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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2018.2.28

2018年2月28日    担当:山崎

Prediction of Relapse After Discontinuation of Antipsychotic Treatment in Alzheimer's Disease: The Role of Hallucinations.
~ アルツハイマー病における抗精神病薬治療の中止後の再発の予測:幻覚の役割 ~
出典: American Journal of Psychiatry. 2017 Apr 1;174(4):362-369.
著者: Patel AN, Lee S, Andrews HF, Pelton GH, Schultz SK, Sultzer DL, Mintzer J, de la Pena D, Gupta S, Colon S, Schimming C, Levin B, Devanand DP.
<論文の要約>
【目的】
アルツハイマー病において、抗精神病薬は症状の軽減にたびたび使用される。そして症状が軽減すると使用が中止され、その後再発する可能性がある。著者らは、どの神経精神学的症状が再発の予測をするか究明することを目的とした。

【方法】
アルツハイマー病における抗精神病薬の中止試験において、アルツハイマー病であり、興奮や精神病の症状を持つ180人の患者は、リスペリドン薬で16週間治療された。その後、効果のあった患者(N=110)を、32週間リスペリドンを続ける群と、16週間のリスベリドンの使用後に16週間のプラセボへ切り替える、または32週間プラセボ治療を受ける群にランダム割付をした。以前報告したように、16~32週間リスペリドンの中止は2倍から4倍の再発リスクの増加と関連がある。事後分析において、Neuropsychiatric Inventory(NPI)における12の症状項目とランダム割付後の最初の16週間の再発との関連を調べた。

【結果】
ベースライン時に提示された症状において、中等度の幻覚または幻覚のない患者と比べると、重度の幻覚を持つ患者は高い再発の可能性を持っていた(ハザード比2.96、95%信頼区間15.52, 5.76)。この効果は幻聴を持つサブグループでも示された。しかし、幻視を持つサブグループでは示されなかった。ベースラインで幻覚を持つ患者の中で、リスペリドンを続けた26人中再発した10人と比べると、リスペリドンを中止して再発したのは17人中13人(76.5%)であった(p<0.02)。このグループ間の差異は、中等度の幻覚を持つ群(36%)群と比べ重度の幻覚を持つ群(77.8%)との比較でも有意なままであった。最初の治療の後のNPI項目スコアは再発と関連がなかった。

【結論】
ベースラインで重度の幻覚を持つ患者はランダム化の後に再発する可能性が高かった。そして、ベースラインでの幻覚の存在はリスペリドンを継続した群と比べ、リスペリドンを中止した後の再発リスクと関連があった。幻覚を持つ患者のなかでも、とりわけ、幻聴を持つ場合に高い再発リスクをもつために、抗精神病薬の中止は慎重になされるべきである。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
    ■ランダム割付は、32週間のリスペリドン継続群(治療継続群1)、16週間リスペリドン継続後16週間プラセボ群(治療継続群2)、32週間のプラセボ群(治療中止群)の3群とされている。この3群に16週間のリスペリドン投与後16週間プラセボのグループを入れている理由は、臨床での使用方法に合わせて薬剤の血中濃度を下げていくという段階的な評価をするために、継続群とプラセボ群との間にグループを作ったのではないかと推察されるが、本文にランダム割付を3群に分けた理由の記載がなく不明確であった。
    ■abstractにはメインの結果として幻聴を持つ患者の再発の可能性が高いことが示唆されている。しかし、論文の表には幻聴に関するnと割合についての記載がなかったため、結果の解釈が難しかった。メインの結果であるので、表への記載があるとより解釈がしやすかったのではないかと思われる。
    ■研究の目的が、リスペリドン治療に関する治療群とプラセボ群の比較と、どのNPI項目が再発の予測因子になりうるかの検証と2つあったため、本文の記述と表の結果ともに2つの目的についての結果や解釈が混在しており、どちらの目的についての結果を示しているのか読み取るのが困難であった。


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