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社会医学講座 | 山梨大学医学部

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ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2009.6.10

2009年6月10日 担当:安田

Physical Activity during Adulthood and adolescence in Relation to Renal Cell Cancer
~ 青年期および思春期の身体活動と腎細胞がんとの関連 ~
出典: American Journal of Epidemiology 2008 vol.168, No.2 149-157 DOI:10.1093/aje/kwn102
著者: Steven C. Moore, Wong-Ho Chow, Arthur Schatzkin, Kenneth F. Adams, Yikyung Park, Rachel Ballard-Barbash, Albert Hollenbeck, and Michael F. Leitzmann
<論文の要約>
背景:
身体活動と腎細胞ガンの関係におけるエビデンスは首尾一貫していない。

方法:
ベースライン時(1995-1996年)に50-71歳である482386人(男性289503人 女性192883人)のアメリカの大規模前向きコホートにおいて腎細胞ガンと身体活動との関係を調査した。ベースラインで参加者は少なくても20分は行なっている運動頻度、日々の定期的な活動強度、青年期における身体活動頻度について報告を行なった。

結果:
8.2年間(2003年12月)の追跡で1238人が腎細胞ガンに罹患した。腎細胞ガンのリスクファクターで調整した多変量コックスの回帰モデルで解析し、現在の運動、日常行なっている身体活動、青年期における活動は腎細胞ガンのリスク低減に関係があることを認めた。最も低い活動レベルに対する最も高い活動レベルにおける多変量相対危険は現在の運動で0.77(95%信頼区間0.64-0.92 トレンドp=0.10)、日常行なっている身体活動で0.84(95%信頼区間0.57-1.22 トレンドp=0.03)、青年期における活動で0.82(95%信頼区間0.68-1.00 トレンドp=0.05)であった。

結論:
青年期における活動を含め身体活動の増加が腎細胞ガンのリスク低減に関連していた。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■よく記述された疫学論文。

■身体活動の測定にBaecke質問紙(kappa係数0.40)に類似したものを使用しているがどの程度類似しているのか不明なため測定の正確性が評価できない。

■生物学的メカニズムとの整合性はどうか。

■BMIを調整している。BMIは交絡要因か、中間要因か。

■「青年期の身体活動の影響について検討した初めての研究」とうたっている。ベースラインから30年前の情報なため思い出しバイアスに課題が残る。ベースラインまでの30年間のアウトカム発生を考慮せず、フォローアップまでの8.2年間に限定し比例ハザードモデルを組むというデザインである。理論モデル上どのようにこれを正当化できるか。ほとんどの腎細胞がんが壮年期以降で発生する、という事実が一部正当化に寄与するかもしれない。

■3つの身体活動(現在の運動、仕事を含む日々の身体活動、青年期における身体活動)に分けて分析している。最近の流行としては、この3つを纏め上げて「生涯にわたる身体活動レベル」スコアを算出してその影響を検討する、というのがある。




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