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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2023.10.25

2023年10月25日    担当:島村

Epidemiology of Allergic Rhinitis in Children: A Systematic Review and Meta-Analysis
~ 小児アレルギー性鼻炎の疫学:システマティックレビューとメタアナリシス~
出典: J Allergy Clin Immunol Pract 2023;11: 2547-2556
著者: Amelia Licari MD, Paola Magri MD, Annalisa De Silvestri MSc, Arianna Giannetti MD, Cristiana Indolfi MD,
Francesca Mori MD, Gian Luigi Marseglia MD, Diego Peroni MD
<論文の要約>
【背景】
アレルギー性鼻炎(AR)は、臨床的・社会経済的な負担と有意な関連があり、喘息など他のアトピー性疾患の危険因子となることがよくある。その影響をより理解するためには、小児集団におけるARの疫学についての包括的で最新の概要が必要である。

【目的】
過去10年間の小児におけるARの発生率、有病率、疫学について検討する。

【方法】
International Prospective Register of Systematic Reviewsに登録され公開されているプロトコルを使用して、システマティックレビューとメタアナリシスを実施した。2012年から2022年の間に発表された、小児集団におけるARの疫学(発生率または有病率)についてのコホート研究または横断研究を、データベース・登録簿・Webサイトで検索した。観察的疫学研究報告の質改善(STROBE)のための声明に則って、研究の質とバイアスのリスクについて評価した。

【結果】
22件の研究について分析を行った。医師が診断したARの全有病率は10.48%、自己申告による現在(過去12か月)ARの全有病率は18.12%、自己申告による生涯のAR全有病率は19.93%であった。発生率は特定できなかった。ARの有病率を経時的に分析したところ、医師が診断したARは年々上昇傾向にあることが示された(2012年から2015年は8.39%、2016年から2022年は19.87%)。

【結論】
ARは小児集団において有意な影響があり、ARと診断される人は年々増加傾向にある。この疾患がもたらす疾病負荷や管理についても述べた概要を作成するには、発生率、併存疾患、診断、治療に関するさらなる調査が必要である。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>
    ■結果の多くで異質性が非常に高い状態であり信頼性としては判断が難しい結果であったが、小児集団におけるARについて初のシステマティックレビューとメタアナリシスであり、現状を把握する上では意義が大きい研究と考えられた。
    ■疾患概念が地域によって異なることもあり、定義ごとに評価したことで結論が分かりやすくなった。
    ■解析にあたり、統一された診断基準についての記載が対象論文にみられなかったことに言及されており、今後の統計調査や診断治療に関する研究の質改善に繋がると考えられた。


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