PAGE TOP

国立大学法人

山梨大学大学院総合研究部医学域 社会医学講座

社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
Division of Medicine, Graduate School Department of Interdisciplinary Research,
University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2023.10.11

2023年10月11日    担当:原田

Association of Smartphone Use With Body Image Distortion and Weight Loss Behaviors in Korean
Adolescents
~ 韓国の青少年におけるスマートフォンの使用と身体イメージの歪みおよびダイエット行動との関連性 ~
出典: JAMA Network Open. 2022;5(5):e2213237.
著者: Sohyeon Kwon, MPH; Rockli Kim, ScD; Jong-Tae Lee, PhD; Jinho Kim, PhD; Sunmi Song, PhD; Seongcheol Kim, PhD; Hannah Oh, ScD
<論文の要約>
【重要性】
青少年の間でスマートフォンの使用率が高いにもかかわらず、スマートフォンの使用と身体イメージや関連行動との関連についてはほとんど知られていない。

【目的】
青少年におけるスマートフォンの使用時間およびスマートフォンで最も頻繁にアクセスするコンテンツの種類と、身体イメージの歪みおよびダイエット行動との関連を検討する。

【デザイン、設定、参加者】
集団ベースのKorea Youth Risk Behavior Web-Based Survey 2017のデータを用いた横断研究。この標本調査を構成する参加者は、全国12~18歳の韓国の青少年53,133人である。データは2017年6月1日から7月18日まで収集された。解析は2020年2月7日から2022年3月30日まで行った。

【曝露】
自己申告によるスマートフォンの使用時間(分/日)およびスマートフォン使用中に最も頻繁にアクセスしたコンテンツ(「教育または情報検索」、「チャット、メッセージ、Eメール」、「SNSまたは掲示板」、「ゲーム」、「動画、映画、音楽」、「ウェブ漫画またはウェブ小説」、「ショッピングまたはその他のコンテンツ」)の種類。

【主なアウトカムと測定方法】
「身体イメージの歪み」、「ダイエットの試み」、「適切でないダイエット法の利用」、「筋力強化」、「有酸素運動」の5項目。「身体イメージの歪み」は、自分の現在の体重を「とても痩せている」「痩せている」「普通体重」「太っている」「とても太っている」の5つから選んで回答してもらい、体重の過大認識がある場合に歪みがあると定義した。「ダイエットの試み」~「有酸素運動」の4項目は、過去30日間に行われたものがKYRBS内で自己申告された。

【結果】
53,133人の参加者の平均(SD)年齢は15.0(1.8)歳、女子は50.7%、男子は49.3%。アクセスしたコンテンツの種類で調整した結果、長時間のスマートフォン使用(301分以上/日)は、短時間のスマートフォン使用(1~120分/日)と比較して、男女ともに身体イメージの歪み(男子:OR、1.17;95%CI、1.07~1.28;女子:OR、1.20;95%CI、1.10~1.30)および適切でないダイエット法(男子:OR、1.54;95%CI、1.25~1.90;女子:OR、2.45;95%CI、2.14~2.79)と正の関連があった。スマートフォンの使用期間で調整した結果、主に「動画、映画、音楽」(OR、1.15;95%CI、1.02-1.29)、「ウェブ漫画またはウェブ小説」(OR、1.28;95%CI、1.10-1.48)、および「ゲーム」(OR、1.17;95%CI、1.03-1.32)のためのスマートフォンの利用は、主に「教育または情報検索」のためのスマートフォンの利用と比較して、男子の身体イメージの歪みと正の関連があった。男子では、スマートフォンを主に「チャット、メッセージ、Eメール」に利用していることは、筋力強化(OR、1.31;95%CI、1.18-1.44)および有酸素運動(OR、1.41;95%CI、1.29-1.55)と正の関連があった。主に「SNSまたは掲示板」を利用していることも、同様の結果となった(筋力強化: OR、1.27;95%CI、1.13-1.42;有酸素運動: OR、1.28;95%CI、1.15-1.43)。女子では、スマートフォンを主に「チャット、メッセージ、Eメール」に利用していることが、ダイエットの試み(OR、1.34;95%CI、1.19-1.51)および適切でないダイエット法(OR、1.57;95%CI、1.25-1.99)と正の関連があった。主に「SNSまたは掲示板」を利用していることも、同様の結果となった(ダイエットの試み: OR、1.20;95%CI、1.07-1.36;適切でないダイエット法: OR、1.37;95%CI、1.08-1.73)。

【結論と妥当性】
「この横断研究では、スマートフォンの使用時間とスマートフォンで最も頻繁にアクセスするコンテンツの種類の両方が、青少年の身体イメージの歪みとダイエット行動と関連していた。これらの知見は、青少年が健全なスマートフォン利用行動を身につけるための方法を模索する必要性を示唆している。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>
    ■曝露である、「スマートフォンで最も頻繁にアクセスするコンテンツの種類」のカテゴリー化の基準が不明確であった。特に、参照カテゴリーである「教育または情報検索」に関して、「何を検索するか」については問われていないことから、アウトカムである身体イメージやダイエットに検索内容が含まれている可能性がある。つまり、参照カテゴリーとして適切でない可能性がある。
    ■今回の研究では、低体重・標準体重・過体重の区分を、BMIの数値ではなく、BMIのパーセンタイル値で分けていた。体重区分(低体重・標準体重・過体重)と体重の認識(過大認識・過少認識)との関連に関し、結果の解釈は慎重に行う必要があると考える。
    ■最新のデータとの比較のために2020年に調査されたKYRBSデータも用いているが、当時、世界的大流行および各国で様々な感染症対策が講じられていたCOVID-19の影響については言及されていない。2020年データと比較する上で、調査対象者の罹患状況や韓国における感染症対策の状況とそれに伴うスマートフォンの使用時間の変化の有無等について説明が必要だったのではないかと考える。
    ■韓国は国際的にも有名な「インターネット依存・ゲーム依存治療先進国」であることから世界的にも注目されている。日本でもICTの発展に伴い、青少年とインターネットの関係性は刻一刻と変化し続けていることから、引き続き注視していく必要がある。


前のページに戻る