hitokoto

“第62回全国医学生ゼミナール in 山梨パンフレットへ寄稿”(令和1年8月14日)
     『山梨大学医学部長からの言葉』

“2019年 vol.16 no.2 山梨大学付属図書館報「やまなし」へ寄稿”(平成31年3月15日)
     『花粉症の謎』

“2018年 第24号 山梨医科大学山梨大学医学部同窓会誌へ寄稿”(平成30年4月19日)
     『医学部をとりまく人たちが“All Win”になることを目指す』

“AHR 2016: The aryl hydrocarbon receptor as a central mediator of health and disease” at University of Rochester.(Aug 3-6th, 2016)(平成28年8月10日)
   AHR2016に参加した。主なトピックは
(1)  AHRの進化:5億年前に無脊椎動物と脊椎動物に枝分かれしたときに現在のAhRの形・機能が出来たらしい。無顎魚(jawless fish)はちょうどその中間でAhRの進化について多くの示唆を与えてくれる。AhR1, AhR2は遺伝子の重複進化で生まれたようだ。AhRは特に眼の発生・発達に重要らしいからAhRが視覚による劇的な進化の源?あとARNTはAhRと別々に進化したらしい。
(2)  マウスとヒトのAhRの違い:ヒトAhRではマウスAhR381番目のアラニンがバリンに変わっている。違いはその1つだけ。ちょうとPAS-Bドメインのリガンド結合部位。この変異がxenobioticsに対する感受性を弱めたらしい。その理由は“たき火”文化の誕生?たき火の煙は多くのPAHを生むからそれに耐性である必要があった?ちなみに料理はヒトの脳を発達させた要因の1つらしい。
(3)  AhRと核タンパク質のシトルリン化:AhRが核内でむちゃくちゃ多くのタンパク質のシトルリン化を促すデータが出てた。Th17・リウマチとかに関係ある?KLFG, CSP-1分子もAhRで動く。
(4)  AhRリガンドの多様性と多彩な作用:その分子メカニズムは不明。リガンドの量、親和性、代謝、AhR非依存性の作用等々の差が生む?Good ligandsとBad ligands。NaturalかArtificialか、EndogenousかExogenousか。リガンドはいろいろ。
(5)  強力なAhRリガンド:FICZとI3C (胃酸で変化してICZ)。食事摂取でAhR量の低下による機能をレスキューできるデータがいっぱい出ていた。FICZ-AhR-CYP1A1はループを作っている。新しい概日時計になる?FICZは紫外線照射による皮膚産生だけでなく他の臓器でも作られているらしい。生理的リガンドは生体内での量や動態はまったくわかってない。
(6)  AhRと脂質代謝:TCDDで肝臓に脂肪が溜る。脂質代謝の変化。鉄も過剰になる。REVERBαの抑制が関係する。TCDDとRorαは同じ遺伝子発現プロファイルになって親戚同士。Th17を増やすのと同じ?
(7)  AhRと腸内細菌:TCDD or TCDFは腸管フローラを変化させる。腸内細菌もAhRに影響をうける。たぶんIL-22とか抗菌ペプチドを介したindirectな変化。
(8)  AhRとNFκβ:AhRはRelBと相互作用する。
(9)  AhRリガンドがTh17とTreg誘導能を持つものに分かれる進化的理由:全く不明。AhR-ILC3-IL22-antimicrobial peptideの系はほぼ確立。
(10)  AhRとstemness:AhRはOCT4やNanogと結合して邪魔する?一般的にAhRの活性化でES細胞の分化が進んでStemnessはなくなる。概日時計の発生と関連?TGF-βは阻害? TCDDはSIRT1を阻害。老化を促進?
(11)  ARNTisoforms:ARNT1, 2, 3とあるらしい。しかもリン酸化もされる。研究はこれから。
(12)  AhRについてのBASIC QUESTIONS:
        1)Why do we have an AhR?
        2)Where it is important in our body?
        3)When it is activated?
(13)  AhRとミトコンドリア:これは結構大事な気がする。調べたい。AhRシグナルの可視化実験とか重要。
(14)  遺伝子と環境:TCDDのシグナル経路分子欠損マウスへの投与で見られるフェノタイプとか。
(15)  IDO1/2、TDO:内因性のリガンド形成にかなり大事。常に調べておくべき酵素群。LPSやPGE2, IFN-gはIDO1の発現上昇させる。それでkynurenineが上がる。IL10 receptorも腸管上皮細胞で上がる。
(16)  皮膚バリアとAhR:コールタールはAhRリガンド。AHR活性化は皮膚バリア機能強化する。腸管と同じ感じ。フィラグリンも上げるらしい。AhR欠損マウスでは黄色ブドウ球菌増える。
(17)  老化とAhR:年寄りマウスの皮膚のAhR発現量は若者マウスに比べてかなり圧倒的に高い。P16とか誘導する?(うろ覚え)。CTLA4も誘導するらしい。その結果、免疫系も老化、疲弊、低反応になる。
(18)  ニューロンとAhR:AhR活性化で樹状突起が劇的に減る。ミエリン構造も変化する。
(19)  AhR研究の今後:次から次へと新しい発見がある。
        なので従来のcanonical pathwayにこだわらない。常に新しいアイデアを探す姿勢が(当たり前だけど)AhR研究でも大事。優秀な研究者は現状をちゃんと認識した上でその分野に常に新しいアイデアを求めている。Dr. Birnbaumはそのような研究(論文)を“New Pearls”と表現してた。

“Laboratory (実験室)の意味”(平成28年7月20日)
   現代社会は10年前よりイノベーションの重要性がずっと強調されてきていて、このトレンドは学術雑誌の論文採択にも影響を与えている。トップジャーナルに掲載されるためにはサプライズを伴う新しいアイデアが、近年特に強く求められている。つい先日も論文リジェクトされたし本当に面倒くさい時代になった(笑)。ただ本来、“Laboratory (実験室)”という言葉に象徴されるように、サイエンスがイノベーションを牽引するエンジンである。 僕らは忙しすぎて研究の原点をすぐ忘れてしまいがちだけど、リジェクト論文も、自分たちの研究の根源的な価値をより深く考えるきっかけと思わないと(笑)。また、いま行っている研究活動も“Laboratory”にふさわしいことをしているか良く考えないといけない。

“息子が医学部を再受験した友人(研究者)とその息子との会話”(平成28年2月26日)
   私大の医学部にとりあえず受かったのでその初年度分を保険として国立大医学部の受験前に払ったとき。
息子「お金振り込むの?お父さんの車3台分だよ。」
父    「何言ってるんだ。お父さんの車はマーチだけど特別製なんだ。2台しか買えない。」
   再受験することにした時、
奥さん「お父さんみたいに、研究者になるの?」
息子   「そんな闇に向かって行くようなことは出来ないよ。」
   我々は闇に向かっていたのでした(笑)。

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“クリスマスの約束”(平成27年12月24日)
   クリスマスイブに毎年TBSで放送される「クリスマスの約束 by小田和正」を見ていたら小田さん以外の出演者が異様に緊張しているのがテレビ越しにも伝わってきた。「中途半端なものを出してそれが評価されていくのは自分には耐えられない(からリハーサルを何度も繰り返して本番にのぞむ)」という小田さんのプロフェッショナルな姿勢が強い緊張感を生み出しているのだろう。コーラスの音程はずしたりギター間違えたらえらいことになりそうだし。 ノーベル賞学者の前でセミナーするような若い研究者の境遇に似ている。でも小田さんに出演依頼されてあの場に出られる人たちは幸せだしきっといろいろ勉強になると思う。論文も中途半端なものを出して評価されるより完璧にして出す方が聴衆(?)に喜ばれるし自分も満足できるはず。

“スーパーサイエンスハイスクール(SSH)高校生オムニバス講義”(平成27年8月12日)
   SSHに指定された高校の生徒へ生命・医学研究について紹介するオムニバス講義が行われた。この講義は毎年恒例で、僕はいつも「生命の維持における免疫の不可欠な役割」について「抗体」を中心に話しているので今回もそれについて説明した。質問もありそれなりに関心を持ってもらえたとは思うけど、話したあと自分がいま興味をもってやっている研究を紹介したほうが良かったかな、と思った(多分受けが例年より悪い気がしたため?)。
   「世の中にはこんな面白い研究をしている人がいるんだ」という風に感じてもらう方が「世の中にはこんな面白いことがある」と紹介するより高校生(あるいは高校生でない聴衆でも)の心により直接的に刺さるのではないかと思う。やっぱりオリジナルほど強いものはない。来年はパワポの構成をすべて変えたい。

“新学期にあたって”(平成27年4月1日)
   自分の哲学と斬新で刺激的なアイデア、そしてそれを裏づけするデータがちゃんとあればこの世界(研究者)は、とても自由で新鮮でかつ楽しい。それがないとほぼ死ぬ(笑)。オシム前日本代表監督(ハリル新監督も?)はサッカーでそれをやろうとしたのだからやっぱりすごい。世の中にはアレルギーで困っている人がまだ山のようにいる。とにかく、みんなで山梨から世界中の度肝をぬかせられるように頑張ろう。

“年度末”(平成27年3月23日)
   大学の年度末は異常に忙しい。既に4日連続で卒業祝い、送別会、祝賀会等をしている。ここ10日間に限れば7日間飲み会している。絶対何かがおかしい(笑)。でも例えば昨日は某N先生主催の某S先生の祝賀焼き肉パーティーで出ないわけにはいかない。全員僕より年長でしかもみな元気でよく飲み食いするので、肉焼いてビールの注文取って空いたお皿さげてと大忙しだった。それらの仕事が忙しくてあまり酔っていないつもりだったが帰りにN先生のコートを間違えて着ておこられた。他の会もこの時期は一期一会のものばかりだからしょうがない。ワイン飲む量をセーブしながらあと少しだけ乗り切りたい。

“研究に退屈している人はラボに必要ない”(平成27年3月21日)
   サッカー日本代表のハリルホジッチ新監督が決まって選手が発表された。“競争”のモチベーションを高める選手選考で今後がとても楽しみ。アギーレ前監督は残念だったけど「国を代表する選手に選ばれてそのことに退屈している選手は必要ない」という彼の言葉は胸に刺さった。「研究に退屈している人はラボに必要ない」と言い換えると、研究者はいつも自分の研究にエキサイトしていないとダメということ。自戒も込めていつまでも何かに興奮し続ける気持ちを持ち続けたいと思う。

