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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2017.12.13

2017年12月13日    担当:岡・原田

Effect of Mindfulness-Based Stress Reduction vs Cognitive Behavioral Therapy or Usual Care on Back Pain and Functional Limitations in Adults With Chronic Low Back Pain A Randomized Clinical Trial
~ 慢性腰痛を抱える成人における、腰痛と機能的制限に対するマインドフルネスストレス低減法と認知行動療法または通常治療の効果:ランダム化臨床試験 ~
出典: JAMA.2016;315(12):1240-1249
著者: DanielC.Cherkin,PhD; KarenJ.Sherman,PhD; BenjaminH.Balderson,PhD; AndreaJ.Cook,PhD; MelissaL.Anderson,MS;
   ReneJ.Hawkes,BS; KellyE.Hansen,BS; JudithA.Turner,PhD
<論文の要約>
【重要性】
これまでに、慢性腰痛を抱える若年や中年成人に対するマインドフルネスストレス低減法(MBSR)は、正確に評価されていない。

【目的】
慢性腰痛に対する、MBSRと認知行動療法(CBT)や通常治療の有効性を評価する。

【デザイン・設定・参加者】
慢性腰痛がある20~70歳の成人342人のワシントン州の総合医療サービスシステムにおいて、ランダム化され、インタビュアーを盲検化した臨床試験では、2012年9月~2014年4月の間に登録され、MBSR群(n=116)、CBT群(n=113)、または通常治療群(n=113)にランダムに割り付けられた。

【治療介入】
CBT(痛みに関する思考や行動を変化させる為のトレーニング)とMBSR(マインドフルネス瞑想とヨガのトレーニング)は、1週間に2時間、8週間行なった。通常治療は、参加者が受けたどんな治療も含んだ。

【主要アウトカムと方法】
最重要のアウトカムは、26週時点で機能的限界(修正Roland Disability Questionnaire [RDQ]; 範囲0-23)と自己申告による腰痛の煩わしさ(スケール:0-10)がベースラインから臨床的に意味のある改善(≧30%)した参加者の割合である。アウトカムは、4、8、52週にも評価を行なった。

【結果】
ランダム化された参加者は342人。平均年齢(標準偏差)は49.3 (12.3)[20-70]歳、224人(65.7%)は女性で、腰痛の平均期間は7.3年(範囲、3ヶ月-50年)、123人(53.7%)は8セッションのうちの6つ以上に参加し、294人(86.0%)は26週までやり遂げた。そして290人(84.8%)は、52週までやり遂げた。26週時点でのITT解析で、RDQにおける臨床的に意味のある改善をした参加者の割合は、通常治療(44.1%)よりMBSR(60.5%)とCBT(57.7%)を受けた参加者の方が高かった(全体p =0.04;MBSR vs 通常治療の相対危険[RR](1.37[95%CI、1.06-1.77])MBSR vs CBTのRR(0.95[95%CI、0.77-1.18])、CBT vs 通常治療のRR(1.31[95%CI、1.01-1.69]))。26週時点での痛みの煩わしさが臨床的に意味のある改善をした参加者の割合は、MBSR群で43.6%、CBT群で44.9%、通常治療群は26.6%であった(全体p=0.01;MBSR vs 通常治療のRR(1.64[95%CI、1.15-2.34])、MBSR vs CBTのRR(1.03[95%CI、0.78-1.36])、CBT vs 通常治療のRR(1.69[95%CI、1.18-2.41]))。MBSRに関する結果は、主な結果ともに52週間でほとんど変化はなかった。

【結論と関連】
慢性腰痛を抱える成人において、MBSRとCBTの治療は通常治療と比較して、26週時点で腰痛と機能的制限において大きな改善が認められた。しかし、MBSRとCBT間のアウトカムには有意差は認められなかった。これらの結果は、MBSRが慢性腰痛患者に対して効果的な治療である可能性を示唆した。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
    ■主要アウトカムと副次アウトカムがすべて主観的尺度であった。痛みは患者がもつ内在経験と言われていることから主観的な評価になりやすいと考えられるが、客観的に痛みの量や程度を評価できるとより妥当性が高い結果が得られるのではなないか。客観的な評価法として、参加者への負担、費用と時間が掛かってしまうものの、例えばf-MRIを使用し脳機能イメージング法などで客観的な評価を行うことも良いのではないか。
    ■本研究では年齢が20歳~70歳を対象としており、Table1では平均値と標準偏差が表記されていた。年齢によって腰痛の有病率は異なり、ヨガ等の活動は若い方が活発にできると考えられることから、年齢を複数のカテゴリーに分け層化やカテゴリカル変数として解析することで、年齢による治療効果の差異も検討できるのではないかと思われた。
    ■本研究では、服薬状況の情報収集はオピオイドに限定されており、他の痛みなどに関わる服薬状況は提示されていなかった。また、対象者における腰痛以外の内科・整形外科疾患などの情報も解析には含まれていない。しかしながら、他疾患によって腰痛が起きる可能性やMBSR等の治療への取り組みの可否も変化する可能性が考えられる。これら診療科や腰痛を起こす疾病情報も収集できればより詳細な検討が可能となったのではないかと考えた。


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