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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2023.7.19

2023年7月19日    担当:吉井

Generalised joint hypermobility leads to increased odds of sustaining a second ACL injury within 12
months of return to sport after ACL reconstruction
膝前十字靭帯再建術を施行された患者において、全身関節過可動性はスポーツ復帰後12ヵ月以内の前十字靭帯二次損傷率を高める
出典: British Journal of Sports Medicine.2023;0:1-8
著者: Bálint Zsidai, Ramana Piussi, Roland Thomeé, David Sundemo, Volker Musahl, Kristian Samuelsson, Eric
Hamrin Senorski
<論文の要約>
【目的】
前十字靭帯(ACL)再建手術(ACL-R)後に競技レベルスポーツへ復帰(RTS)する患者におけるACL二次損傷の12ヵ月リスクを、全身関節過可動性(GJH)の有無にて決定すること。 

【方法】
データは、2014~2019年にACL-Rを施行された16~50歳の患者におけるリハビリテーション固有のレジストリから抽出された。人口統計、アウトカムデータおよびRTS後12ヵ月以内のACL二次損傷(新たな同側もしくは反対側の受傷と定義)の発生率を、GJHのある患者と無い患者の間で比較された。単変量ロジスティック回帰とコックス比例ハザード回帰を実行して、GJHとRTSの期間が、ACL二次損傷のオッズとRTS後にACL二次損傷をしないACL-R生存率に及ぼす影響を決定した。

【結果】
GJHの有る患者50人(22.2%)、GJH無しの患者175人(77.8%)の合計225人を対象とした。RTS後12ヵ月以内で、GJHの7人(14.0%)の患者とGJH無しの5人(2.9%)の患者がACL二次損傷をした(p=0.012)。同側または反対側のACL二次損傷を受けるオッズは、GJHの患者が、そうでない患者と比べて5.53(95%CI 1.67-18.29)高かった(p=0.014)。RTS後のACL二次損傷における生存時間のハザード比は、GJHの患者において4.24(95%CI 2.05-8.80; p=0.0001)であった。患者報告型アウトカム指標においては両群で差は認められなかった。

【結論】
ACL-Rを施行されたGJHの患者はRTS後ACL二次損傷を受ける確率が5倍以上高くなる。ACL-R後、高強度スポーツへの復帰を目指す患者では、関節弛緩性評価の重要性が強調されるべきである。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>
    ■本研究は、GJHを有する患者におけるACL-R後のACL二次損傷発生率を調査することを目的とした、最初の前向きレジストリベースの研究である。
    ■副次アウトカムを取った理由がしっかり記載されていると良かった。
    ■患者報告型アウトカムは元々二次損傷に影響する要因として考えられているため、メインアウトカムの調整には使っていない理由が不明瞭。データを見る限り患者報告型アウトカムを評価できた人数がやや限定的であることが原因の可能性もあるが、特に言及はなかった。
    ■論文内で主要アウトカムと副次アウトカムを明確にすることで、タイプⅠエラーへの対策としていると考えられる。また、主要アウトカムでロジスティック回帰分析とコックス比例ハザード分析で結果が一致していることも頑健さの強調に繋がっている。
    ■本研究はGJHがACL二次損傷の危険因子であることを明らかにしているが、膝の過伸展自体の独立した影響なのか、GJHなど本人の持つ要因が影響しているかは、現時点では明らかになっておらず今後さらなる調査が必要と考えられる。


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