PAGE TOP

国立大学法人

山梨大学大学院総合研究部医学域 社会医学講座

社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
Division of Medicine, Graduate School Department of Interdisciplinary Research,
University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2017.7.5

2017年7月5日    担当:田中 深雪

Associations of Parental Depression With Child School Performance at Age 16 Years in Sweden
~ スウェーデンにおける親のうつ病と16歳時の学業成績との関連 ~
出典: JAMA Psychiatry. 2016; 73(3): 239 - 246
著者: Hanyang Shen, MPH, MSc; Cecilia Magnusson, MD, PhD; Dheeraj Rai, MRCPsych, PhD; Michael Lundberg, MPH; Felice Le-Scherban, PhD; Christina Dalman, MD, PhD; Brian K. Lee, PhD, MHS
<論文の要約>
【重要性】
世界中でうつ病は疾病と障がいの共通の原因となっている。親のうつ病は、若年期の子供の神経発達、行動、感情的、精神的、社会的な問題と関連している。親のうつ病と長期的な子どものアウトカムとの関連を調査する更なる研究が必要とされている。

【目的】
親のうつ病と義務教育終了時(約16歳)の子どもの成績との関連を調査する。

【デザイン、セッティング、対象者】
親のうつ病の診断(ICD-8, ICD-9, ICD-10に基づく)は、1969年以降の入院患者記録、2001年から開始した外来患者記録から収集した。義務教育終了時の学業成績データは、スウェーデンで1984年から1996年に生まれた全ての子どもの記録から収集した。最終的な解析対象者数は1,124,162人の実子であった。異なる期間(出生前、出生後、子どもの年齢1~5歳、6~10歳、11~16歳、義務教育終了前の任意の期間)における親のうつ病と最終的な学業成績との関連を調査した。線形回帰モデルはいくつかの子どもと両親の特徴の変数で調整した。分析は2015年1月から11月に実施した。

【主要アウトカム】
子どもの義務教育終了時の成績の十分位数(1低い~10高い)

【結果】
このコホートは1,124,162人の子どもから成り、そのうち48.9%は女性であった。全ての時期において、母親と父親のうつ病は義務教育終了時の学業成績の低さと関連があった。共変量で調整した後、これらの関連はそれぞれ-0.45(95%CI -0.48 ~ -0.42)、-0.40(95%CI -0.43 ~ -0.37) に低下した。これらの効果量は、家庭収入の第5五分位と第1五分位最低5分位における学業成績の差に類似していた。しかし、母親の教育歴が9年であることと12年であることとの、学業成績の差の1/3程度であった。母親と父親の双方が異なる時期(出生前、出生後、1~5歳、6~10歳、11~16歳)にうつ病だった場合、概ね子どもの学業成績は悪かった。男児に比べて女児で母親のうつ病が子どもの学業成績に悪影響を及ぼすというように、子どもの性別は、母親のうつ病と学業成績との関連を修飾していた。

【結論】
子どもの生涯を通して、親がうつ病の診断を受けることは、16歳時点での低い学業成績と関連していた。この結果から、親がうつ病であると診断されることは、子どもの発達の重要な側面に遠い未来まで影響を及ぼしている可能性が示唆され、それは生涯に渡り子どものアウトカムを変えているかもしれない。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
    ■共変量に妊婦の喫煙と両親の飲酒が含まれているが、妊婦は喫煙のみ、両親は飲酒のみである。妊婦の飲酒と両親の喫煙も共変量に含んだ方がよいのではないか。含まなかった理由は記載されておらず不明なままである。
    ■サブ解析は、親のうつ病診断の確定方法の違いによって結果に影響があるかを調べるために大都市ストックホルムに限定して行われた。ストックホルムが選ばれた理由としては本調査と確定方法が異なるためと考えられる。都市部と地方都市では医療や地域の環境が違う可能性があるため、地方都市でも行ったほうがより妥当性が確認できたのではないか。
    ■親のうつ病罹病期間や、うつ病再発についての検討はなされていない。しかし、罹病期間や再発の回数は、子どもの学業成績に影響を及ぼしかねないため、検討に加えたほうがよいのではないかと考えられる。


前のページに戻る