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社会医学講座 | 山梨大学医学部

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ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2016.10.5

2016年10月5日    担当:山崎

Fresh fruit consumption and major cardiovascular disease in China
~ 中国での新鮮な果物の摂取と重大な心血管疾患との関連 ~
出典: The New England Journal of Medicine 374;14 April 7, 2016
著者: Huaidong Du, Liming LI, Derrick Bennett, Yu Guo , Timothy J. Key, Zheng Bian, Paul Sherliker, Haiyan Gao, Yiping Chen, Ling Yang, Junshi Chen, Shanqing Wang, Ranran Du, Hua Su, Rory Collins, Richard Peto, Zhengming Chen.
<論文の要約>
【背景】
西欧諸国では、果物の摂取量が多いほど心血管疾患のリスクが低いという関連が示されている。しかし、そのような関連について、果物摂取が少なく脳卒中の発症率が高い中国ではほとんど明らかにされていない。

【方法】
2004年から2008年の間に、中国の異なる10地域で、30歳から79歳の成人512,891人を募集した。320万人年の追跡期間中に、ベースラインで心血管疾患歴がなく降圧治療を受けていない451,665人の参加者の中で、5,173人が心血管疾患による死亡、2,551人が(致死的または非致死的)重大な冠動脈イベント、14,579人が虚血性脳卒中、3,523人が脳出血が記録された。コックス回帰を用いて、発症率と新鮮な果物摂取に関連する調整済みハザード比を求めた。

【結果】
参加者の18%が毎日新鮮な果物を摂取していると報告した。“まったく、またはほとんど”新鮮な果物を食べることのない参加者(非摂取群)と比べて、新鮮な果物を毎日食べる群は、収縮期血圧と(差4.0mmHg)、血糖値が低かった(差0.5mmol/l(9.0mg/dl))(両方の比較でトレンド検定はP<0.001)。非摂取群に対する毎日の果物摂取群の調整済みハザード比は、心血管疾患による死亡が0.60(95%CI:0.54-0.67)、主要な冠動脈イベントが0.66(95%CI:0.58-0.75)、虚血性脳卒中が0.75(95%CI:0.72-0.79)、脳出血が0.64(95%CI:0.56-0.74)であった。それぞれのアウトカムの発生と新鮮な果物摂取量の間には、強い対数線形の量反応関係があった。これらの関連は、10地域全体でも、ベースラインの特性で分けたサブグループでも類似していた。

【結論】
中国の成人では、果物摂取の多さは血圧と血糖値が低いことに関連があった。そして大部分は血圧、血糖値、他の食事や食事以外の要因とは独立して、主要な心血管疾患のリスクが有意に低いことと関連があった。(本研究はウェルカム・トラストほかから研究助成を受けた。)


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
    ■AbstractのMethodsにアウトカムが発生した人数が書かれているが、この情報はResultsに記載した方がよいと思われる。また、Methodsの部分には、コホート研究であることと、曝露である果物の摂取頻度についての情報を加えた方がよいのではないか。
    ■モデルに投入する共変量が多いように思われる。なぜその変数を共変量としてモデルに投入したのか、その理由が記載されていない。また類似した変数が同時に使用されているように思われるが、多重共線性が検討されているのか否かの記載はなく不明である。
    ■Supplementary Appendixでは年齢、地域、他の心血管疾患、他の脳血管疾患、BMI、腹囲、ベースラインでのサブグループなどで分けて分析をされているので、これを感度分析としているのかもしれないが、本文の方法部分には感度分析の記載はない。また、本文中にcrudeの結果が示されておらず、調整による変化がどの程度あったのかを知ることができないため、単変量の結果も記載した方がよいのではないか。
    ■Floating absolute risk methodを使ったメリットが不明瞭であった。5つのカテゴリーでハザード比を比較するときに、リファレンスを選ばずに各カテゴリーに絶対リスクを割り当てる方法が、今回の研究でどのような意義があったのかが明確ではなかった。


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