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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
Division of Medicine, Graduate School Department of Interdisciplinary Research,
University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2006.07.12

2006年7月12日 担当:古屋、李、鈴木

Pattern and severity of early childhood caries
~ 早期小児う蝕におけるパターンと重症度 ~
出典: Community Dent Oral Epidemiol. 2006 Feb;34(1):25-35
著者:Hallett KB, O'Rourke PK.
<論文の要約>
目的:
この研究の目的は、オーストラリアにおける就学前の子どもを対象に、選択された社会的、行動学的変数と、ECCパターン、重症度との関連を検討し、特定のECCにおける統計学的モデルを探索することである。

方法:
4-5歳の小児2515名を対象とした横断研究である。就学前に、未処置のう蝕、喪失歯、治療済みの歯/外表面(dmft:乳歯の一人当たりのう蝕経験歯数/dmfs乳歯の一人当たりのう蝕経験歯面数)の指数を検査し、社会的、人口統計的、出生、乳幼児期の食事、口腔内、一般的な健康態度に関する情報を得るための自記式の調査票を用いて調査が行われた。
う蝕の子供(847名)を、う蝕パターンによって前歯あるいは奥歯、dmfsスコアによって6以上の重症群あるいはdmfsスコアが5以下の非重症群に分けた。
データはχ二乗検定と、ロジスティック回帰モデルを用いて解析した。

結果:
前歯のECCパターンにおいて有意な関連が認められた変数は、白人以外の民族的背景をもっていること(オッズ比=2.1、95%信頼限界=1.4-3.1)、哺乳瓶によって日中だらだらと水分摂取していること(オッズ比=1.9、95%信頼限界=1.3-2.7)、男児(オッズ比=1.6、95%信頼限界=1.2-2.2)、夜間哺乳瓶をくわえて寝ていること(オッズ比=1.5、95%信頼限界=1.1-2.2)であった。
重症ECCパターンにおいて有意な関連を認めた変数は、哺乳瓶によって日中だらだらと水分摂取していること(オッズ比=2、95%信頼限界=1.4-2.8)、出生時の母親の年齢が24歳以下(オッズ比=1.8、95%信頼限界=1.3-2.7)、白人以外の民族的背景をもっていること(オッズ比=1.6、95%信頼限界=1.1-2.5)、夜間哺乳瓶をくわえて寝ていること(オッズ比=1.5、95%信頼限界=1.1-2.2)であった。

考察:
乳幼児期の哺乳栄養の習慣(日中あるいは夜間、寝かしつけるために哺乳瓶から水分摂取していること)と、白人以外の民族的背景が4-5歳のオーストラリア小児におけるECCパターンとECCの重症度の両方の有意な決定要因であった。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
・今回の論文は、幼児の虫歯について、前歯のほうに生じるものが、奥歯に生じるものよりも、より早期の栄養方法などの影響を受けている、という仮説から行われた研究である。

・そして、NIHが1999年に提唱した診断基準を用いており、まだそれにのっとった研究はあまり行われていないことから、この研究の意義が見えてくる。

・前歯を中心とするう蝕に影響していたのは、哺乳瓶による水分摂取であるということが結論であった。以前より前歯を中心とするう蝕には、哺乳瓶が関連していると考えられていた。

・哺乳瓶で、ちびちびと一日中飲んでいたり、夜寝るときに哺乳瓶を抱えてくわえながら寝ていたり、このようなことがより早期の虫歯の原因、と考えられるということである。

・あくまでも横断研究であり、後ろ向きにアンケートを実施している点や、サンプルに少しバイアスがありそうな気がするが、同様の結果が先行研究から得られていることもあり、ある程度信頼性のある結果と言える。

・塩山データからも、同様の指標を用いて検討することが可能かもしれない。

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