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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2008.4.16

2008年4月16日 担当:西村、鈴木

Diabetic Nephropathy in 27,805 Children, Adolescents, and Adults With Type 1 Diabetes: Effect of diabetes duration, A1C, hypertension, dyslipidemia, diabetes onset, and sex
~ 小児・思春期・青年の1型糖尿病27,805人の糖尿病性腎症に対する、糖尿病の発病、AIC、高血圧、脂質異常、糖尿病発症年齢、性別の影響 ~
出典: Diabetes Care. Oct 2007. Vol. 30, Iss. 10; 2523-8
著者:Klemens Raile, Angela Galler, Sabine Hofer, Antje Herbst, et al.
<論文の要約>
目的:
腎障害の最新のプロフィールとリスクへの関与について、小児と思春期に発病した1型糖尿病の大規模な前向きコホート研究である。

方法:
ドイツにおける全国的な前向き調査である、Diabetes Documentation System(糖尿病調査機構)の調査から合計2万7805人の患者が今回の解析対象者である。対象者の選択基準は、これまでにしっかりと同定されている分類によって、少なくとも2つ、書面による尿の分析記録が存在していることである。尿の分析、治療計画、糖尿病余病、および危険因子が前向きに記録された。ベースラインにおける対象者の基本属性は、診断された年齢の中央値が9.94歳(四分位範囲5.8-14.3)、最後に追跡された対象者の年齢の中央値は16.34歳(12.5-22.2)、および追跡期間の中央値は2.5年間(0.43-5.3)である。腎障害の累積発症率についてはカプラン-マイヤー分析、リスクファクターとの関連はロジスティクス回帰分析を用いて解析が行われた。

結果:
腎障害の分類を行ったところ、2万6605人は正常、919人がミクロ(微量)アルブミン尿、78人がマクロアルブミン尿として分類された。そして、203人の患者が末期腎臓病(ESRD)であった。糖尿病持続期間を40年とした場合に、25.4%(95%のCI22.3-28.3)はミクロアルブミン尿、9.4%(8.3-11.4)は、マクロアルブミン尿かESRDであった。ミクロアルブミン尿の危険因子は糖尿病持続時間(オッズ比1.033(P<0.0001)、A1C(1.13、P<0.0001)、LDLコレステロール(1.003、P<0.0074)、および血圧(1.008、P<0.0074)であった。また、小児期の糖尿病発病は(1.011、P<0.0001)とリスクになっていた。男性はマクロアルブミン尿の進行に関連していた。

結論:
糖尿病持続期間、A1C、脂質異常、血圧、および男性は腎障害のための危険因子として特定された。したがって、1型糖尿病患者にとって、代謝調節、そして脂質異常と高血圧の早期診断、適切な治療が重要である。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■大規模な前向きコホート研究であると言っているが、方法をみると、登録は前向きであるが、データは後ろ向きのものが含まれている。

■データ登録の終了時はあるが、開始された年の記載がない(平均の追跡期間は示されている)。

■追跡期間中2回尿検査を行ってデータを出しているが、ミクロまたはマクロアルブミン尿と、リスクファクターとの関連をみているため、横断研究であるといえる。

■属性について、本文では中央値の値を出しているが、表1では平均±SEの値を表記しているため、わかりにくい。また平均±SEであるのは、正規分布でないためだろうと思われる(SDにすると幅が広がってしまう)。年齢は範囲が広いため、平均を出すより、中央値の方がわかりやすいのではないか。年齢以外は、正規分布すると思われ、平均で良いと思われる。

■対象の年齢範囲が不明である(糖尿病持続期間が40・45・≥50の対象が含まれていたのか)。そのため、生存解析で示される結果がわかりにくい。よく見る解析方法としては追跡期間をx軸に示すことが多いと思われるが、対象者の糖尿病罹患期間をx軸に示している(カルテの記載?)。

■結果では、オッズ比が低くてもそのリスクの期間や年齢、値が上がれば上がるほどリスクとなることを示している。大規模な調査であるため影響が小さくても有意なリスクファクターとして検出されたと考えられる。





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