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〇〇毛と毛生え薬?

解剖学講座細胞生物学教室 准教授 成田 啓之(2015年5月)

英国で博士課程の学生だった頃の一枚(言わずもがなですが左から2人目)。同時期に薬理学講座の小泉教授も渡英されていたそうで、山梨で初めてお会いして英国に共通の知りあいがいてびっくりしました。

英国で博士課程の学生だった頃の一枚(言わずもがなですが左から2人目)。同時期に薬理学講座の小泉教授も渡英されていたそうで、山梨で初めてお会いして英国に共通の知りあいがいてびっくりしました。

 私は現在、一次繊毛(いちじせんもう)と呼ばれる細胞表面の突起の研究をしています。これは長さ5マイクロメートルほどのまつ毛のような外観をしていて、私たちのからだを構成するほぼ全ての細胞に存在している細胞小器官なのですが、一般にはあまり知られていないのではないかと思います。19世紀には既に研究者によって記録されている構造物なのですが、どのような働きをしているのかがようやくわかり始めたのは1980年代ころからです。
 その一次繊毛の機能ですが、一言で言うと細胞が外部環境からさまざまな刺激を受けとるためのセンサーとしての役割を担っています。例えば網膜には光を刺激として受け取り、その情報を脳へと伝える細胞がいますが、その光を感じる部分は一次繊毛が特殊化したものとなっています。また胎児が成長していく過程で見られる形態形成という現象には様々なシグナル分子が関わっていますが、一次繊毛がないとその情報をうまく受信できなくなるものがあります。
 この原稿を書くにあたり、一次繊毛についてどのように平たく説明したら良いか、キーワードを用いて検索したところ、「アホ毛」なる単語を発見しました。私的にはまあ概ね、私たちの細胞がこのようなものを持っていると思っていただいても良いのではないかと思います・・。
 閑話休題。一次繊毛の機能が損なわれると、特徴ある奇形をもって産まれることがあり、またそうでなくても時間が経つにつれ、網膜や腎臓や肝臓、脳など、様々な臓器や組織の機能が低下していくことがあります。こうした疾患は繊毛病と呼ばれていますが、今のところ有効な治療法が存在しない難病です。
 また一次繊毛に関してはまだわからないことも多く残されています。その機能には数百種類ものタンパク質が関わっていると考えられていますし、また組織ごとにその機能も特殊化していると考えられています。繊毛病の病態に関しても今の知識ではうまく説明できないことがあります。私も現在おこなっている研究が、将来、繊毛病に対する治療法開発へと繋がることを夢見ています。例えば一次繊毛を作ることが出来ない患者に効く「毛生え薬」のようなもの、出来ると良いのですが。
 以上、本稿のテーマである「自らの研究と将来の夢」を平たくまとめますと、「アホ毛の研究と毛生え薬の開発」とでも言えましょうか・・。
 最後にもう一つ。科学は世界中の人たちの連綿たる研究活動の積み重ねによって成り立っています。私はこれまで世の中の色々なことを見たい、知りたい、挑戦したいといった思いに身を任せて研究を行ってきました。医学部の学生にとって研究は卒業に必須ではありませんが、その大切さを伝え、意欲を持つ学生には将来世界のどこでも研究に飛び込んでいけるよう、基本手技や論文の読み書きなど、自分の知っていることは教え、そして知らないことは共に学んでいければと思っています。そうして将来を担う人材育成の一端を担うことが出来れば、教員冥利に尽きるというものです。
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