“そろそろ年末”(平成26年12月1日)
(その1)休日に大学のそばのお風呂家さんに行ったら湯船で見ず知らずのおじさんから「先生、あの新病院はいつできるし?」と尋ねられたので「建物は来年の夏頃にはできるけど引っ越しとかあるから稼働するのは早くて来年末ですかね。」と答えた。「外来、待たんですむようになるんか?」とさらに聞かれたので「たぶん。あと医学は日進月歩なので最新の病院が一番いい病院だからできたら日本一の病院ですよ。」と答えておいた。でもいったい誰なんだあの人(笑)。
(その2)寝坊してスタバに行くのが遅れたら薬理のK先生(こちらも常連)が注文カウンターにちょうど居た。一緒に並んだら「今日は二人でお待ち合わせですか?(笑)」と店長さんに言われたので「ええ、昨日の夜から一緒でした。」と答えておいた。

“日本時間生物学会”(平成26年11月7−9日:福岡)
   いつも最大2日くらいしか学会には参加しないので今回3日間福岡に滞在できたことは、「研究」について色々な考えをまとめる時間ができて良かった。時計研究も1個の細胞ベースで考えるのが基本であり、分子時計は細胞が参照あるいは利用するプログラムの1つと思った方が概日時計の本質に迫れると改めて思えた。 常に細胞の目的を中心に考えることを忘れないようにしたい。今年度は腰を抜かすような研究はなかったと思うけど(それはそれで安心したが)いくつか気になったことを以下にあげると
   (1)シアノバクテリア研究などから推測すると概日時計のしくみは、転写翻訳ループの他にもう1つ周期が安定した時計があるのだろう。ほ乳類の細胞でこの役割を果たしている分子時計の発見が早晩あるかもしれない。
   (2)レタスの成長を早めるためには概日時計と環境(光)を同期させることが必ずしも最善の手段ではなくて(もちろんある程度同調しないと成長は阻害されるのだが)少しくらいストレス(光同調がずれる、あるいは光以外のストレス刺激を与える)ほうが良いかもしれない、という考え方はヒトでもあてはまりそうでとても興味深かった。レタスの場合ストレスは糖代謝に反映されるらしい。人間も同じである。何か新しい研究ができそうな気がする。
   (3)時計遺伝子mRNAのメチル化はどの細胞(マスト細胞)でも起きているなら新しいアレルギーの治療標的になるかもしれない。
   (4)時々は研究の歴史(時計研究の歴史やアレルギー研究の歴史)に思いを巡らせて自分達の研究の位置づけをしたほうがよい。欧米の研究者は当該研究のコンテキストを常に意識している。CNS系の雑誌に投稿するとうんざりするほど指摘される“conceptual advance”というものについて考える基盤にもなる。
   (5)ヒトは本来一日2回眠っていた生き物らしい。このことは知っておいたら何かの役にたちそう。
   (6)やっぱり(思ってた通り)TGF-β(の発現)も時計Clockの制御を受けるらしい。
   (7)慢性腎不全など臓器障害がひどいとClock発現も変化する(時計が変調?する)。多臓器連関は流行なので、腎臓と肝臓を一緒に調べていくようにアレルギー疾患でも鼻粘膜と肝臓とか、肺と腎臓とか脂肪組織とか関連づけて調べると面白いかもしれない。
   (8)副腎皮質ホルモンが痛み感受性をあげる理由(メリット)は何だろう?すべての痛みに共通なのだろうか?
   (9)喘息は薬(吸入ステロイドとβアゴニストの配合剤)が良すぎて時間治療もくそもなくなっているのは研究者としては困ったことだ(笑)。
   (10)三日間、昼ラーメン夜もつ鍋の生活は確実に体重を増加させる。

“Homeodynamics in Clocks, Sleep, and Metabolisms (東京)”(平成26年9月24日)
   概日リズムと睡眠と代謝の研究者が集まったシンポジウムに参加した。ジェネティクス、神経回路、製薬、生化学、システムバイオロジー等々あえて異なるアプローチの研究者を集めていたところがとても現代的だった。
   (1)膵臓のインシュリン分泌はBMAL1変異でダメになるらしい。インシュリンの貯蔵過程までは正常なので開口分泌の障害とのことだった。マスト細胞の脱顆粒もチェックしたい。
   (2)細胞内の糖、アミノ酸、脂質代謝制御に関わる遺伝子群はほぼすべてE-box配列を持っていて、CLOCK/BMAL1の標的遺伝子である。つまり細胞内の概日時計の主要な機能は細胞内代謝系の時間的制御に他ならない。 Chip-SeqでみるとCLOCK, BMAL1, PER, Cryはすべて標的遺伝子群にくっついたり離れたりしているし、(on/off)、RNA polymeraseの結合やヒストンのメチル化(H3K3me3とか)も概日リズムを示していることが証明された(BMAL1は日中CT6でピーク)。 とくに概日リズム性の発現を示す遺伝子群は転写にかかるエネルギーコストが高い(発現レベルが高い)遺伝子群らしい。なので高濃度グルコース下で細胞培養するとそれらの遺伝子群の振幅が大きくなる(平均値は変わらない)。細胞の見事な知恵の1つだ。 あとPerやCryはClock/Bmal1とindependentにくっついている標的遺伝子がかなりある。特にCryに著明。Cry独自に核内受容体とかの転写因子に結合するケースが多いと思われる。
   (3)Per2のC末端部分でCryとFBXL3が競合的に結合する。なのでCryがないとPerの発現は不安定。
   (4)Per1k/oマウス、Per2k/oマウスはともにLD,DDで行動の概日リズムにはあまり変化なく、LL条件で著明に変化を受ける。光による位相変化と概日リズムの維持に重要な役割をしている。
   (5)時計遺伝子欠損細胞やマウスを時計遺伝子の正常体、変異体とかレスキューする実験が多かった。どれもすごく上手く機能しているのがびっくりだったが、そんなデータがあれば論文に説得力が増す。
   (6)「Chronobiology Meets Big Data: Human“in the Wild”」っていうタイトルのポスター提示があったけどレトリックが素晴らしい。あと“Next generation”の多用も多かった。かなり使い古されてるかもだが、僕らもできたらそのうちどこかで使いたい(笑)
追記:
   同じ日に別の場所で東大医科研の田中教授のセミナーを聴いた。 グルココルチコイドレセプター(GR)の生理的役割は生体にストレス(高血圧、食事不足、感染等々)がかかったときにいろんな細胞や組織で様々な代償機能を発現させて恒常性を維持することのように見えた。なので本当の意味でストレスフリーなら要らないのかもしれない。ただし生きていればなにかしらストレスはかかるものだ。 あとGRαのホモダイマーがメインに働きGRβはあまりよくわかってないらしい。さらにステロイド抵抗性についてもどうやら今までのモデルは間違っているらしい。概日時計との関係等まだまだわからないことだらけ。ただGRは奇跡的にすごい分子の1つであることは間違いない。

“おかしな夢”(平成26年9月11日)
   あまりにも疲れて眠かったので仕事早く切り上げお風呂屋さんによって寄って帰宅しワイン飲みながらご飯食べて8時頃に寝てしまった。朝までスウェーデンに二度目の留学をしている夢を断続なしにみていた。 旧知の研究所長に再会したのでハグして「long time no see」とか言うと「ほんとだねえ」と日本語で返ってきた。「Do you master Japanese?」とか聞くと「いやいや」と返事。なんでこちらが英語で、むこうが日本語なのかまったくわからなかった。 所属することになっていた研究室の外人のボスは僕が来ることを知らず、会ったその場で“中尾篤人”と入れてグーグルサーチした。宿泊する所がなく研究所のソファに寝ていると掃除のおばちゃんに朝方起こされてそのまま目が覚めた。最近、休みがないからかなり疲れてる? あるいは留学時代みたいにTGF-βの研究をまたやりなさいって言う事なのか。よくわからないけどなんか懐かしかった。

“大学の使命”(平成26年9月9日)
   最近は、毎回ラボのミーティングでサイエンスの目的とか進め方を何度も一から説明している。でもよく考えるとそれは本当は馬鹿らしいことなのである。ここは小学校でなくて大学なのだからそんなことは本来自明であって欲しい。このレベルでとまっていると論文採択の最近の厳しいハードルをクリアできる気がしない(つまり研究の足跡すら残せなくなる)。
   まず各自が自分が知りたい(やりたい)ことをしっかりと明確にすること、そしてあとは教授をあてにせず(しょっちゅう間違えるし)各自が自分の頭で新しく、オリジナリティにあふれていて、社会にインパクトを与えるような研究に自分のテーマをより進化させられるか、よく考えて進めて欲しい。コントロールがしっかり取れていてかつ斬新なデータをときどきは(3−4ヶ月に1回くらい)ミーティングでみせて皆を驚かせてやる、くらいに意識を変えよう。そうしないと僕もパフュームのDVD見る以外、生きる楽しみがなくなる(笑)。

“日本アレルギー学会”(5月9−11日:京都)(平成26年5月11日)
   今年度のアレルギー学会で印象に残ったことを忘れないよう以下にいくつか記しておきたい。
   1)アレルゲン祖抗原ではなくてアレルゲンコンポーネントタンパク質に対するIgE抗体検査が臨床で実践されはじめた。食物アレルギーの感作機構の解明や交差反応性の解析などに役立ちつつある。マウスを使った研究とアレルゲンコンポーネントIgE抗体検出を組み合わせると何か面白いことができそう。
   2)経口免疫寛容の破綻が食物アレルギーにつながるのは自明だがなぜ破綻するのかは未だに誰もわからない。マウスモデルではコレラトキシンなどのアジュバントを使って無理やりにトレランスを破綻させている。同様の機序がヒトで起きているのかどうか?その候補として、食事成分(脂肪酸等)、特定の腸内細菌叢(またはその代謝物)、添加物などの化学物質等々がアジュバントになっているのかを研究するのはとても大切。DHNAとかは逆に破綻を止めたらいいと思う。
   3)Local allergic rhinitisっていう概念はアレルギー性鼻炎だけでなく喘息や食物アレルギーでも使えると思うが、粘膜局所におけるリンバ球の集積構造の意義(特異的IgE抗体産生の場?)を解明するともっと説得力がある。
   4)アレルゲン免疫療法でTregが増えるメカニズムが知りたい。Bee Keeperではハチにさされる季節だけT細胞のハチ毒反応性が減少し、その季節が終わると(ハチにさされなくなると)またもとに戻るらしい。やっぱりある程度慢性的な刺激がトレランスの維持に必要なのではないだろうか。そのあたりがわかるとアレルゲン免疫療法のやり方について飛躍的に情報が得られる。
   5)ヒスタミンは、Th2反応の抑制、Th1反応の増強などいろんなところに効いてる。ヒスタミン止めないほうが長い目でみると良いのかも。マスト細胞。好塩基球だけでなくマクロファージとか他の細胞もヒスタミン産生できるところはややこしい。
   6)プロテアーゼ活性をもつアレルゲンの作用機構(アレルギー誘導機構)はかなり進んでいる。プロテアーゼ活性をもたないアレルゲンともつアレルゲン(たぶん寄生虫防御と鏡像関係)はアレルギーをおこすしくみがかなり違うのではないかと思う。
   7)CRTHっていう分子が臨床試験のトピックになっているのは初めて知った。勉強しないと。
   8)Follicular Thは今後アレルギーの診断や治療にかなり重要になると思う。
   9)マウスで得られた免疫学的概念はヒトではあてはまらないことがかなり多い。現在の免疫学の教科書はマウスの知見をもとにほぼ作られているから信じてはいけない。TNF-alfaとIL-1beta, IL-12の意義などマウスとヒトでは正反対のようだからバイアスをなくす必要がある。
   10)網膜色素上皮細胞はTGF-beta2を産生してTregを局所で生成しT細胞応答を抑制しているらしい。TGF-betaが免疫抑制に大事なことが再確認された。アレルゲン免疫療法の機序の解明とも関連し、もう一回TGF-betaとアレルギーとの関係の研究をアップツーデートな視点でやり直す必要がある。
   11)スギ花粉に感作されているが発症しない人でも花粉の飛散時には特異的IgEが上がるらしい。もちろん発症している人も上がっている。人間の体は案外、アレルゲンを簡単に体内に入れているのではないのだろうか。
   12)学会中に二日酔い状態は避けたいと思っているのだが、今回もやってしまった。反省。あと先斗町で美味しいお店がいくつか発掘できたが、たぶんすぐに忘れちゃうだろう。

