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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2020.3.4

2020年3月4日    担当:前嶋

Association of Household Income With Life Expectancy and Cause-Specific Mortality in Norway,2005-2015
~ 2005年から2015年の間のノルウェーにおける世帯収入と平均余命との関連~
出典: JAMA 2019;321(19):1916-1925
著者: Jonas Minet Kinge,Jorgen Heibo Modalsli,Simon Overland,Hakon Kristain Gjessing,Mette Christophersen Tollanes,Ann Kristin Kundsen,Vegard Skirbekk,Bjorn Heine Strand,Siri Eldevik Haberg,Stein Emil Vollset
<論文の要約>
【Importance】
国家間の死因の比較を考察し、収入格差による平均寿命の違いを明らかにする。

【Objective】
米国の調査とノルウェーの調査の収入による平均寿命の違いと、死因を比較する。

【Design and setting】
2005年から2015年の間の40歳以上のノルウェー在住の全ての人を記録簿を使用し調査

【Exposures】
世帯所得を、世帯人数で調節

【Main outcomes and measures】
40歳での平均寿命と死因別死亡率

【Results】
計3041828人を、25805277人年観察し、本研究対象期間に441768人が死亡した。(平均年齢は59.3(標準偏差:13.6)歳、平均した世帯収入の人数は2.5人(1.3))女性の平均寿命は世帯収入の最上位1%で最も高く86.4歳(85.7‐87.1歳)と世帯収入の最下位1%より8.4歳(7.2-9.6歳)長かった。 男性では世帯収入の最下位1%の平均寿命が70.6歳(69.9-71.6)と最も低く、最上位1%の平均寿命と13.8歳(12.3-15.2歳)の差が生じていた。2005年から2015年で、収入による平均寿命の差は増えているが、高齢グループでは循環器疾患、COPD、認知症が大きく死亡に寄与しており、若いグループでは薬物依存と自殺で大きく寄与している。対象期間の経過の中で、女性の最も高所得のグループは平均寿命が3.2年(2.7-3.7)増えている一方、最も低所得のグループは0.4年(‐1.0―0.2)減っていた。男性では、高所得グループは3.1年(2.5-3.7)増え、低所得グループでは0.9年(0.2-1.6)増えていた。  ノルウェーでの収入格差による平均寿命の違いは米国の調査と同様であったが、低所得から中間所得層における平均寿命は男女とも、ノルウェーの方が長かった。

【Conclusions and Relevance】
ノルウェーでは、2005から2015年の間で収入による平均寿命の差が増加している。アメリカとノルウェーで最も平均寿命に差が出たのは低所得層から中間所得層の個人においてであった。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
    ■ノルウェー人口の99.5%をカバーするデータを国民の母集団記録簿、納税記録、教育記録、死因死亡記録を突合させ大規模に調査した点は、他国で実施する事も難しく、あmたそれらのデータをもとに複数の統計手法を用いて各年代における平均寿命を適切に予測したことが、本研究における最大の強みである。
    ■低収入グループ余命の差には疾病-若年層での薬物使用が大きく寄与していることが示唆され、年々これらの要因がその影響を増している事が本研究から判明した。そのため、若年の薬物利用が具体的にどの程度の余命損失につながっているのかについては、個別に更なる検討が必要だろう。
    ■特に低収入の対象者において顕著であるが、平均余命の差には収入だけではなく、家庭環境の悪さや薬物へのアクセスのしやすさ、孤独感などの精神的状況といった様々な要因に影響を受けており、本研究ではそれらの要因については深く言及できていないため、正しい対策をとっていくために、今後これらの要因を明らかにしていく必要がある。


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