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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2018.11.14

2018年11月14日    担当:岩淵

Effect of early and systematic integration of palliative care in patients with advanced cancer: a randomised controlled trial
~ 進行がん患者に対する緩和ケアの早期からの系統的統合の効果:ランダム化比較試験 ~
出典: Lancet Oncol 2018; 19: 394 404
著者: Gaelle Vanbutsele, Koen Pardon, Simon Van Belle, Veerle Surmont, Martine De Laat, Roos Colman, Kim Eecloo, Veronique Cocquyt, Karen Geboes, Luc Deliens
<論文の要約>
【背景】
腫瘍ケアの中に早期から緩和ケアを統合することの利益は、心理社会的サポートが増えた結果であることが示唆される。ベルギーにおいて、心理社会的ケアは、標準の腫瘍ケアの一部である。このランダム化比較試験の目的は、緩和ケアを早期から系統的に統合して、標準の心理社会的腫瘍ケアと一緒に提供することが通常のケアと比べて利益を増やすかどうかを調査することである。

【方法】
本RCTにおいて、適格患者は、①18才以上、②固形腫瘍による進行がん、③European Cooperative Oncology Group・performance status:ECOG得点が0~2点、④推定生命予後12ヵ月、⑤新規の原発性腫瘍(の診断)から12週間以内または進行がんの診断有りとした。患者は、コンピュータ生成シーケンスで作成したブロックデザインにより、腫瘍ケアに早期から系統的な緩和ケアを統合した群と標準の腫瘍ケアのみの群にランダム割付(1:1で)され、すべての患者は医療専門家、心理士、ソーシャル・ワーカー、栄養士、専門看護師によって、集学的な腫瘍ケアを提供された。主要エンドポイントは、12週時点における全般的健康状態・QOL (European Organisation for Research and Treatment of Cancer Quality of Life Questionnaire Core 30 items:EORTC QLQ C30で評価)の変化とした。実存的well-beingの側面も含むMcGill Quality of Life Questionnaire:MQOLも用いた。分析は、intention to treat法を用いた。本調査は継続中であるが、組み入れは終了しており、ClinicalTrials.gov(番号NCT01865396)に登録済みである。

【結果】
2013年4月29日から2016年2月29日まで、適格基準によって468人の患者をスクリーニングし、186人が組み入れられ、早期からの系統的な緩和ケア群(92人)、標準の腫瘍ケア群(94人)にランダム割付けされた。12週時点での遵守率は、介入群71%(65人)、対照群72% (68人)だった。12週時点での全般的QOLスコア(EORTC QLQ C30)は、標準の腫瘍ケア群54.39 (95% CI 49.23 59.56)で、早期からの系統的な緩和ケア群61.98 (95% CI 57.02 66.95)であった(差7.60 [95% CI 0.59 14.60]; p=0.03)。またMQOLの1項目スケールでは標準の腫瘍ケア群5.94 (95% CI 5.50 6.39)、早期からの系統的な緩和ケア群7.05(6.59 7.50)であった(差 1.11 [95% CI 0.49 1.73]; p=0.0006)。

【考察】
本研究の結果は、腫瘍ケアへの早期からの系統的な緩和ケアの統合モデルは、進行がん患者のQOLを増大させることを示す。我々の知見は、進行がん患者にとって、早期からの系統的な緩和ケアの統合は、たとえ心理社会的サポートが既に実施されていた場合でも、要請に応じた緩和ケアコンサルテーションの実施よりも有益であることもまた示す。ケアの統合を通して、オンコロジストと専門的緩和ケアチームは、進行がん患者のQOLを良くするために力を合わせるべきである。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
    ■これまでの先行研究が医師主導型の介入なのに対して、今回は看護師主導型の介入としたという違いがある。その理由や背景について緒言で触れられておらず、書かれていると良かった。
    ■盲検化されていない為、介入の効果が非介入群に影響を与えた為、効果の差は過小評価となりやすくなっているにもかかわらず、有意な差がみられたことは、介入の有効性を示すものと考えられた。
    ■研究の限界が多数書かれている。考えられる限界全て挙げ、論文に載せるという姿勢は好ましい。


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