“STAP細胞1”(平成26年2月7日)
   某臨床系教授との会話;
   某教授「結局、人間ストレスかければ、性格も意欲もリセットされて生まれ変わるってことだろう。俺の医局員に対する教育方針はまったく正しいってことだな」
   私「いやいや先生、先生の医局員にかけるストレスはSublethal(死ぬ一歩手前)でなくてLethal(死ぬ)ですから。全員アポトーシス起こして死んでますよ。」
   同じような会話が日本中の会社や学校でなされたに違いない。
   “STAP細胞2”
   iPS細胞やSTAP細胞の発見で世界中が興奮した。僕らの(その他大勢の)研究ではそうならないのは何故だろう?この問いかけは研究におけるかなり大事なことを含んでいると思う。疑問を解明したときの一般社会や生物学・医学へのインパクトの大きさ、解明した(と思った)ときのその解答に対する研究者や世間が抱く信用度、などなどが大きな差がつく原因である。 iPS細胞やSTAP細胞は、「細胞の初期化」の発見によってこれまでの生物学の常識を変え、それを文句のつけようのないデータで証明した。特に重要なのは細胞やキメラマウスを作って見せたことだと思う。「作ってみせる」に勝る証明はない。僕らの研究で言えば、「アレルギーを治せた(治せる)」、とちゃんと言えるのは、基礎研究にもとづいた薬を開発してその効果が臨床試験で証明されたときだけなので、動物実験でいくら上手くいっても世界は興奮しない。 研究テーマの選択が研究のアウトプットに決定的に影響するので、数十年後ではなく、たった今新聞の一面に載るような研究がしたい人は、研究テーマをしっかり時間をかけて真剣に吟味して選ばなくてはいけないと思う。
   “STAP細胞3”
   助教のO女史が幸運にも小保方さんのセミナーを聞く機会があって興奮して話していたので、「うちでも割烹着を採用しようか?」と言ったら「形だけ真似してもだめでしょう。」と至極まともな返事がかえってきた(笑)。これも同じような会話が日本中の研究室でなされたに違いない。

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“今年の(個人的な)5大ニュース”(平成25年12月21日)
5位:4月から医学科長になった。「医学部長ならわかるけど医学科長って何すかそれ?」と学生の認知度も低く、「僕もよくわからない」と当初言っていたが、その後、仕事が山ほど舞い込み、「2年たったら(任期)辞めてやる」と教授会の忘年会で酔って叫んでいた。
4位:出張で、鹿児島、島根、佐賀、新潟と今まで一度も行ったことがない場所に行った。ほぼホテルと会場の往復だけだったが、メインの繁華街で買物が少し出来て次回?に備えて土地勘ができたのは良かった。「新潟がこんなに大都市で住みやすそうなところとは思わなかった」とタクシーの運転手さんに言ったら大変喜んでくれて少し料金をまけてくれたが某Y県に住む僕としては素直な感想だったのである。
3位:台北で行われたAPCAACI (Asia Pacific Congress of Allergy, Asthma, and Clinical Immunology) 2013で台湾大学の知り合いの教授と再会できた。彼が順天堂大学に来たとき東京駅近くのポケモンセンターに連れていって(彼の子供へのお土産買うため)、その後Big echoで「雪の華」を一緒に歌って以来の友人である。今はすっかり偉くなってしまい今回のAPCAACIの副会長だったが、10数年前とほとんど変わらず優しかった。
2位:事務の大沼さんが甲府キャンパスに異動になり公募で選ばれた東野さんが4月から新しく事務担当になった。大沼さんも新しい職場でチャレンジしているし、東野さんも優秀で本当に助かっている。「この用事はスルーする」って僕が言うと「またですか」と言われるのも以前と同じである(笑)。
1位:中村くんの論文がJACIにアクセプトされた。中村くんとその家族に感謝。アレルギーと時間の関係はまだまだネタがいっぱいあってしばらく研究には困らない。この先にアレルギーの予防・治療の創出があるのかどうかが問題で現在取り組んでいる。いずれにせよ、来年も、誰も見たことのない新しいアレルギー研究を多くの人に認めてもらえるように頑張りたい。

“日本食品免疫学会”(at 東京大学)(平成25年10月17−18日)
 食品系の研究者や会社関係者が多数集まる面白い学会に参加させてもらった。
主なトピックは
(1)乳酸菌(プロバイオティクス)が腸管免疫系を(菌種によって)刺激あるいは抑制するのは既に当たり前で、現在の問題は生体内でのメカニズムは何か?ということになる。東大の長谷先生の講演では、腸内細菌(クロストリジウム属菌)が産生する発酵代謝物(特に酪酸、プロピオン酸、酢酸等の脂肪酸)が1つのカギ(少なくとも大腸のiTreg誘導には)のようだ。このような方向性(腸内細菌叢のメタボローム解析)で今後の研究は発展するのかもしれない。
(2)上記に関連して、では発酵代謝物(あるいは腸内細菌由来の別の物質)の標的細胞は何か?ということも重要である。腸管上皮細胞、樹状細胞(cDCやpDC)、自然リンパ球等々における研究は始まったばかり。もちろんT細胞やB細胞への直接的作用の可能性もある。
(3)プロバイオティクスの腸管内での作用が、いったいどのようにして全身的な影響を及ぼすのか?全身に共通する粘膜免疫系への影響や全身的なメタボリック効果を追求するような研究が今後盛んになると思われる。
 さてこれらを踏まえて僕らはどこに進むべきなのだろうか?いま行っているTGF-β、Resveratrol、AhR、体内時計の研究を、それらの研究の流れに上手くつなげてアレルギーとの関連の中で新しい概念を見つけて行きたい。

“Resveratrol 2013-Regional Meeting in Tokyo”(平成25年10月7−8日)
 レスベラトロールに特化した国際学会が今年は東京で行われた。
主な進展は
(1)レスベラトロールを経口摂取したときにヒトでもマウスでも血中濃度が効果を期待できる濃度までちゃんと上昇する。ついでにレスベラトロールの代謝物(硫酸化物とか)もかなりの濃度まで上昇する。ただしいずれも3−4時間がピーク。さらに腸管での濃度は血中の10倍くらいになるとのこと。やっぱりレスベラトロールの最初の標的は腸管?さらに作用を起こすのに重要なのは細胞内に取り込まれたレスベラトロール(代謝物ではない)らしい。
(2)レスベラトロールの摂取量は低用量(自然に食事で取れる量)がより疾患予防効果を示す可能性がある。高用量では逆にあまり良くないかもしれないらしい。このあたりの分子メカニズム的な説明はまだよくできない。
(3)レスベラトロールの分子標的はたぶんいっぱいある。Sirt1が大事な標的の1つであることも間違いないみたいだが、他にも直接の標的分子(phosphor di-esterasなど)がある。またそれらへの作用を介して間接的にAMPKやNF-kBなどに影響する(AMPKは直接の標的かどうかはまだよくわからない)。
(4)レスベラトロールは決して抗炎症作用だけの物質ではなく、炎症作用も山ほどある。その作用は、生物学的コンテキストに依存していて単純な区分けは理解を難しくする。TGF-βと同じようなもの。
 以上の知見を頭に入れて、レスベラトロールの作用(特に腸管粘膜免疫系)をさらに深く掘り下げたい。来年はハワイでやるらしいのでぜひ来年も参加したい(笑)。

“展覧会と同窓会“(平成25年9月9日)
 週末、小学校の同窓会が六本木であり、時間があったので国立新美術館でアメリカンポップアート展/アンドレアス・グルスキー展を見てきた。いずれも「アートとは視点をズラすことだ」というお手本みたいな展覧会で興奮できた。サイエンスもアートもやってることはまったく同じ。この感動を忘れないように、キャンベルスープの缶(by Andy Warhol)を買って机の上に置いておくことにする。そのうちただのゴミになるとは思うが、、、。一方、同窓会は、視点をズラすというより目を凝らして昔の面影を必死に探すという感じだった(笑)。 皆と会話するうちに小学生のときのことを徐々に思い出していくのが不思議かつとても心地良かった。人間の脳はスゴい。免疫の記憶も同じようなことが起きてたら楽しい。

“高校生にウケる講義“(平成25年8月13日)
 甲府南高校の生徒に対して、医学・生命科学についてオムニバス形式の講義をする機会が医学部で設けられた。自分の番は一番最初だったので終わったあと、一番後ろの席で他の人の講義を聞いて、どういう講義をすれば高校生にウケるのかを探ってみた。結論から言えば、どの講義もまずウケてるのかウケてないのかがさっぱりわからなかった。高校生、もうちょっと反応しようよ(笑)。 でも教官のほうは、どの人が普通の人に話すことに馴れていてだれが馴れてないかよくわかった。医学部の先生は総じてみな話しが上手いんだけど、レベル設定が一般大学生向けという感じが多かった。僕らくらいの年齢の人間には、現代の高校生の知識教養レベルがもうよくわからなくなってるんだと思う。結果として、言いたいことを高校生に届く表現に変換することが僕らにはとても難しい。

