PAGE TOP

国立大学法人

山梨大学大学院総合研究部医学域 社会医学講座

社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
Division of Medicine, Graduate School Department of Interdisciplinary Research,
University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2008.2.13

2009年6月3日 担当:高岸

Double-blind, placebo-controlled, randomized study of chlorhexidine prophylaxis for 5-fluorouracil-based chemotherapy-induced oral mucositis with nonblinded randomized comparison to oral cooling (cryotherapy) in gastrointestinal malignancies
~ 胃の悪性腫瘍患者における5FUベースの化学療法に起因した口内炎に対するクロルヘキシジンの予防効果に関する研究(2重盲検で、プラセボ群‐コントロール群のランダム化比較試験)と口腔内のクーリング(クライオセラピー)による非盲検化のランダム化比較試験 ~
出典: Cancer Volume 112,Issue 7,2008. Pages: 1600-1606
著者: Jens Benn Sorensen, Torben Skovsgaard et al.
<論文の要約>
背景:
研究の目的は、胃腸の癌におけるフルオロウラシル(5-FU)ベースの化学療法に起因した口内炎に対する、クロルヘキシジンを使用したうがいによる口内炎の予防効果をプラセボ(偽薬)とクライオセラピーとの比較の上、評価すること。

方法:
未治療の胃癌に対する5FUとロイコボリンの化学療法を受けている患者を、A群:1日3回のクロルヘキシジンうがいを3週間行なう群、B群:2重盲検法でランダム化してA群と同様の方法で偽薬(生理食塩水)を使用する群、C群:砕いた氷を使用して化学療法の間の45分間クライオセラピーを行なう群にランダムに振り分けた。 患者は口内炎のグレード(CTCのグレード分類)と口内炎の持続時間に関して自己報告。

結果:
ランダマイズされた225人の患者のうち、206人(それぞれA群:70名、B群64名、C群:63名の患者)はアンケートに答えた。患者は、診断や(癌の)ステージ、年齢、性別、嗜好、およびパフォーマンスステイタス(健康状態)、喫煙習慣に関して調整した。口内炎のグレード3-4はA群(13%、P‹.01)とC群(11%、P‹.005)より 、B群(33%)で頻繁に起こった。 持続時間はA群(P=.035)とC群(P=.003)よりB群が有意に長かった。

結論:
口内炎の頻度と持続時間はクロルヘキシジンとクライオセラピーで有意に改善・予防された。 クライオセラピーは簡便、低コストだが化学療法中に行うため応用しづらい。充実性腫瘍で口内炎を起こしやすい化学療法を受けている成人患者の集団で、クロルヘキシジンの予防効果を示した無作為化二重盲検による初めての評価。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■きちんと計画されて実行された実験研究。

■他のコンテクストでも効果あるかが次なる課題か(別のガン治療でも有効か)

■クロルヘキシジンとプラセボの味の違いはいかほどか。完全な盲検とするのは難しそうな印象。
クロルヘキシジンは医薬用殺菌薬であり殺菌効果の持続時間が長いという利点がある。エタノールを添加した製剤が多く、洗口液(うがい薬)には適さないものもある。日本では過去にアナフィラキシーを起こした事例があるため口腔粘膜以外への使用は禁忌扱いとなっている。しかし、アメリカでは粘膜に使用される第一選択薬となっている。欧米では20年以上前からうがい薬としては一般的だが、日本では最近になって低濃度の認可がおりたところであり(商品名:GUM、コンクールF)、欧米の同濃度の製品は国内では使用できない状況である。



前のページに戻る