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山梨大学大学院総合研究部医学域 社会医学講座

社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2017.9.6

2017年9月6日    担当:大岡

Rituximab for childhood-onset, complicated, frequently relapsing nephrotic syndrome or steroid-dependent nephrotic syndrome: a multicenter, double-blind, randomized, placebo-controlled trial
~ 小児難治性頻回再発型またはステロイド依存性ネフローゼ症候群に対するリツキシマブ:多施設共同二重盲検ランダム化プラセボ対照試験 ~
出典: Lancet 2014; Volume 384, No. 9950, p1273 1281
著者: Kazumoto Iijima, Mayumi Sako, Kandai Nozu, Rintaro Mori, Nao Tuchida, Koichi Kamei, Kenichiro Miura, Kunihiko Aya, Koichi Nakanishi,Yoshiyuki Ohtomo, Shori Takahashi, Ryojiro Tanaka, Hiroshi Kaito, Hidefumi Nakamura, Kenji Ishikura, Shuichi Ito, Yasuo Ohashi on behalf of the Rituximab for Childhood-onset Refractory Nephrotic Syndrome (RCRNS) Study Group
<論文の要約>
【背景】
リツキシマブは小児難治性頻回再発型(FRNS)またはステロイド依存性(SDNS)ネフローゼ症候群に効果的な治療である可能性がある。我々は高い疾患活動性を持つ患者において、リツキシマブの有効性と安全性についての調査を行った。

【方法】
日本国内の9つの施設で多施設二重盲検ランダム化プラセボ対照試験を行った。1-18歳時にネフローゼ症候群と診断されており、FRNSとSDNSの再発を経験している2歳以上の患者に対してスクリーニングを行った。スクリーニングにおいては、再発寛解後の他の全ての基準を満たす難治性FRNSとSDNSの患者を含めることが妥当とされた。年齢、施設、治療歴、以前の3回の再発の間隔を調整因子として、リツキシマブ(375mg/㎡)あるいはプラセボを1週間に1回、4週間服用する2群に、1:1となるようコンピュータによりランダムに割り付けた。患者、保護者、介護者、医者、結果を評価する者は割り付けがわからないようにした。すべての患者はスクリーニング時に再発に対する標準的なステロイド治療を受けており、ランダム化後169日目までに免疫抑制剤の服用をやめた。患者は1年間追跡された。プライマリーエンドポイントは無再発期間とした。安全性のエンドポイントは有害事象の頻度と重篤さとした。割り付けられた介入を実際に受けた患者が分析された。この試験はUMIN臨床試験レジストリに”UMIN000001405として登録されている。

【結果】
患者は2008年11月13日から2010年5月19日の間に治験センターに登録された。52人の患者がランダム化を受け、48人が割り付けられた介入を受けた(24人はリツキシマブ、24人はプラセボ)無再発期間の中央値は、プラセボ群(101日、95%CI:70-155;ハザード比0.27、95%CI:0.14-0.53;p<0.0001)に比べてリツキシマブ群で有意に長かった(267日、95%CI:223-374)。1回でも重篤な有害事象が起きた患者はリツキシマブ群で10人(42%)、プラセボ群で6人(25%)であった。

【結論】
リツキシマブは小児期発生の難治性FRNSとSDNSに対する効果的で安全な治療である。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
    ■プラセボ群に対してもリツキシマブ群と同様に点滴を用いた治療介入を行っていることが書かれている。RCTのブラインドを残すという科学的な倫理性と、プラセボ群に無用な点滴を行うという倫理的問題のどちらを取るべきか、議論が分かれるところだったと思われる。
    ■リツキシマブの安全性を結論付けるにしては、解析が弱いように思われた。安全性エンドポイントに関して、プラセボ群との同等性・非劣性を示すことは難しいとしても、差の有意性が示されないことを持って安全性を結論付けることは厳しいと考えられる。グレードの高い有害事象についても、サンプルサイズが小さいため、安全性を言うまでに至らなかったのではないか。
    ■本研究のデザインや解析モデルは難しく感じたが、綿密に組まれた穴のない研究デザインと的確な方向からの各統計手法は、疫学や臨床統計に携わる我々にとって大変多くの事を学ぶ事が出来る論文であった。


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