“免疫と時間”(平成25年8月5日)
 中村君の論文(JACI in press)では、全身に存在するマスト細胞は、副腎皮質ホルモンによる時間情報によって個々の時計を毎日リセットしていて、その結果、一兆個とも言われるマスト細胞の時計が同調し、アレルゲン刺激に対してある一定の時間依存的な反応をおこしている、と結論した。なので、個々のマスト細胞の時計がバラバラになったときは、全体の反応が均一化されるため時間依存的なアレルギー反応は見られなくなる。 それはスッキリした説明なのだけど、実際のところ、個々のマスト細胞の時計を壊した時のアレルギー反応は、正常なときに示す反応レベルのちょうど平均レベルではなく、最も強い反応レベルにシフトした一定の反応を示す。このような現象は時計依存的な他の生命現象でも多々見られるが、どうしてそうなるのかはよくわからない。免疫反応は生体防御反応として大事なので時計が壊れた時はデフォルトで強く反応するようになっているんだと質問者には答えるがメカニズムは未だ謎である。 もしかしたら生物時計の本質的な何かを内包しているかもしれない問題と思う。まだまだわからないことは山のようにある。

“中村君の論文“(平成25年7月30日)
 中村君の論文がようやく受理されホッとした。途中、欲を出して某N誌やI誌に出したりしたので、研究を始めてから受理まで結局2年以上の時間がかかってしまった。でもアレルギーと時間の関係を解明した自信作なので、アレルギー分野の医者や研究者が一番読んでるJACIで結果的には十分と思う。中村君の苦労に敬意を表してオーパスワンでお祝いしたい。もっとも中村君は飲めないから僕が1人で飲むのだけど(笑)。

“THIS IS NOT MY WEEK”(平成25年7月7日)
   小学生の時以来、何十年か振りに歯痛に悩まされて一週間過ごした。
いくつか思ったのは、
   (1)歯医者さんは意外に歯の痛みの訴えに共感しない(歯科にとって痛みは日常茶飯事だからだろう)。なので、もっと大げさに痛みをアピールすべきだった(笑)。あと歯茎の炎症による痛み(歯肉炎?)はとりあえず洗浄で経過観察が王道だということを学んだ。ただ痛みは強いストレス(免疫も弱める?)だから、内科的に痛みが主訴の患者さんを自分が見たときはちゃんと話をよく聞いてどんな痛みでも速くとりたいと思った。
   (2)歯茎が腫れて(炎症が起きて)、顎下リンパ節が腫れて、それから熱が出て、約1週間で沈静化する、という免疫応答の過程を改めて実感した(笑)。痛いときはATPが神経に働いているところを想起し、熱が出たときはIL-1が放出された(白血球が活性化された)と冷静に想像する一方「ヤバい死ぬかも」と焦った。
   (3)そもそも歯茎に細菌が炎症を起こすということは口腔内での平衡状態が崩れて細菌が増殖するニッチがあった(余地を与えた)、ということなのだろうか。これってクローン病とかでも同じ原理で良いのではないか、と思った。歯肉炎や歯周病について勉強したい。あと、痛みは痛風の場合と同じ原理か。なんであんなに痛いのか、ちゃんと解明したら面白いと思う。
   (4)歯痛は食事がとれなくてダイエットになる。肉を切らせて骨を断つ歯痛ダイエット。いや骨を切らせて肉を断つか。ただし辛すぎて薦められない。
   (5)歯が痛いと仕事ができない。締め切り迫った依頼原稿や論文リバイス等々は頭がもうろうとしてまったく書けなかった(仕事しなかった言い訳ではありません)。
   そんなこんなで、皆が10周年記念にケーキを買ってくれたのに、食べられなくてすいません。今度何かでお詫びします。

“新年度”(平成25年3月26日)
 新年度がまた始まるけど、この7月で山梨に来てちょうど10年目になる。 「アレルギーを治す」というゴールにはまだまだ微々たる貢献しかできていなくてまったく納得できないので、あと10年でなんとか自分自身が納得行くような結果を残したい。というか、結果が出ないとフラストレーションが溜まりまくって“草野球”とか“ワイン”とか“温泉”とか“きゃりーぱみゅぱみゅ(またはパフィーム)”とかで気分転換しなくてはいけない割合がどんどん高まり、ただでさえ娘に怪しい眼鏡をかけた人、と言われているのに、ますます変なおじさんになってしまう。社会活動の時間も増やしたいと思うけど、実はこれも、楽しいけど辛い「研究」からの逃げなのかもしれない。いずれにせよ、オリジナルなアイデアでアレルギーを治したい、と半分本気でまだ思っているで、この気持ちがずっと続くならまだあと10年頑張れると思う。

“日本薬理学会(平成25年3月21−23日、福岡)
 薬理学会のシンポジウムに招待されたので初めて薬理学会に参加した。ほとんどの演題が(当たり前だけど)病気の治療のデータまで出していたのが新鮮だった。免疫学会とかはメカニズムばっかりである意味面白くないのかもしれないと逆に思ってしまった。自分の発表が終わった夜は、本学の薬理学講座の宴会に参加させてもらった。高級水炊き料理店で行われたのだが、僕とK教授は1時間早く着いてしまい、二人で飲んでるうちに、宴会が始まったらすぐK先生は寝てしまい、僕は酔っぱらってお酒ばかり飲んでいて水炊き食べるの忘れていた。後日、K先生から「いっぱいお金支払ってくれてありがとうございます。」というメールが来たけど、自分がいったいいくらその場で払ったのかも覚えていないのだった。

“リジェクト”(平成25年3月1日)
 自信を持って投稿した論文がリジェクトされるくらい憂鬱なことはない。本当にやる気がそがれるし、何回も繰り返されるとどんどん元気が失われてくる。でも、こういう状況を簡単に回避する方法はないので、たとえ、2nd, 3rd ratingのジャーナルに載ることになっても、この研究は絶対に重要で面白くてインパクトがあると思って、ひたすら挫けないことしか、自分のモチベーションを保つ方法はない。まだまだ他人を説得する力が不足していると割り切り、野球でリリーフに失敗したクローザーみたいに、一晩寝たら次の試合に向かってさっさと気持ちを切り替えるしかない。

“研究者の日常”(平成25年2月28日)
某看護学校に授業に行ったときの会話;
某先生「私は最近スランプで授業のやる気があまりでないんですよ。 先生は楽しそうだからお仕事に行き詰まるなんてことないんでしょうね?」
僕「毎日行き詰まってます。楽しいときなんて年に1回あるかないかですよ。」
某先生「…..」
僕「いつも山のように仕事あるし、休みとか5年くらいないです。」
某先生「…..」
僕「ここ3日間毎日夜はホットモットの唐揚げ弁当食べてるし。」
某先生「今度飲みに行きましょう(笑)」

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“論文をReviewする簡便な方法”(平成24年12月24日)
論文の査読の依頼が来たら断らないのが研究者の務めなのだけど時間がかかって面倒臭いし、その割に本人にはメリットがほとんどないので困ることが多い。なのでできるだけ簡単に済ませたい。そこで最近、僕は次のような個人的基準を採用して他人の論文をreviewしている。その要点を一言で言ってしまえば「読後感」。論文を最初に読んだとき、「あー、時間の無駄だった」と思えば即Reject、なんか「面白くない」と思った場合、リバイスして面白くなりそうならAccept with major revision、無理そうならやっぱりreject、「面白い」と思ったときはacceptにする。この基準は、あれこれ迷うことなくすぐ自分の中で結論を出せるのですごく便利(あっと言う間にreviewが終わる)。ただし、この方法の問題は「面白い」の基準が極めてパーソナルでうまく言語化できないことにある。「面白い」って何なんでしょう、、、(もちろん実際はその雑誌のreview基準に照らして何回も読んでいることを念のため付け加えておきます。)

アレルギー学会1(平成24年12月2日)
アレルギー学会で大阪に出張。初日の夜に到着。さっそく久しぶりに会ったJ大学の人とN君と、お好み焼き屋にでかけた。軽く飲むつもりが、気づいたらワイン1本以上空けていた。翌日の講演はろれつがうまく回らなかった。

アレルギー学会2
そうは言っても参加したからには出来るだけ色々な人の話を聞くようにした。自分が知らなかった新しい世界を知るのはとても楽しい。逆に言えば、自分がだいたい知ってること、教科書や論文を読めばいいことを学会で聞くのは苦痛である。今回は “免疫療法”がトピックの1つだった。免疫療法は謎が多いので、多くの発表は興味深く聞けた。ブロッキング抗体やTregの誘導が免疫療法の作用機構ならTGF-βを減感作のときに使えばいい、と思ったが、どうやって使うかが課題。

アレルギー学会3
環境化学物質がどういうメカニズムで免疫系に干渉するのか、とても興味深い。AhRはこの点にどのくらい関与するのだろうか。マンパワーがあったら追求したいけれど、、、あとペリオスチンとTGF-βは深い関係がありそうだけどその辺はどうなっているんだろう、、、

アレルギー学会4
まったく時間がなかったので新大阪駅で、行列ができていた“豚まん”をお土産に買った。でも、たこ焼きが良かったと、家族に言われた(泣)。

“自分の論文を読みかえす”(平成24年10月23日)
学会の準備のため、自分が7年前に書いた論文を見直したら、「なんていい論文なんだろう。これはほんとに俺が書いたのか?」と思ってしまった。7−8年前(40代前半)がピークだったのかもしれない(笑)。先日も、山中先生が50歳でノーベル賞を受賞したので、娘から「お父さんもう駄目じゃん」と言われ、家内からも「洗濯機が故障しても直すのは、うちではお母さんだもんね」と、追い打ちをかけられた。とにかく昔の自分を越えるもっといい論文を書かなくてはいけない。

“アレルギーは、きめ細かい対応が予防・治療のカギ”(平成24年9月11日)
アレルギーは様々な外的および内的要素が複雑に絡み合って起こる。したがってアレルギー疾患の予防や治療には、薬だけでなく、衣食住といった環境要因のコントロールやストレスや睡眠といった内因的な要素の管理も大切である。「職業喘息」があるように仕事の内容ですら問題になることもある。これくらい多くのことを考えなくてはいけない病気は他にあまりない気がする。あらゆるパラメーターを総合して患者さんに向かいあわなくてはいけない点でアレルギー専門医は、真面目にやるならば、かなり面白いと思う。患者数も多く、難治性であり、現代の社会や生物学的環境も反映していて時代性もあり、研究すること(アレルギーの謎)もまだたくさん残っている。

