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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2016.10.12

2016年10月12日    担当:武内

A Randomized Trial of Low-Cost Mesh in Groin Hernia Repair
~ 鼠径ヘルニアの修復における低コストメッシュのランダム化試験 ~
出典: The New England Journal of Medicine 374号2巻P146-153 January 14, 2016
著者: Jenny Lofgren,Par Nordin,Charles Ibibgira,Alphonsus Matovu, Edward Galiwango,and Andreas Wladis.
<論文の要約>
【背景】
鼠径ヘルニアの最も効果的な修復方法に、人工メッシュの使用が含まれる。しかし、低所得、もしくは中所得国の多くの患者にとって、人工メッシュの使用は手に届かない。滅菌されたモスキートメッシュはより低コストの代替手段として使われるが、厳密な検討はされていない。

【方法】
東ウガンダにおける成人男性で、片側の還納性ヘルニアの修復にておいて、二重盲検、かつランダム化比較試験を用いて低コストメッシュと商品メッシュ(いずれも軽量なもの)を比較した。手術は4名の資格をもつ外科医によって行われた。主要アウトカムは、1年間のヘルニア再発と術後合併症とした。

【結果】
合計302名の患者を対象とした。フォローアップ率はそれぞれ、2週間後は97.3%、1年後は95.6%であった。ヘルニア再発は、低コストメッシュに割り付けられた患者は1名(0.7%)、商品メッシュに割り付けられた患者は0名(絶対リスク差0.7%ポイント、95%信頼区間-1.2~2.6、P値=1.0)。術後合併症は、低コストメッシュ割り付け患者は44名(30.8%)、商品メッシュ割り付け患者は44名(29.7%)であった(絶対リスク差1.0%ポイント、95%信頼区間-9.5~11.6、P値=1.0)。

【結論】
ヘルニア修復術を行った男性における、ヘルニア再発と術後合併症の割合は、低コストメッシュと商品メッシュとの間に有意差はない。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
    ■鼠径ヘルニアは女性も発症するが、参加対象を男性に限定したのはなぜか。鼠径ヘルニアの中でも、男性と女性とでは、発症しやすい部位が異なるからだろうか。男性と限定することで、発症部位を限定し、条件を揃えたのかもしれない。
    ■先行研究では、メッシュの代替として、なぜ蚊帳を使用することを発想したのだろう。素材や形状が似ているところから思いついたのだろうか。
    ■除外基準として麻薬中毒者が挙げられているが、なぜか。術後のフォローアップ参加への影響を懸念したからか。
    ■参加対象に年齢の上限がないが、死亡例が50-80代であり、上限を設けた方がよかったのではないか。(高齢の死亡者がいたため)
    ■低コストメッシュと商品メッシュの絶対リスク差を5%と見積もってサンプルサイズを出したが、非劣性試験としてトライしてもよかったのではないか。
    ■どちらのメッシュを使用したかについて、患者にはいつのタイミングで伝えたか記載されていないが、伝えていないのだろうか。一方、術後1年の患者満足度は高く、患者にとっては知らなくてもいいことなのかもしれない。


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