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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2016.9.14

2016年9月14日    担当:平出

Association of pediatric dental caries with passive smoking
~ 受動喫煙と小児の齲蝕との関係 ~
出典: JAMA. 2003 Mar 12;289(10):1258-64.
著者: Aligne CA, Moss ME, Auinger P, Weitzman M.
<論文の要約>
【背景】
齲蝕は子供たちのもっとも一般的な慢性疾患であり、特に貧困地域に住む人々に影響を与えているが、その理由は明らかではない。受動喫煙は、齲蝕のために改善できるリスク因子である可能性がある。

【目的】
齲蝕と血清コチニン濃度との関係の調査を検証すること。

【デザイン、セッティング、対象者】
The Third National Health and Nutrition Examination Survey(第三回国民健康栄養調査:1988-1994)において、歯科検診と血清コチニンレベル測定両方のデータを有する4-11歳児3531人の横断データを用いた。

【主要アウトカム評価】
受動喫煙は血清コチニンレベル0.2 ng/ml~10 ng/mlと定義し、齲蝕は崩壊(未充填)と充填済み歯面と定義した。

【結果】
25%の子供が少なくとも1つの未充填齲蝕歯面を有し、33%が少なくとも1つの充填済み歯面を有していた。53%が受動喫煙とされる血清コチニンレベルを有していた。コチニンレベルの上昇は、乳歯において崩壊歯面(オッズ比, 2.1;95%信頼区間[CI], 1.5-2.9)と充填歯面(OR,1.4;95%CI,1.1-1.8)両方に関連していた、しかし永久歯では関連が認められなかった。この関連性は、年齢、性別、人種、家庭の収入、居住地域、歯科受診頻度、血中鉛濃度を調整後も継続して認められた。乳歯の齲蝕において、調整後のオッズ比は崩壊歯面が1.8(95%CI,1.2-2.7)であり、充填歯面が1.4(95%CI, 1.1-2.0)であった。我々は、集団寄与危険割合を崩壊歯面27%、充填歯面14%と推定した。

【結論】
環境たばこ煙と子供たちの齲蝕リスクとの間に関連が認められる。受動喫煙の減少が、多くの医学的問題の予防のためだけでなく、子供の歯の健康を促進するために重要である。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
    ■歯質を強化し齲蝕になりにくい歯を作るフッ素の影響や、齲蝕原因菌を除去する主な手段であるブラッシング習慣等、齲蝕予防に関して関連性の高いデータが欠如しているため、ETS(環境たばこ煙)以外の要素が齲蝕の原因である可能性を否定できない。
    ■子供の受動喫煙に対する明確な血清コチニン基準値が示されておらず、本研究では中央値である0.2 ng/mlを基準値として用いている。しかし、検出限界レベルである0.05 ng/mlより高い値で分析しており、過小評価と考えられるため、結果としては妥当であろう。
    ■Table2において世帯主の教育レベルと齲蝕・充填とは統計的有意を認めなかったとの記述であるが、結果の数値だけを見ると差があるように思える。より詳細な信頼区間の値や、P値の記載が望ましいだろう。


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