“Natureじゃないの?”(平成24年9月7日)
修士課程に在籍したOさんの論文が公表されたら、「アレルギー」、「赤ワイン」、「レスベラトロール」といった社会的に関心の高いキーワードに満ちていたのでメディアにいっぱい取り上げられた。それはそれで良かったけど家内にメールしたら「Natureじゃないんだ」と一蹴された(笑)。

“松坂大輔メジャー通算50勝”(平成24年8月28日)
レッドソックスの松坂投手が先頃メジャー通算50勝をあげた。それをうけてマリナーズの岩隈投手が、「本当にすごい。メジャーで1勝することがどれだけ大変か」とコメントした。この言葉は、そのまま「インパクトファクターの高い雑誌に論文を掲載させることがどれだけ大変か」と言い直して、リアリティの全くない学生や大学院生に伝えておきたい。

“四大学(東大、千葉大、群馬大、山梨大)リトリート”(平成24年8月25日)
群馬の伊香保温泉で今年の四大学(医学部)リトリート(各大学で研究をしている医学部学生が集まった合宿形式のセミナー)が行われたので参加した。参加していた他大学の何人かの学生は、既に下手なポスドクや教官よりはるかに優れていて、自分の地位も早晩危ういな、と思った。彼らの共通点は、向上心が高い、勉強量が多い、性格が素直、といったところかと思う。これまでイマイチな学生は、この3点を意識的に変えていくことで絶対優秀になれるのでぜひ試してほしい(特に山梨の学生)。

“生命科学を教えるということ”(平成24年7月23日)
 今年も県内の高校生に、大学からの出前授業として、「免疫学入門」的な授業を行ったけど、生物系は、希望者が少なくて、人文系、理工学系の先生の授業のほうが人気が高かったみたいだった。自分が高校生のときもまったく生物に興味はなかったので偉そうに言う資格はないけど、高校生(たぶん中学生も)の多くが、生物学に興味を持てないとしたら理由は明白で、教材(したがってそれを使った授業)が面白くないからだと思う。現在の生物学や医学における革命的な進歩(ゲノムプロジェクトやiPS細胞や老化や脳科学研究等々)をまったくスルーして、細胞の一般的な構造とか未だに教えているようでは面白くないに決まってる。将来に自分がなりやすい病気が予言できたり、腎臓が作れたり、寿命も延ばせたり、記憶を増強する薬ができたり、といった話から生物学の授業は絶対入るべきだと思う。細胞の詳細などは後回しで、その結果、むしろ細胞の詳細が知りたくなったら授業は成功なのではないだろうか。でもこの時代に生物学に興味をもつ学生を増やせない初等・中等教育ってやっぱりちょっと問題のような気がする。

“スイカ人間”(平成24年7月5日)
 最近、“スイカの臭い”が僕にはするらしい(笑)。外勤している病院の看護婦さんに、何か外来でスイカの臭いがすると言われ、さらに別の病院で医局にいたら、入ってきた女医さんにこの部屋はスイカの臭いがすると言われ、ゴミ箱まで調べられた(笑)。他にも何人かに言われたが、なぜか家内は何も言っていない。これって加齢臭なのかな、、、。でも“スイカの臭い”がするって生物学的にどういうこと?。

“理研-日本免疫学会合同国際免疫学シンポジウム”(平成24年6月30日)
 国内外における免疫学におけるスター研究者達が集まったシンポジウムが横浜で2日間にわたって開かれた。21名の演者のうち半分以上の14名が海外からで、これだけの人たちを呼べるパワーと魅力と人脈が日本(の免疫学)にはあるということを再認識した。
 2日間勉強して思ったことは、
1)Rorαがinnate lymphoid cell(ILC)のサブセットのいくつかの分化や機能に関与しているという複数の発表があった。Rorαは体内時計に制御されているので、たぶんILCの機能や分化にも体内時計が関係しているに違いない。
2)IL-33を産生する機構は細胞が死んで放出されるだけではない気がする。喘息モデルで産生されることなどは上手く説明できない。この点は、アレルギーの発症にとって重要なので、できれば研究したい。
3)ヌクレオチド(ATP)や核酸が免疫やアレルギーに与える影響はまだまだ宝の山かもしれない。核酸は競争激しいけど、ATPはまだまだ小さい研究室でも何かやれそうな気がする。特にマクロファージとATPの研究はもう終わってるのかと思ってたら、まだまだこれからだったのには元気がでた。
4)東大の谷口先生の講演は特に良かった。自分のラボのデータをもとに、免疫学の歴史や流行といった文脈を踏まえて、現在の考え方について再考や発展を迫るような話は、やっぱり研究の醍醐味を感じさせてくれる。オリジナルな新しい大きな考え方を世の中に提示して、研究分野に影響(インパクト)を与えるのが真の研究者なので、セミナーのときは、皆できるだけなんでもいいからデカイ話をしよう(笑)。

“野球の朝練再開!”(平成24年4月3日)
 暖かくなってきたので、今朝から野球の朝練が再開された。快晴ではあったが、気温はまだ4度だった(笑)。7時からのスタートなのに、気合いが入りすぎて6時半にグランドに着いてしまった。入念なストレッチやジョッギングで時間を潰していたが、だんだん飽きてきたところ、長老のN先生や僕より数歳上のK先生が、練習開始10分前に同じように現れた(笑)。若者達が7時過ぎに集まり出したときには、我々はキャッチボールしすぎて既に疲れていた。あと午後の時間も眠くてしょうがなかった。まあ、でも今年度もまた野球ができて嬉しい。

“大学の国際化”(平成24年4月2日)
 秋入学など、大学の国際化の議論が盛り上がっていて、山梨大学医学部も教育カリキュラムを変えようとしているが、一番簡単なのは、外国人を医学部教授にすること、学生のある一定数を留学生にすること(どちらも最低30%くらい)だと思う。あとは勝手に変わるのでは。

“特進コース第一期生の卒業”(平成24年3月31日)
 特進コース第一期生が無事卒業した。僕らの講座のH君もその1人である。H君や分子情報伝達学講座のT君は、英文雑誌に論文も出してすごく頑張ってくれたけど、周囲の大人達が彼らにかけた研究(あるいは生活?)指導という多くのエネルギーと、研究費(税金)というリアルな投資が、本当に、例えば東日本大震災で両親を失った子供たちに援助するより良かったかどうかは、彼らが今後、どれだけ頑張って社会や医学分野で貢献するかにかかっているのである。学生時代にちょっと論文出したくらいで満足していてはいけない(Natureに論文出したら許すが)。まあ、これは、決して少なくない研究費をもらって仕事をしている自分にいつも問いかけていることでもある。

“アレルギーと体内時計と現代社会?:パート2”(平成24年3月13日)
 「体内時計」は、アレルギー反応の時間依存的な制御に関与している(僕らが世界で初めて証明した)。「体内時計」が日中に花粉症や蕁麻疹を起りにくくしている仕組み(夜間は逆に起り易くしているのだが、、、)を解明すれば、アレルギー疾患の予防/治療のための新しいアイデアを生むだろう。このアイデアから生みだされる薬は、免疫系、神経系、内分泌系といった多くの生体システム間の協調作用を加味したものであり、従来の免疫系だけに介入する薬より、個体レベルで、はるかに良く効く可能性がある。
 小栗旬と山田優の電撃結婚のため、某フジテレビの番組から受けた花粉症関連のテレビ取材が今日カットされたので、ここに要約を書いておきます。あと、山田優はファンでした(笑)。

“アレルギーと体内時計と現代社会”(平成24年3月12日)
 「アレルギー」研究の醍醐味は、発症機構の解明と、症状や重症度(病態生理)に個人差がある理由を知ることと、予防や治療の新しいアイデアを生み出すことの3つかと思う。「アレルギー」は環境因子と免疫系との相互作用を基盤としたユニークな病気なので、この3つの中では、発症プロセス(アレルゲン暴露から特異的IgE抗体産生までの過程)の解明がもっともアレルギー研究らしい。
 最近の僕らのデータからすると、「体内時計」は、驚くことに、この3つのすべてに関係しているみたいである。この結果は、「体内時計」は、生命現象(細胞)における基本的オペレーションシステム(OS)という考えを裏付けている。現代の社会環境に適応した体内時計のOSのあり方が、アレルギー疾患を増やしているのだろう。
 では、アレルギーを予防/治療するために、この生命のOSを変える(バージョンアップまたはダウンする)ことは可能なのだろうか?たぶん可能である。縄文時代には戻れないので、OSをドラスティックには変えることはできないが、日々のライフスタイルや食事の内容や仕事の仕方や周囲の微生物環境などを細かく調整すれば、時間はかかっても、現状の体内時計OSを修正し、アレルギーの症状を軽減させることができると思う。患者さんの生活すべてに介入してアレルギーを予防したり治す時代が近づいている。昔のお医者さんと違う点は、レッキとした科学的根拠が示されている点である。

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“健康診断”(平成23年12月27日)
 「先に実施されました職員定期健康診断の血液検査の結果、あなたは精密検査が必要と判定されました。つきましては、、、」という知らせを受け取った。だが、その検査結果が同封されていなかったので、本人に見せられないほど相当ヤバいのか、と焦った。年末に不吉な話である。慌ててネットから検査結果を調べると異常値なのはコレステロールだった。なんだ、コレステロールかと安心したが、よく見ると正常値から40くらい1年で上昇してる(汗)。たぶん年齢のせいと思うけど狭心症で胸が痛くなるのはとても辛そうなので、今日から、ラーメンに味玉トッピングは止めようと決意した。

“未来は山梨大学で創られる?”(平成23年12月6日)
 今年の日本免疫学会でもアレルギー学会でも、体内時計とアレルギー(や生体防御)との関係について演題を発表しているのは僕らだけだった(ある意味浮いていた)(汗)。アレルギー関係のメインの演題は、好塩基球、innate immune cells、Th17、IL-33やIL-25などのサイトカイン、あと(徐々にだけど)腸内フローラ/腸管粘膜免疫だった。みな流行を追っている。なので、いまのうちにもっと論文出して、このテーマでは(できることなら)独走したいものだ。  体内時計とアレルギーとの関係は、決して僕らのオリジナルのアイデアではなく昔から知られていることではあるが、その関係をしっかり証明したのは僕らが今年初めてである。この先に、大きな金鉱が眠っているのか、あるいは体内時計はアレルギー(免疫系)のただの微調整機構の1つなのか、前者であって欲しい、と願って来年も研究したい。  昨日の社会医学、環境遺伝医学との合同忘年会で、ブドウジュースのようなワインの飲み過ぎて疲れてしまい、今年は、もう気分的にほとんど終わってしまった。来年は(も?)、しっかり重厚で、こくがあって、でもなぜか飲みやすい良質のワインのような論文を1つでも書けるといいな、と思う。

