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2008年1月9日 担当:戸澤、今留
Selective serotonin reuptake inhibitors (SSRIs) and routine specialist care with and without cognitive behaviour therapy in adolescents with major depression: randomised controlled trial
~ 思春期大うつ病患者において、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)と専門家による通常治療に認知行動療法を併用した場合と併用しない場合の有効性比較:無作為化対照試験~
~ 思春期大うつ病患者において、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)と専門家による通常治療に認知行動療法を併用した場合と併用しない場合の有効性比較:無作為化対照試験~
出典:
BMJ 2007;335;142-146.
著者:Ian Goodyer, Bernadka Dubicka, Paul Wilkinson, et al.
著者:Ian Goodyer, Bernadka Dubicka, Paul Wilkinson, et al.
- <論文の要約>
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目的:
中等症~重症大うつ病を有する10代の青少年において、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)と通常の臨床治療に、認知行動療法(CBT)を併用した場合に、 SSRI+通常臨床治療のみに比べて、短期での効果が優れているかどうかを明らかにする。
研究デザイン:
実際の診察現場で行う無作為化比較試験
設定:
英国のマンチェスターとケンブリッジにある外来クリニック6施設
参加者:
中等症~重症大うつ病あるいは大うつ病の可能性が高く、初回の簡易介入治療に反応しなかった11~17歳の青少年208人。自殺傾向、うつ病、あるいは行為障害のある青少年を対象に含めた。
介入:
103人の対象児がSSRI+通常臨床治療、105人がSSRI+通常臨床治療+CBTを受けた。介入は12週間実施し、その後16週間の維持期間を設けた。
主要評価項目:
主要評価項目はHealth of the Nation outcome scales for children and adolescentsスコアの変化とし、試験開始時から12週目までを1次エンドポイント、28週目までを追跡エンドポイントとした。副次評価項目は、気分・感情質問票、改訂小児うつ評価尺度、小児健康総合評価尺度、臨床総合印象改善尺度の変化とした。
結果:
12週目の時点で、主要評価項目に基づく治療効果は-0.64(95%信頼区間,-2.54~1.26;P=0.50)であった。長期的解析では、主要評価項目(平均治療効果,0.001;95%信頼区間,-1.52~1.52;P=0.99)および副次的評価項目に関して2群間に治療効果の差は認められなかった。平均すると、自殺傾向および自傷行為の減少がみられた。CBTが自殺念慮や企図に対して予防効果を有するというエビデンスは得られなかった。28週目までに、全対象者の57%が著しい改善あるいは非常に著しい改善を示したが、20%では改善が全く見られなかった。
結論:
中等症~重症大うつ病を有する青少年に対して、通常臨床治療とSSRI療法に加えてCBT を併用しても、通常臨床治療とSSRIのみに比べて、28週目までの転帰をさらに改善するという証拠は得られなかった。
- <ジャーナルクラブでのディスカッション>
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■ネガティヴデータでもBMJに掲載された理由は何であろうか。
→RCT、対象者の選定、認知行動療法の実施が良かったのではないか。
■SSRIは効果がある一方で自殺企図を増すとも言われている中、研究で用いているのは倫理的に問題ではないか。
→研究開始時には自殺企図を増す危険性は言われておらず、途中でこの報告があったと考えられる。もし、研究の途中で報告がなされたのであれば、その時点で中止する必要があったかもしれない。
■参加者の選定や割付について丁寧に書かれており、選定の意味が理解できた。
■認知行動療法そのものの効果が見えにくいため、これのみを治療に行う群があっても良かったか?
■Ordinal logistic random effects model analysisとはどのような分析か。