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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2012.2.29

2012年2月29日 担当:杉田

Lifetime Risk of Cardiovascular Disease
~ 心血管疾患の生涯リスク ~
出典: N Engl J Med. 2012 Jan 26;366(4):321-9.
著者: Jarett D.Berry, Alan Dyer, Xuan Cai, Daniel B. Garside, Hongyan Ning, Avis Thomas, Philip Greenland, Linda Van Horn, Russell P. Tracy, Donald M. Lloyd-Jones.
<論文の要約>
背景:
心血管疾患の生涯リスクは成人における黒人、白人の年齢階層にわたって報告されていない。

方法:
45、55、75歳時点で測定された心血管疾患のリスクファクターを持つ257,384名の黒人・白人の男女を含む18のコホート研究から個々のレベルでメタ分析を行った。血圧、コレステロール値、喫煙状況、糖尿病状態を5つのリスク因子カテゴリーに分類し用いた。余生は各年齢カテゴリー別に算出され、心血管生存例は競合イベントとして処理された。

結果:
それぞれのリスクファクター層にわたって心血管疾患生涯リスクにおいて、著しい相違を観察した。55歳群で、リスク因子ファクタープロファイルが至適であった群(総コレステロール値<180mg/dL、血圧<120/80 mmHg、非喫煙、非糖尿病)は、2つ以上重大なリスクファクターをもつ群と比べて、80歳までで心血管疾患死が大幅に低かった(男性間;4.7% vs. 29.6%、女性間;6.4% vs. 20.5%)。至適なリスク因子プロファイルを持つものも、致死性冠動脈心疾患もしくは非致死性心筋梗塞の生涯リスク(男性間;3.6% vs 37.5%、女性間;<1% vs 18.3%)や、致死性もしくは非致死性脳卒中の生涯リスク(男性間;2.3% vs 8.3%、女性間;5.3% vs 10.7%)も低かった。リスク因子分類での同様の傾向は黒人や白人間で、様々な出生コホートを通じて観察された。

結論:
リスクファクターの負担における相違は心血管疾患の生涯リスクにおける著しい相違と解釈し、これらの違いは人種や出生コホートを通して一致している。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■18のコホート研究によるメタ分析としているが、人種に関連するもの以外はMultiple Risk Factor Intervention Trial(MRFIT)がふくまれていないのは、サンプルが大きいだけなのか。本当は結果に影響する何かがあったのではないか。純粋にMRFIT以外の17のコホートで研究を行えばよかったのではないのか。

■個々人のリスク因子プロファイルを5つに分類しているが、例えば「2つ以上の重大なリスク因子をもつ群」とあるが、その2つがどの変数を示しているのかがわからない。もしかしたら、変数ごとに見ていくと結果が異なるのではないのか。→臨床上の疾病の診断基準として、ある項目のうちいくつ以上あてはまれば診断がつくということもあるため、このような分類も良いのではないか。

■Fig 2, 3で示された曲線は、サンプル数が多いためある程度なめらかな曲線になっている。N数が少ないと凸凹なものとなる。もしかしたら、全てのリスク因子が至適である群や1つ以上至適でないリスク因子をもつ群のサンプル数は2つ以上主要なリスク因子を持つ群よりもずっと少ないため、図の様な線になっていると考えられる。

■カプラン・マイヤー法で累積生存率曲線を見ているが、ログ・ランク検定やコックス比例ハザードモデルを用いていない理由は何か。→著者らは、心血管疾患のリスク因子プロファイルによる分類で生涯リスクの違いの傾向を見る事が目的であったため、検定を行わなかったのではないか。




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