“日本アレルギー学会1”(平成23年11月10−12日、東京)
 今年のアレルギー学会は基礎医学者である日大の羅先生が会頭だったので研究色の強い演題が多くて面白かった。羅先生の専門であるマスト細胞が、演題の中心としてフィーチャーされ、マスト細胞にも多様性や可塑性があり、アレルギーの最終段階だけでなく発症初期や制御にもかかわっていることが、いっぱい示されていた。これからはT細胞だけでなく、他の免疫系細胞もすべて調節性の機能をもつことが示され、免疫学(アレルギー学)はますますわけがわからなくなるのだろう(笑)。ただ、マウスの実験系では、(示そうと思えば)何でも示せるのかもしれないが、そのようなマウスでの知見が、本当にヒトのアレルギー性の病気の本質なのかを見極める目を持つことが、このような混沌の中では、さらに大事になってくる。もっと患者さんを具体的にイメージして研究の方向性を間違えないように気をつけたいと思う。

“日本アレルギー学会2”(平成23年11月10−12日、東京)
 品川のJ苑でN君、Oさん、Hさんと発表をねぎらい会食。出された焼き肉を全部食べられなかった事がショックだった。完全な肉食系の僕には、かつてなかった事態である。やばい、年か。もっとも、肉の前にだされたキムチやらナムルやらをむさぼり食って、ワインを、がぶ飲みしてたせいという話もある。

“同窓会”(平成23年8月30日)
大学の同窓会が先日千葉で開かれた。卒後23年もたつと、当時の同級生は、(1)まったく変わってなくてすぐわかる人 (2)それなりに老けて来たけど5秒くらい考えれば誰だかわかる人 (3)ずっと見ててもまったくわからない人、の3つに分類された。(2)(3)はネガティブな感じかもしれないが、よく考えるとふつうで(1)がおかしいとも言える。ちなみに僕は皆に言わせると(1)らしい。成長がないのかもしれない。いずれにせよ医学部6年間をともに過ごした仲間との再会は楽しい。会話していると学生時代に戻ってしまっている脳の働きはものすごく不思議でぜひ誰か解明して欲しい。

“自分の研究をどれだけ相手に親切に伝えたいと思っているか?”(平成23年7月3日)
以下、グラントを審査する側から見た申請書書きのポイントについてのきわめて個人的な意見。
(大前提)申請書全体のレイアウト、フォントの選択、図、空白のスペース配分など、一目見たときに、きれいで読み易そうな印象を与えることがかなり重要、というかこれがすべてのような気もする。大事な研究のポイントが、すぐに目につくように、頭にひっかかるように書かれていると、斜め読みしても頭に入るから、さらに好印象。読むべき場所と読みとばしても良い場所のメリハリがついている申請書は素晴らしい。もっとも逆に言うと、ほとんどの申請書は(たぶん3分くらいで)斜め読みされるということでもある。実際、見た瞬間、読む気をなくす申請書が圧倒的に多いし、見栄えのよい申請書と研究内容は明らかに相関している。
(1)研究の背景と意義:その研究が必要であることの具体的な説得性があると受け入れ易い。例えば、過去の研究との継続性や予備実験データがあると印象がよい。一般的な考え方からの演繹だけだと弱くてインパクトに欠ける。
(2)目的:すぐ頭に入るシンプルな目的が好ましい。言い回しも重要。新聞記者的な才能があると望ましい。同じ事を言っていても抽象的な言葉で書かれると印象悪い。基礎研究の場合は、アイデアの新規性と独自性は、もっとも重要な最低限の大前提。これがダメだと評価低い(僕の場合は)。実験系を変えただけの研究申請も、基礎研究でもまだ意外に多い。
(3)計画:ごちゃごちゃ細かく書いても、分野が違うとほとんど理解できない。なので、普通の知識で理解出来るくらいの(でもちょっと具体性のある)簡潔な言い回しが必要。マイクロアレーを使って標的遺伝子を同定するとかの曖昧な計画は、もはや、使い古されていて、逆に評価を落とす。
(4)実績:論文業績があるかないか、よいジャーナルに論文があるかどうか、見るだけなので、これはごまかしようがない。でもタイトルまでチェックする気力はないことが多いから、申請した研究と関係なくてもいっぱい載せておくとよいのかもしれない(ただし、かえって墓穴を掘る場合もあるとは思う。)
(5)その他:臨床応用のし易さ(既にある薬の違う使い方とか)は医学研究の場合は、好印象。
(6)最後に:結局、マニュアルでなくて、自分の研究内容をどれだけ相手(第三者)に伝えたいと思っているかがすべてである。あと、どんなに頑張って申請書を書いても、相対評価なので落ちるときは落ちる(競争相手がNature出してたら落ちる)、という世の中の不条理に免疫にならないと研究者として生きていけない(やれやれ)。

“山梨9年目”(平成23年6月26日)
 山梨に赴任してこの6月で8年間が過ぎる。7月から9年目に突入するとこれは僕のキャリアの中でも、1カ所にいた最長年になることになる。実際、去年から、住民票も移して、税金も甲府税務署に確定申告して、すっかり山梨県人となってしまった。特に後悔はないが、週末、山梨ナンバーの車で赤坂とかを走ると、なんとなくちょっと恥ずかしい。まあ、徐々になれるだろう。
 さて、この8年を振り返って、ちゃんと仕事したかというと全然である。まだまったくピークは来てないから、(教授の任期はとりあえず10年単位なので)、あと2年間のうちで、自分のなかで、一区切りをつけられるような納得できる論文や総説をなんとか発表できるように努力したい。

“10年以上前に書かれたReview”(平成23年5月29日)
 特許申請に対する当局からのcriticismに対応するために、1997年にAnnu Rev Immunolに掲載されたTGF-βと免疫に関するRobertsによるReview(総説)を読まなくてはいけなくなり、日曜日の朝の静かなスタバで精読した。
 おそらく以前に、このReviewは読んだことがあるはずであるが、10年以上前に書かれたTGF-βと免疫系に関する当時最先端の知見のまとめは、今読み返しても、妙に新鮮だった。Smadも、TregもTh17もない時代に書かれた総説は、ところどころで現在では間違いと判明していることも書かれているが、TGF-βが免疫系において果たす役割の全体像に関する洞察は、驚いたことに、まったく現在の考え方と変わりなかった。幅広く知識を吸収して、それらを総合し、深く物事を考えて、本質を的確に把握し表現できるRobertsは、とっても頭がいいと思った。結局、良い科学者っていうのは、卓越した予言者あるいは優れた小説家に近い、ということかもしれない。

“ネパール訪問(平成23年5月9日)
 山梨大学GCOEプロジェクトの一環として工学部の人達と一緒にGW連休中ネパールに行き、現地の大学や病院を訪れ、共同研究の遂行および提案をしてきた。昨年に続いて二回目の訪問だったが、相変わらず、道路の車線や信号なんてないも同然だったし、バスの中だけでは人が乗りきれずに屋根の上に多くの人が振り落とされないようにしがみついていたし、何気ない道ばたに人が倒れていたし、トヨタのカムリに10人くらいの家族がすし詰め状態で乗っていて車が動かなかったりしていたし、その自由奔放さ(?)や日本とのギャップに、アドレナリン持続放出状態であった。しかし、現地の病院関係者や学生とふれあうと、昔ながらの(多分日本人が忘れてしまったような)笑顔や性格に癒されるのであった。
 滞在中、いつものように、メンバーの間に(僕も)、旅行者下痢症が蔓延し、もっていった抗生物質は足りなくなった。帰ってから、その話を大学の廊下で、環境遺伝学講座のH女史にしたら、とたんに“じゃあ”と言って去られてしまった(笑)。

“南三陸町における医療支援”(平成23年4月17日)
山梨県からの派遣要請により、平成23年3月18日から山梨大学は医療救護活動を開始していて、医療支援チームを派遣している。その第9班として、宮城県南三陸町を3泊4日で訪れた。今回は、医師1名(僕),看護師2名,理学療法師1名、事務職員2名のチームだった。とにかく、様々な経験をして、すごく色々なことを考えさせられた濃密な4日間だった。自分の脳の使ってなかった部分が10%くらい活性化されたと思う。変な話だけど、週末、東京/山梨を車で往復するとき、周りの景色がよく見えて、まったく事故をおこす気がしなかった。

“誕生日”(平成23年4月6日)
毎年誕生日を教室で祝ってもらってとてもありがたい(本人はあまり覚えてないんだけど)。当日は平日だったので家族からきたメールは以下のようだった。
家内「お誕生日おめでとう。早くインフルエンザ治してうつさないでね。」
僕(やれやれ)
娘「誕生日おめでとう。ところで、新学期の教科書代11300円かかるのでよろしくお願いします。」
僕(かわいい娘なので全然OKです。)
息子「誕生日おめでとう。仕事がんばってください。」
僕(ふつうだ。)

“和歌山県立医大でのセミナー”(平成23年3月25日)
 和歌山までとんぼ返りで行って来た。飛行機が遅れて予定の特急に乗れないアクシデントはあったが、なんとかセミナーの時間には間に合った。慌ただしかったけど鈍行列車に揺られて眺める和歌山市は暖かく海や山がきれいな風向明媚なところだった。機会があったらプライベートでもまた訪れたいと思った。

“八戸市小児医師会講演”(平成23年2月23日)
 医師会で講演するため、八戸まで行ってきた。夜7時からの講演のため、午前中に山梨を出て6時頃到着、講演/懇親会やって11時にホテルの部屋に戻り、翌日の朝7時の新幹線に乗って、山梨に戻った。到着時および帰徒時は、薄暗くて、八戸の街の景色はほとんど見れず、青森まで行ってきた気分はまったくなかった。まあ、これは学会のときとかしょっちゅうではあるが、、、。 ただ医師会の人達には暖かく迎えられ、よんでいただいて本当に感謝です。

