、2005年3月には甲府市に、2008年11月には富士吉田市に、それぞれ山梨県および東部・富士地区の小児初期救急医療センターが開設され、夜間・休日には開業・一般病院・大学病院の小児科医が交代で診療に当たり、入院が必要な場合には輪番制の二次病院が対応しています。小児救急体制の整備で、各小児科医の負担が軽減されただけでなく、小児科医相互の連帯感が高まり、さまざまな情報が共有化されて地域医療のレベル向上にもつながっています。今回の新型インフルエンザ流行期の休日には、2つのセンターで合計400名を越える患者さんが押し寄せた日もありました。センターの設置前であれば個々の病院で小児科医が対応に忙殺されたはずですが、問題なく乗り切ることができました。全国的には、常勤小児科医が一人という病院が2005年の小児科学会の集計では30%を占め、相当数の小児科医が厳しい労働環境で消耗している様子がうかがわれます。そんな中で、山梨県は全国的に最も小児科医が働きやすい環境が整備され、甲府市の小児初期救急医療センターは日本医師会の特別賞を受賞して、全国の医師会から見学者が訪れるようになっています。こうした労働環境の整備は、結果として女性医師にとってもキャリアを継続しやすい環境となり、現在20余名の女性教室員が在籍して大学と関連施設で重責を担っています。
2004年に新卒後臨床研修制度が導入されたことで、地方大学の小児科学教室は入局者が減少傾向にあり、当教室でも3年間は入局者がありませんでした。その氷河期とも言える期間も、労働環境の整備が功を奏して乗り越えることが出来ましたが、海外留学や国内研修の機会を遅らせざるを得ない残念な状況にも陥りました。幸い2007年以降は1名、2名、4名と入局者があり2010年も4名が入局予定と、制度導入前の入局者数と同レベルに戻ってきていることから、あと1-2年で海外留学や国内研修の機会を研修制度導入前のレベルにまで戻せる目処が立ってきました。
診療面では、小児科の専門医に加えて教室員がそれぞれ血液・神経・腎臓・循環器・内分泌・糖尿病・遺伝・新生児などの専門医資格を取得し、高度な診療を県内で完遂できる体制も整ってきています。大学においては、骨髄バンク・臍帯血バンクの認定科として白血病などに対して累計で90件を越える造血幹細胞移植が行われ、心臓カテーテル検査は年間200件近く実施される中でコイル塞栓やステント留置などの治療も実績を重ねており、喉頭気管支ファイバーは年間約50件が実施されています。また、救急部との連携で血液浄化療法も積極的に行ない、難治性疾患で成果が上がっています。さらに、独自に開発した種々の神経心理検査で高次脳機能を評価して発達障害・てんかん児の診療に役立ており、難治性腎炎疾患に対しては腎生検で評価し積極的に多剤併用療法を実施して治療成果を上げています。内分泌疾患や肥満症に対しては、遺伝子解析を含めた検査と生活指導も含めたきめ細やかな診療を提供し、毎年実施している糖尿病サマー・キャンプは24回目になりました。加えて2009年に遺伝子疾患診療センターが開設されて、遺伝疾患に対して包括的な医療を行う体制が整いつつあります。2011年度には大学に新生児集中治療部が開設されることが決定し、設備とともに小児科スタッフの増員と看護体制の強化が図られて、更なる診療レベルの向上が期待されます。一方、山梨県立中央病院では、主に感染症の最重症患者が搬送されてインフルエンザ脳症に対する血漿交換などの集中治療で実績を上げ、新生児科の開設によって山梨県の新生児死亡率が全国で39位から3位にまで改善しています。それ以外の関連施設も、地域の基幹病院として診療や予防接種・健診などの保健活動を行うほかに、各常勤医の専門性も発揮した診療活動を行なっています。
教育面では、5年次の学生実習において学生が自主的に学べるよう工夫を重ねてきています。特徴は、病棟や外来での実習に加えて13コマのクルズスにあります。7コマは非常勤講師である関連施設の常勤医が担当し、多くのクルズスで脳波や骨髄標本などの課題を学生が予習した上でレクチャーが行われるため学習効果も上がっています。6年次の選択実習では、大学に加えて関連施設での実習も行なって毎年多くの希望者があります。このように関連施設の常勤医も教育に加わることで学生の評判も良く、教室全体として学生はもちろん研修医や新入局員を育てていこうという雰囲気作りにもつながっています。
研究面でも、各施設に常勤医が複数いることで、週に1回の研究日を大学での診療・教育だけでなく研究に充てることが可能になっています。その結果、診療グループごとにテーマを持って継続的に研究が行われて、これまでに学位を得た60名のうち8割以上が教室内で行われた研究で取得しています。また、こうした研究の多くはimpact factorの高い英文誌に採択されています。このように多くの教室員が研究を経験することで日常診療のレベルも向上して、小児科の主要専門学会の施設別演題数が2領域で3位以内に3領域で10位以内に入っており、このように広い分野で上位にある大学は他にはなく、ナショナル・センターである国立成育医療センターにも遜色ない成果となっています。
以上のように当教室では、長い時間を費やして大学のみならず山梨県内の関連施設を含めて小児科医の労働環境を整備することで、結果的に診療・教育・研究体制の基盤を構築してきました。これは一人一人の教室員の努力とともに、関連する診療科やコメディカル・スタッフさらには行政や医師会の皆様のご協力の賜物であります。今後は、この体制を礎にして山梨県内だけでなく周辺地域の小児医療にも貢献していきたいと考えておりますので、今後ともご支援を賜りますよう宜しくお願い申し上げます。また、私達と一緒に働いてみたいという方は、是非ご一報下さい。
(平成22年1月・記)

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