■ジャーナルクラブ通信バックナンバー
トップページ | > | ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 | > | 2005.11.16 |
Contradicted and Initially Stronger Effects in Highly Cited Clinical Research
~ 高頻度に引用されている臨床研究の文献が反証されたり、
他の同等の研究より強い効果が示されることの影響 ~
~ 高頻度に引用されている臨床研究の文献が反証されたり、
他の同等の研究より強い効果が示されることの影響 ~
出典:
JAMA (2005) 294, 218-228
著者:John P. A. Ioannidis
著者:John P. A. Ioannidis
- <論文の要約>
-
背景:
臨床研究での介入効果がその後の研究で否定されると、論争や不定性が生じる。特に影響力の大きい研究が関与している場合、激しい論争が展開される。
目的:
引用件数の多い研究の結果が否定される頻度や、その後の同様な研究ではより弱い効果として報告される頻度、あるいが何らかの研究の特性が、その後その研究結果が反証(否定)されることにどう関与しているかを明らかにする。
研究デザイン:症例対照研究
臨床系のある3主要誌、またはインパクトファクターの高い専門誌に1990-2003に掲載され、1000回以上引用されたオリジナルの臨床研究すべてを対象とした。引用率の高い対象論文の結果を、その後実施された、研究の質が同等かそれ以上の研究の結果と比較した。引用率がそれほど高くない対応する研究においても、比較のために同様に解析した。
結果:
・対象となる高頻度に引用されている臨床研究49件のうち、45件は介入が有効だと主張。
・このうち、
その後の研究で相反する結果が示されたもの:7件(16%)
介入効果がその後の研究で弱く報告された研究が7件(16%)
その後の研究で同じ効果が確認されたのが20件(44%)
その後の研究でも結果がほとんど変わらなかったのが11件(24%)だった。
・引用件数が多く、効果がその後の研究で否定された、あるいはその後の研究で弱い効果が報告されたオリジナル研究の割合は、非ランダム化試験の6件中5件に対し、ランダム化試験では39件中9件と有意差が認められた(P=0.008)。
・ランダム化試験のうち、効果がその後否定されたり、弱い効果が報告された研究と、同程度の効果がその後示された研究とを比較したところ、前者はサンプル数が小さかったが(P=0.009)、論文の発表後早期(3年以内)ならびに全期間での引用件数に関して、有意差はなかった。対照とした研究は、引用率の高い研究と比較して反証される割合が有意に高いことはなかったが、引用率の低い研究では「ネガティブ」な結果の報告が多かった。
結論:
臨床介入研究のうち、引用件数の多い研究の結果はその後の研究で否定されたり、報告された効果が他の研究より強かったりすることは珍しくない。引用率が高い研究の結果がどの程度反証されるのか、されないのかについては、さらなる研究が必要である。引用件数の多い非ランダム化試験はその後の論争の対象になりやすいが、引用件数が多いランダム化試験であっても小規模研究の場合はいずれ反証が出されることもある。
- <ジャーナルクラブでのディスカッション>
-
この研究は論文を多く読む必要があり手間がかかりそうだ。
⇒よい雑誌に掲載される論文は、どれも手間をかけているだろう。
論文が出版されてから時間を経ると反証されることが多くなるのは当然ではないか?
⇒当然かもしれないしそうでなかったかもしれないが、証明はされていなかったと思う。
新しい発表された知見は、十分に吟味する必要がある、というのは当然の結論ではないか?
⇒当然かも知れないが、エビデンスはなかったのだと思う。
まとめ
論文の著者は、当然と考えられていた仮説を証明している。この研究は誰でも行なえるデザインであり予算もかからない、しかし誰も気がつかなかった作業仮説をたてている。低予算で高生産の論文である点に注目したい。