2017年10月4日 担当:岩淵
Improving comfort around dying in elderly people: a cluster randomised controlled trial
~ 高齢者の臨死期(の快適さ)の改善:クラスターランダム化比較試験 ~
~ 高齢者の臨死期(の快適さ)の改善:クラスターランダム化比較試験 ~
出典:
Lancet 2017; 390: 125-34
著者: Kim Beernaert, Tinne Smets, Joachim Cohen, Rebecca Verhofstede, Massimo Costantini, Kim Eecloo, Nele Van Den Noortgate, Luc Deliens
著者: Kim Beernaert, Tinne Smets, Joachim Cohen, Rebecca Verhofstede, Massimo Costantini, Kim Eecloo, Nele Van Den Noortgate, Luc Deliens
- <論文の要約>
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【背景】
高齢者の50%以上が急性期病院で死亡するが、終末期ケアの質はしばしば最適ではない。
【目的】
高齢者の臨死期におけるケアの快適さや質の改善について、ケアプログラム(CAREFuL)の効果を評価すること。
【方法】
クラスターランダム化比較試験:ベルギーのフランダース地方にある10病院の急性期高齢者病棟で実施(期間:2012年10月1日~2015年3月31日)。乱数発生器を使用して、CAREFuL実施(介入群)と標準治療(対照群)に病院を割り付けた。患者・家族のみ割り付けを盲検化した。CAREFuLは、臨死期のケアガイド、トレーニング、補助資料、実施ガイドで構成される。主要アウトカムは臨死期の快適さ(尺度:CAD-EOLD)と症状管理(SM-EOLD)で、評価者は看護師と家族とした。解析にはintention to treatを使用した。本研究はClinicalTrials.gov(NCT01890239)に登録されている。
【結果】
10病院4241床のうち451(11%)が分析に含まれた。介入群(CAREFuLプログラム)と対照群にそれぞれ5つの病院が無作為割り付けされた。対照群118名、介入群164名が評価の適格基準を満たした。評価は、看護師によるものが介入群132名/164(80%)、対照群109名/118(92%)で、家族によるものが介入群48名/164(29%)、対照群23名/118(19%)だった。対照群と比較して介入群では、看護師による「快適さ」の評価に有意な改善が見られた(CAD-EOLDベースラインを調整した平均スコアの差4.30、95%Cl: 2.07-6.53、p<0.0001)。家族が評価したCAD-EOLDスコア評価(ベースラインを調整した平均スコアの差-0.62、95%CI: -6.07-4.82、p=0.82)と看護師または家族が評価したSM-EOLDスコア(看護師:-0.41、-1.86-1.05、p=0.58;家族:-0.59、-3.75-2.57、p=0.71)について有意差はみられなかった。
【結論】
プログラムの継続的な監視は必要とされるが、これらの結果から急性期高齢者病棟におけるCAREFuLの実施が臨死期にある患者のケアを改善する可能性を示唆された。
- <ジャーナルクラブでのディスカッション>
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■論文中の限界の中に、看護師または家族による代理評価であることが記載されていない。介入プログラム実施者とアウトカム評価者が共に病棟看護師であることから、評価(本研究のアウトカム)への影響は避けられないものと考えられるため、記載すべきであろう。
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■家族によるケア満足度評価が低いという結果は、今回の介入プログラム自体に問題がある可能性が考えられる。プログラム自体の改善、または別のプログラムを検討する必要性があると思われた。
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■介入プロトコルが遵守されたとあるが、トレーニングプログラムへの参加率は病棟間での0~100%と大きく差があり、個々の患者に対する介入の質は対照群と同様に病棟によって不均一であった可能性が考えられる。このプロトコル遵守率により結果が変わるかについて知りたい。
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■疾患により臨死期の様相には違いがあると思われる。解析で疾患の違いを考慮できないだろうか。