“山梨大学/読売新聞市民講座”(平成23年2月19日)
 今年度の市民講座の担当に当たっていたので「食と免疫」(今年度の統一テーマが“食”なので)というテーマで90分間甲府に行って話して来た。力が入りすぎて1枚のスライドを説明し過ぎ、何年ぶりかで時間超過するまで話してしまった。聞かれた方達は、きっと飽きてきて迷惑な話だったと思う。内容も、看護学生を対象とした講義のパワポをメインで使ったのだが、それでも一般の方には難しく、かつどうでもいいことが多かったかもしれない。自己嫌悪と反省の多い講演だった。次回、同様のことをする機会がもしあったら、もう少しましに話せたらと思う。“みのもんた”がスゴいことがよくわかった。ところで、今回の参加者の平均年齢は60代くらいのような気がしたが、その人達があれほど市民講座を熱心に受講する光景をみると日本経済の発展を支えて来た人達のパワーに頭が下がる。日本の若者と中年層は(高校生はいたけど)、いったい何をしてるんだろうか、、、。

“365日のうち楽しいのは1日しかない”(平成23年2月16日)
雑誌ナンバー(Number)の最近号で、本田圭祐のインタビュー記事を読んでたら、インタビュアーが、研究者の世界では「365日のうち楽しいのは1日しかない」という言葉があるそうなんですけど(そう簡単に新しい発見などできないから)本田さんは幸せと感じる日は何日ありますか?とか質問してた。そんな言葉初めて聞いたけど、なかなか良いので今度から使わせてもらおう。ところで、最近、楽しかったベスト3は、サッカーのアジアカップのテレビ観戦、娘が山梨に遊びに来て鳥モツ煮を一緒に食べたこと、ヨーカドーで安くて美味しいワインを見つけたこと、、、かな。まったく研究と関係ない(汗)。時計とアレルギーの論文がアクセプトされたのはもちろん嬉しかったけど、楽しいというよりホッとした感のほうが強いのはなんか複雑な気持ちだ。次、大発見がんばろう。365日のうち、と言うより一生のうちに研究で本当に楽しいのは、2、3回と言い換えたほうがいいかもしれない。

“ドラクロア”(平成23年2月15日)
ドラクロアという女性の苦労話を紹介するNHKの番組で、先週は、児童養護施設で育って水商売などの職業を点々としたあと美容師として成功した女性、今週は、シングルマザーで子育てしながら司法試験を23回受け続けやっと合格した女性の話をやっていた。前者の女性は、いま、児童養護施設の子供たちの髪をボランティアで定期的に切ってあげていて、後者は、いま弁護士として、弁護士のいない地域で離婚や借金などの相談をうける仕事をしていた。いずれも自分のいままでの境遇を踏まえて、社会にしっかり恩返ししていて本当に心にしみた。ちゃんと苦労した経験がない自分はまだまだ甘いし、自分は、どうやったら身の丈にあった本当の社会貢献ができるのだろうか、と考えさせられた。

“中村君の論文アクセプト”(平成23年2月9日)
体内時計がアレルギー反応を制御している、ことを証明した中村君の論文が無事にJACIにアクセプトされた。この論文は、体内時計とアレルギーとの関係を明らかにした最初の論文としてエポックメイキングだと思っている(僕だけかもだが、、、)。脳や内分泌系の時計と免疫系の時計の時間がかみ合わないと適切な免疫反応が起らない、という仮説をこれからもっと追求して行きたい。時間にルーズなやつは免疫細胞レベルでもたぶんダメなのである。

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“来年の抱負”(平成22年12月26日)
以下が(とりあえず現時点での)来年の研究目標である。
(1)「免疫系の発達」と「食物アレルギー」
乳児期の腸管粘膜免疫系の発達と食物アレルギーとの関係について新しいinsightを得たい。免疫系が食物などの環境因子と相互作用しつつ、どのように発達していくかは、まだブラックボックスが多い魅力的なテーマの1つだと思う。母乳や食事中のタンパク質/ビタミンやあるいはTGF-βがどこに効くか?もっと広く、脳の発達とのアナロジーやストレスとの関係等も、とても興味深い。
(2)「時計」と「免疫系」
体内時計と免疫反応との間の関係をより明確にしたい。特に、いま投稿している論文のメッセージを、より深化かつ発展させていきたい。
(3)「ワインポリフェノール」による「アレルギー予防」
ほとんど自分の趣味だが、レスベラトロールとサーチュイン分子と免疫細胞との間にあるはずの関係を見出したい。
“ワインを飲めばあまりアレルギーにならない”
という妄想はたぶんホントだと信じている。
 これらをシンプルでキャッチーな形にして “究極のわかり易さ”を目指した論文作成や学会発表をしたいものだ。
 教室のみんながんばりましょう(笑)。

“カーナビ”(平成22年12月15日)
分子情報伝達学講座のK先生が講座のホームページで「カーナビは嫌いだ。道に迷いつつその途中の景色も楽しみ、自力で目的地まで到達するのが楽しいのだ。カーナビ(マニュアルの比喩?)に頼って実験して自分で考えない学生はもっと嫌いだ。」とおっしゃっていた。以下、それを読んだ友人と僕とのメールでのやり取り。
友人「K先生は、先生とまったく逆説だよね」
僕「あっ確かに。カーナビつけて迷わないほうが僕は好きです(笑)。目的(地)まで最短で行くのがベスト。今まで車で迷ったときはろくな事ないし、K先生は精神的に余裕があるか、運転が好きなのではないでしょうか(笑)。」
友人「先生は“ちい散歩”や”ぶらり途中下車の旅“は出来ないですもんね。運転じゃなくて目的以外のものにも興味がわくってことじゃないんでしょうか(笑)」
僕「僕は空いている高速をパフィーム聞きながら飛ばすのは好きだけど、それ以外は運転自体が苦痛なんだよ。」
友人「あとK先生は道に迷って、奥さんとかに”まったくなんで迷うのよ!なんでこっちの道選ぶの?素直に行けばいいでしょう?あ〜いらいらする”なんて言われることないでしょうからね(まぁそういう人をK先生は選ばないだろうが)」
僕「奥さんの差かよ(笑)」
でも実際は、僕の車はカーナビなくてしょっちゅう道に迷っているのである。

“教授会忘年会”(平成22年12月8日)
例年通り、教授会の忘年会がFホテルで行われた。去年から幹事(2年間)の1人で今年は会計担当だったので、酔っぱらわないうちにせっせとお金を集めるのが大事な仕事であった。しかし、本人は気づいていなかったが会の途中からはけっこう酔っていたようだ。極めつけは、二次会で某脳外科教授と某生理学教授にのせられ、会計担当としてやってはいけないことをやってしまったことだ。勢いにまかせ某フランスボルドー地方の某有名5大シャトーの1つの某ムートンOOOOOOを注文してしまったのである。酔っぱらって飲むムートンOOOOOOは、たいして美味しく感じなかった(泣)。あのテーブルには6人はいたからまあ皆共犯です。翌日は久しぶりにひどい二日酔いに苦しめられた。

“野球の朝練”(平成22年10月5日)
今朝は秋晴れのさわやかな空気で格好の朝練日和だった。 青空と白いウロコ雲の下、グラウンドの緑と木々の葉の間から射し込む光がまぶしくて快適だった。しかし、参加者は3人で、ピッチャー、バッター、“守備”、にわかれたら、“守備”(参加者の年齢順で私)は、内野から外野、左翼から右翼までフルカバーで走らなくてはならず、バテバテだった。頼むから1塁側にファール打たないでくれー(笑)。それでも今朝は気持ち良かった。

“低学年生の研究へのモチベーションを上げる方策”(平成22年9月29日)
医学部特進コースの学生の年に1回の発表会を聞いて以下のように思った。 1)低学年になればなるほど自分のやっている研究を理解していない。 2)っていうか、なんのためにやっているか、自分の意思が感じられない。 でもたぶんこれはしょうがないことなのである。そもそも医学研究をやるにあたって最も重要な、多くの(難治性の)患者さんとの接触やさまざまな病気についての知識がまだまだ全然足りないので、曖昧なモチベーションにならざるを得ない。ヘルペスウイルス感染症への実感がなくてヘルベスウイルス研究ができるだろうか?この低学年問題の解決には、“病気”よりざっくりした“生命現象”の不思議さにもっとインスピレーションを与えるようにするのが良さそうな気がする。

“アレルギーと体内時計”(平成22年7月5日)
自分が喘息なので、どうして深夜から明け方に発作で苦しくなるのか知りたい、というモチベーションで体内時計とアレルギーの研究を今年からはじめ、ようやくデータが出そろって来た。その結果は、思ったより斬新なコンセプトではなかったけれども、やはりとても面白い。体内時計は、液生因子や神経性因子を介して免疫系を制御している。神経/内分泌/免疫系は体内時計を介してつながっているのである。おそらく、免疫の老化や癌免疫などにも関係あるに違いない。まだ論文だしてないけど妄想だけはどんどん膨らむ。これから投稿するので、ちゃんと論文通るかどうかが一番の不安だが、、、

“ワールドカップ日本対デンマーク”(平成22年6月26日)
本田のフリーキックによるゴールには本当にびっくりした。1人でテレビを見ていて思わず、何が起ったか一瞬わからなくなった。最後の岡崎へのパスも凄かった。息子がHONDAのユニホームを毎日着て学校行ってるのもわかる気がする。ただし、1万5千円もするのがばれて彼は家内にひどく怒られていたが。でも、実は、僕も同じ物をしっかり買って持っているのである(汗)。

“送別会”(平成22年3月26日)
 大学院生の送別会で男6人でカラオケに行った。このパターンは初めてだったので、カラオケ屋に行く途中不安がよぎっていたが、やってみると盛り上がった(笑)。僕は運転手だったのでしらふだったけれど、意外にアイスウーロン茶でもスピードの「ホワイトラブ」を歌って踊れることが判明した。次からは、このパターンもありだった。定番だが最後は尾崎豊の「卒業」を皆で合唱して終わった。“この支配からの卒業”ってストレートな歌詞だが人間何かに支配されてるよなあっとあらためて思い出させてくれた。研究でも、もっとも大事なことは自由な発想である。

“自分の研究が本当に世の中の役に立つのか?”(平成22年1月4日)
年初にあたって、もう一度確認しておきたいことは、
1自分の研究がチャレンジングかどうか?
2自分の研究がユニークかどうか?
3自分の研究が本当に社会にインパクトを与える(医学研究の場合は、病気の予防や治療に将来結びつく)かどうか?
である。これらの問いに即答で簡潔に答えられるように、大学院生もスタッフも(僕も)、世の中の動きを常に把握して、いつも自問自答していなくてはならない。もっと根底には、自分自身が何をやりたいか(知りたいか)、 どう生きたいか、っていう大事なことがあるんだけど。

