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山梨大学大学院総合研究部医学域 社会医学講座

社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
Division of Medicine, Graduate School Department of Interdisciplinary Research,
University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2007.06.27

2007年6月27日 担当:下園、西村

Walking behaviour and glycemic control in type 2 diabetes: seasonal and gender differences-Study design and methods
~ 2型糖尿病の歩行方法と血糖コントロール:季節と性別の違いによる研究デザインと方法 ~
出典: Cardiovasc Diabetol. 2007 Jan 15;6:1.
著者:Dasgupta K, Chan C, Da Costa D, Pilote L, De Civita M, Ross N, Strachan I, Sigal R, Joseph L.
<論文の要約>
背景:
高血糖は、血管損傷や、例えば失明、腎不全、心疾患や脳梗塞といった合併症の一因となり、成人の2型糖尿病で典型的に起こっている。より高い水準の身体活動レベルは、ヘモグロビンA1cの改善に関連がある。A1c1%の増加は、心疾患や脳梗塞のリスクを18%増加させることに関連があると証明されている。2型糖尿病のカナダ人において、ウォーキングによってA1cが低下することと、寒い気温や荒れ模様の天気の冬の後、毎年A1c値が増加するであろうということに関連がある、と仮定している。

研究方法:
カナダのモントリオールやケベックで実施されている前向きコホート研究において、2型糖尿病患者の男女各100人を対象に、1年を通じて観察し、1シーズンごとに1回、年4回アセスメントを実施した。アセスメント項目は以下である。(1)万歩計を使用し、2週間の歩行数を観察した。(2)研究センターに来所した際に、静脈血のA1cサンプルの採取、身体計測の評価を行い、さらにウォーキングとA1cの両方またはどちらかに影響があると思われる他の項目(例えば食事頻度、うつ症状、投薬状況など)に関する完成された質問紙に回答してもらった。春秋のA1c値と、夏冬のA1c値の段階的又は日単位の差異の関係は、交絡を可能な限り調整した多変量直線回帰モデルにて調べる。潜在的な知識を持った“ユーザー”(健康の専門家、患者グループ)が共同研究者にいる場合の結果の解釈では、知見を含めた解釈が重要である。

考察:
われわれが活動的な生活しやすい天気に変化させることができなくても、季節ごとや天候関連の変化を考慮に入れた、治療戦略をデザインすることが出来る。たとえば、カナダ人の2型糖尿病の男性、女性について、季節ごとのA1c値の変化を明らかにし、またそのことが以下の3点を導く重要な理解につながる。(1)身体活動レベルを、とても好都合な天気の状態における状態で維持するかあるいは上回るようにすること。戦略は、室内活動などに変更することや、好都合な状況ではない時にあわせることもその中に含むだろう。(例えば、適したアウトドアウェア。頻回であるが時間の短い活動)(2)冬季は血糖降下剤を増量し、夏季はそれらの服薬が減少するといった、季節変動による予測。(3)明るい陽光の元で活動を行う影響と、日の当たる時間が減少している時にうつ症状の増加が見られることに伴う、2型糖尿病の患者におけるA1cに関する検証。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
・この論文からは、研究の計画や方法をどのように導き出しているのか、その道筋がわかった。
・原著論文とは違い、方法論を書いた論文なので、イントロは長くなっている。
・研究目的としていることに影響する要因について整理し、図式化すると分かりやすい。
・年齢の制限は、19歳以上で、上限はなし。罹病期間の制限は、血糖変動の大きい診断後1年以内は除外するであったが、年齢や、罹病期間の影響も考慮することが必要ではないか。
・対象数の設定については、信頼区間の設定や、アウトカムごとに必要な対象数の考え方が述べられていて良くわかった。
・研究計画では、アウトカムに影響する要因について、どのように考えていくかを明らかにし、研究方法を論理的に書くことも必要である。

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