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山梨大学大学院総合研究部医学域 社会医学講座

社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2023.11.29

2023年11月29日    担当:金井

Dosing Time Matters? Nighttime vs. Daytime Administration of Nifedipine Gastrointestinal Therapeutic System (GITS) or Amlodipine on Non-dipper Hypertension
出典: Frontiers in Cardiovascular Medicine, 29 November 2021 Volume 8 - 2021
著者: Jing Liu , Xiaofeng Su , Ying Nie , Zhihuan Zeng and Hongyan Chen
<論文の要約>
【背景】
Non-dipper型高血圧は夜間の血圧が低下しにくい高血圧で、全身臓器の障害や心血管イベントのリスクを上昇させる病態として知られているが、未だに確立された治療法はない。

【目的】
この研究は降圧薬の種類と服薬時間を変えることで夜間血圧の低下と動脈硬化の改善度合いが変わるかどうかを評価するランダム化対照試験。

【方法】
18-65歳のNon-dipper型高血圧患者をニフェジピン徐放薬30㎎とアムロジピン5㎎(朝または夜に1日1回を8週間内服)の4群にランダムに割り付ける。4週間経ったところで血圧が目標値に達していない場合には後半4週間は倍量を服用してもらう。病態評価は薬物治療前と8週間の治療後に、24時間自由行動下血圧測定(ABPM)と動脈硬化度評価にて行う。主要評価項目は夜間収縮期血圧の平均値の低下幅とする。

【結果】
2016年12月-2020年12月までに研究に参加したNon-dipper型高血圧患者98人(平均年齢:46.3歳)のうち、ABPMと動脈硬化の評価を完全に行うことのできた72人(73%)を対象とした。 内服薬や服用タイミングにかかわらず夜間収縮期血圧は低下しており、有意差は認められなかった。 (ニフェジピン,アムロジピン,P値)=夜投与群 (-9.9 vs.−9.9 mmHg, P > 0.05), 朝投与群 (−11.5 vs. −10.9 mmHg, P > 0.05) また、投与タイミングを合わせて考えても有意な差はなかった。(ニフェジピン,アムロジピン,P値) = (−10.8 vs. −10.5 mmHg, P = 0.898) 24時間収縮血圧、拡張期血圧、脈波伝達速度は朝投与・夜投与ともに同等に有意に低下しており、夜間の血圧低下(dipping rhythm)も両群で同等に改善された。

【結論】
若年non-dipper型高血圧患者に対する長時間作動性降圧薬であるニフェジピン徐放薬とアムロジピンの夜間投与において、夜間の血圧低下、dipping rhythm、動脈硬化は、いずれも改善されており、その効果は朝投与群と同等であった。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
    ■介入研究において、プラセボをコントロールとしない。通常提供される医療や通常行われている介入をコントロールとする。
    ■単変量解析において、転帰が正規分布する量的変数の場合、要因となる変数が二値変数であればT検定を行い、名義変数であれば今回のように分散分析を行う。また、転帰が二値変数や名義変数の場合、χ2検定を行う。 ロジスティック回帰は転帰を二値変数とする多変量解析に用いる手法である。今回の研究は介入研究であり、ランダム化していることから共変量を考える必要はないため、ロジスティック回帰も用いない。
    ■一定期間夜勤帯の仕事を続けている人のdippingのリズムは日中仕事をしている人と比べて異なっているため、そうした人に対しては朝投与と夜投与のどちらがいいのか、さらなる研究が必要となる。また、仕事の時間帯が日中、夜勤を交互に行っているような人においても同様にさらなる研究が必要となると考えられた。
    ■考察で触れられていた「平均への回帰」は、仮に正規集団100名を仮定し上位10%を取り出した際、「本来上位10%に含まれるが下振れした人数(A)」と「本来上位10%に含まれないが上振れした人数(B)」を比べると、前者(A)の母集団が10人、後者(B)の母集団が90人であることから前者の人数の方が多くなるため(A<B)、取り出した群で再検査するとそのばらつきは元の平均に近寄る、という概念である。 このことは、例えば検診などにおいての調査の際に、ベースラインをスクリーニング時のものではなく、精査時の再検値にする理由でもある。


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