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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2017.7.12

2017年7月12日    担当:山﨑さやか

Experiences of discrimination and incident type2 diabetes mellitus: The multi-ethnic study of atherosclerosis (MESA)
~ 2型糖尿病の発生と主要な差別体験:アテローム性動脈硬化症の多民族研究 ~
出典: American Journal of Epidemiology April 19, 2016.
著者: Kara M. Whitaker, Susan A. Everson-Rose,James S. Pankow, Carlos J. Rodriguez , Tene T. Lewis, Kiarri N Kershaw, Ana V. Diez Roux, and Pamela L. Lutsey
<論文の要約>
差別の体験は不利益な健康アウトカムのリスクの増加と関連している。しかしながら、差別が2型糖尿病の発生と関連しているかどうかは不明である。私たちは、2000年から2002年にMulti-ethnic study of atherosclerosis(MESA)に登録した5310人の中で、主要な差別の体験(6つの場面における不平等な扱い)および日常的差別(不平等な扱いの日常的体験の頻度)と、糖尿病発症との関連を調査した。コックス比例ハザードモデルを使用して、人口統計的要因、抑うつ症状、ストレス、喫煙、アルコール、身体活動、食事、腹囲、BMIを調整し、ハザード比と信頼区間を推定した。追跡期間の中央値9.4年にわたって、654人が糖尿病を発症した。連続変数として扱ったとき(差別の体験が1つ追加されるごと:HR=1.09, 95%CI: 1.01, 1.17)、またはカテゴリカル変数として扱ったとき、(差別体験が0回対2回以上の差別体験:HR=1.34, 95%CI: 1.08, 1.66)主要な差別体験は糖尿病発生のリスク増加と関連があった。人種/民族と他の原因に起因する差別を評価したときにも、同様の傾向が観察された。日常的な差別は糖尿病発症と関連がなかった。結論として、肥満、行動による要因や心理社会的要因と独立して、主要な差別の体験は糖尿病発症リスクの増加と関連があった。今後は、差別と糖尿病の関係のメカニズムを探索する研究が望まれる。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
    ■白人か、白人でないかによって糖尿病の発症率に差があることを、多変量解析で十分に打ち消すことはできないのではないか。
    ■肥満を調整するために、BMIと腹囲が一緒に共変量として組み込まれている。多重共線性を懸念するが、一方で信頼区間はあまり拡がっていない。
    ■差別によるストレス体験が糖尿病発生を導くメカニズムが複数提示されている。視床下部-下垂体-副腎系を媒介する心理的反応によるものなのか、コーピングに負の影響を与える行動的反応によるものなのかで、着目すべき交絡因子が異なるのではないかと考える。
    ■慢性的ストレス、抑うつの調整に用いられた2つの共変量に尺度が使用されている。それぞれの尺度が被験者の状態を適切に表わしているか分からないため、それら交絡因子の調整が正確にできていない可能性がある。ストレスや抑うつ症状を表わす客観的データ(コルチゾール測定、うつ病の診断など)があれば、より適切に交絡因子を調整できたのではないか。


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