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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2023.12.20

2023年12月20日    担当:淡路

Child maltreatment, anxiety and depression, and asthma among British adults in the UK Biobank
~英国バイオバンクにおける英国成人の児童虐待、不安とうつ病、喘息について ~
出典: Eur Respir J. 2022 October ; 60(4): . doi:10.1183/13993003.03160-2021.
著者: Yueh-Ying Han, PhD, Qi Yan, PhD, Wei Chen, PhD, Juan C. Celedón, MD DrPH
<論文の要約>

児童虐待は成人の喘息に関連している。英国バイオバンク(UK Biobank)に登録されている成人のうち、メンタルヘルス調査を完了し、児童虐待、全般性不安障害(GAD)、大うつ病性障害(MDD)、喘息、および関連する共変量に関する完全なデータを有するが、慢性閉塞性肺疾患の診断は受けていない81,105人を対象に、大うつ病性障害(MDD)または全般性不安障害(GAD)が、児童虐待と現在の喘息との関連を媒介するかどうかを検討した。児童虐待は、Childhood Trauma Screener(CTS)の5つの質問に対する回答に基づいて評価した。MDDとGADという2つの媒介因子は、Composite International Diagnostic Interview Short Form (CIDI-SF)に基づいて評価した。現在の喘息は、医師により喘息が診断され、過去1年間に喘鳴があったものと定義された。児童虐待と現在の喘息の多変量解析にはロジスティック回帰分析を使用し、児童虐待と現在の喘息の関連に対するMDDとGADの寄与を推定するために媒介分析が行われた。多変量解析では、児童虐待は喘息と関連していた(調整オッズ比[aOR]=1.22、95%信頼区間[CI]=1.15 – 1.28、P<0.01)。世帯収入、学歴、喫煙状況、喫煙年数、およびその他の共変量を調整した媒介分析では、GADとMDDは、児童虐待と現在の喘息の関連についてそれぞれ21.8%と32.5%を説明した。媒介分析から現在の喫煙者と喫煙年数10年以上の元喫煙者を除外しても、同様の結果が得られた。この結果は、GADとMDDが喫煙とは無関係に、児童虐待と成人の喘息の関連を媒介することを示唆している。
<ジャーナルクラブでのディスカッション>
    ■本研究対象者は英国バイオバンクの参加者である。バイオバンクへ参加するということは、健康やゲノムなどに興味を持っており、健康意識が高く、ある程度余裕のある生活ができている集団を反映している可能性が考えられる。よって、過去および現在の家庭環境があまり良くない人々は多く含まれていない可能性が考えられ、このような偏りがなかった場合、結果は少し変わってきたのではないかと考えられた。
    ■虐待に関して、受けてきた種類別および種類の数の解析は行われているが、虐待の程度については不明であると思われた。虐待を受けていた期間や頻度、程度などによる違いもあるのではないかと議論になり、それらを考慮した結果も示されるとよかったと考えた。
    ■児童虐待の評価である、Childhood Trauma Screener(CTS)について、先行研究を参考にしたとの記載はあるが、本論文だけでの容易に判断ができるよう、スコアのカットオフ値などの説明の記載がある方が理解しやすいと考えられた。

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