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“紅白歌合戦”(平成21年12月31日)
大晦日、紅白歌合戦を最初から最後まで(正確にはドリカムが終わるまで)見ていた。一番見てよかったと思えたのは、絢香だった(ファンとしてはパーフィームもよかったが、、、)。たとえエンターテイメントであっても、リアルで自然な姿勢が一番心をうつと思った。でもやっぱり格闘技やスポーツや科学のリアルさには勝てない気がする。

“落とし物”(平成21年12月26日)
山梨から持ってきたはずのスニーカーが片方ないことに、東京にもどって気がついた。あわててオオヌマさんに、“官舎の周辺にニューバランスのスニーカーが落ちてたら拾っておいてください。私のです。”と書いてメールした。すると “もしかしてグレーの片方ですか?(笑)”と即レスだった。“そうですm(- -)m”と送ったら、“階段の3階に落ちてました。今拾ってきました(笑)。教授室においておきます。”と返事がきた。もつべきものは、同じ官舎に住む有能な事務官である。それにしても、今年は、最後まで公私にバタバタした一年だった。

“研究をドライブするもの”(平成21年11月16日)
 ドタバタと誰かが廊下を走る音がして教授室のドアが強くノックされたと思ったら某S先生だった。
以前にも書いたけど、研究上で、きれいなポジティブデータが出るのは、宝くじに当たるようなものだ。特に、マウスを使ったインビボの実験だったら、300円とかじゃなくて100万円くらいの配当金の価値はある。だからポジティブデータが出たときは、論文としてまとめられるように、さらにアクセル全開して実験しなくてはならない。いずれにせよ、きれいなポジティブデータを得たときの興奮と、論文がアクセプトされたときの達成感が、研究をドライブするモチベーションである。そのためには、長くて苦しい潜伏期間が必要なのは当然である。ただし、S先生もネガティブデータばかりだったから嬉しいのはわかるけど、内容を考えると、今回はちょっと騒ぎすぎ(笑)。

“早稲田大学柴田研究室との合同ゼミ”(平成21年11月14−15日)
 千葉県安房鴨川の早稲田のセミナーハウスで早稲田の柴田先生の研究室と、うちの小泉先生の研究室(薬理学講座)と合同でゼミ合宿をした。それぞれ微妙に異なるけど、お互いにまあ理解できる範囲の研究テーマをやっていて、かつそれぞれがこれから共同研究していくので、とても勉強になる有意義な合宿だった。研究内容だけでなく、医学部の学生と早稲田の理工学部の学生のカラーは大分違っているので、彼らにとっても研究の進め方とかセミナーでの質問の仕方とかの違いがよい刺激になったと思う。ところで、早稲田の学生ののりにつられ、夜の懇親会で、“好きなタイプは戸田恵梨香でーす”とか挨拶したおじさん(僕のこと)は、彼らの目には、どう写ったのだろうか(汗)。

“腸内フローラシンポジウム”(新橋ヤクルトホール)(平成21年10月30日)
 自分でプロバイオティクスの研究もやっていながら、でも本当にプロバイオティクスで、アレルギー疾患とかクローン病とか予防できるのかなあ、と内心ずっと懐疑的だったけど、このシンポジウムで英国のNicholson博士とかベルギーのCani博士らの話を聞いていたら、絶対できる、と思えた。ここしばらくは腸内フローラと宿主(とくに免疫系)との相互作用は目が離せない感じになりそうだ。完全に洗脳され、シンポジウム後の数週間、毎日ヤクルトやらヨーグルトやら大量に飲んだり食べたりしていた。おかげで太った。

“アレルギー疾患の発症についての現在の考え方”(平成21年9月23日)
 今月号のJ Allergy Clin Immunologyにfilaggrin k/oマウスは皮膚からの抗原感作に感受性が高く皮膚炎を起こしやすいという論文が載っている。この論文を含め、既にほぼ間違いないのは、皮膚や気道、腸管のバリア機能の破綻は、アレルゲンの透過性や免疫原性を高めて、アレルギー疾患の原因になるということである。すでにウイルスやタバコ、ある種の化学物質とアレルギー疾患との関係はよく知られており、おそらくそれらの因子による上皮バリアの破壊が、アレルギー疾患の発症に直結しているのだろう。
 アレルギーは免疫系の過剰反応と教科書的にはずっと言われていたが、このモデルだと、免疫系は、バリアを破って侵入してきた環境由来の外部抗原に対して正常に反応しているだけである。結局、どうしてバリア破壊がTh2タイプの免疫応答を選択的に惹起するのかがこのモデルにおける次の大事な問題である。
 僕らは、JACI(2008年)の論文でタバコによる気道上皮損傷がTSLPを産生させTh2反応を惹起し気道炎症を引き起こすことを既に報告した。だからTSLPが(IL-25やIl-33でもいいが)どんな条件下でどんな細胞内分子機構の活性化によって産生されるのかを解明することが今後、非常に重要だと考えている。
 ただし、このモデルは単純すぎて、例えば、Treg欠損症における高頻度のアレルギー疾患の発症を説明できない。免疫学的には、体内における免疫系制御のバランスの破綻によるアレルギー発症のメカニズムを解明することのほうが、謎が多くより魅力的に見える。

“レビューの投稿”(平成21年9月1日)
 この夏、ここ数年間やってきた“経口TGF-βとアレルギー疾患”についてのレビュー(総説)を念入りかつできるだけ客観視した視点で書いてみた。自分の中では、「なんてすごいレビューなんだ。これが読まれたらみんなTGF-βをいっぱい食べよう(飲もう?)と思って、世界が大騒ぎになるかも。」と思って興奮し(どこが客観視だ)、”Nature Review Immunology”に原稿の投稿をプロポーザルしてみた。一週間後、その話題はあまりにフォーカス(too focused for our readership)しすぎているという断りの返事がきた。うーん、まだ納得できると思って、”Trends in Immunology”にプロポーザルしてみた。一週間たっても返事が来なかった(汗)。まあ確かに基礎のimmunologyの総説向きじゃないからいいか、と思ってプロポーザルを撤回し、臨床系の雑誌”Allergy”に原稿を送ったら、翌日low priorityと言われてリジェクトされた。「low priority!!!どこがlow priorityなんだ、馬鹿野郎、お前らこの価値がわからんのか、二度と”Allergy”には送らん」と怒りが収まらなかったが、気を取り直し、現在、“Clinical Experimental Allergy”に投稿中である。数日では戻ってこないから、ちゃんとレビューはレビューされてるみたいである。やれやれ。

“TGF-βの恒常的な産生を制御する因子は何か?”(平成21年8月15日)
 他のサイトカイン群とTGF-βが大きく異なる点は、TGF-βは、非活性型(潜在型)として体中の臓器、組織、血清中に常に高濃度(-ng/mlくらい)で存在しているという点である(よく知らないが、逆に、TGF-βの発現がまったくない臓器/組織ってあるのだろうか?あったらあったで興味深い)。つまり、ヒトの体の細胞は、神経細胞であれ、上皮細胞であれ、免疫細胞であれ、潜在型TGF-βをいっぱい含んだ海の中に住んでいるようなものである。したがってTGF-βによるこれらの細胞の調節機構の本質は、それぞれの局所において、潜在型TGF-βが活性型に転換されるしくみを理解することであると言い換えられる。
 しかしながら、実は、生体内で潜在型TGF-βが活性型に転換されるしくみはもとより、どのようにしてTGF-βの恒常的な産生が各臓器や組織で行われているのか、という点も、これまでまったくのブラックボックスである。
 僕の現在の関心は、この制御機構について知りたいということである。
タンパク質である以上、いくら半減期が長かろうと、生成と分解によるバランスによってある程度の産生量が維持されているわけであり、恒常性を維持するなんらかのしくみが必ずあるはずである。かつTGF-βの恒常的な産生がさまざまな臓器/組織で共通であることから、そのしくみはかなり普遍性があって単純なものと想像される。
 この問題は、いろいろな意味で重要である。例えば、腸管粘膜免疫の分野では、いま、腸管粘膜において、TGF-βをT細胞に供給する細胞やしくみが何か、というのが大きなナゾの1つである。これは経口免疫寛容という不思議な現象を解き明かすための大切な鍵である。経口免疫寛容の破綻が原因である食物アレルギーの発症の理由について考えるヒントも与えてくれるかもしれない。また、肺や肝臓、皮膚などの線維化による疾患(喘息のリモデリング、肝硬変、ケロイドなど)、様々な炎症性疾患、骨疾患、さらには、癌の発生や転移の発症機構や予防/治療を考える上でもとても重要だろう。臓器や組織に存在するTGF-βの量を人為的に制御することによって、それらの疾患の予防や治療が、将来、可能となるかもしれない。とくに予防医学への貢献度が高そうである。もちろん、その次には、どのようにして、生体内で潜在型TGF-βの活性型への転換が制御されているのか?という超難問が待っているのだけれど。

“勝つのはそんなに簡単なことじゃない”(平成21年6月25日)
昨日、ドジャースの黒田投手が、すばらしい投球内容で、4月6日以来の2勝目をあげた。試合後、記者団に笑顔で、「勝つのはそんなに簡単なことじゃない。やっぱりしんどい思いをして、いろんなことを考えてやっと勝てる。」と語ったらしい。なんかすごくリアリティーがあって、えらく共感してしまい、思わずこの文章を印刷して、机の横に貼ってしまった。(かつKURODA Tシャツも“購入”クリックしてしまった(汗))。ポジティブデータを蓄積して、論文を書いて、受理させることは、そんなに簡単なことじゃないのである。

“ストレス”(平成21年6月24日)
私がストレス感じてるときは、医局に、アマゾンやら楽天からのお届けものがやたらに増えるから、事務のオオヌマさんには一目瞭然である。今月は、ほとんど論文書きができなかったから、ええい、っと、“購入”クリックすることがやたら増えてしまった。まあ、買ってもCDとか本なんだけど。

“父の日”(平成21年6月21日)
バーミヤンで、3人(私、娘、息子)で、夕食(18時頃)中の会話。
*注:家内はバーミヤン嫌いなので不参加
息子(豚ニラ焼き肉ご飯食べながら)「あっ、今日って父の日じゃん」
娘(冷やしタンタン麺食べながら)「私は、覚えてたけど、、、」
私(キムチチャーハン食べながら)「今、言ってどうすんの?」
息子(餃子もつまみながら)「あー、言わないほうが良かったね」
以上で今年の父の日は終わりだった。

“サッカーワールドカップ最終予選オーストラリア戦を見て”(平成21年6月17日)
テレビで解説者が“日本はサイドを使わなきゃ”って繰り返し言っていた。それはそれでいいんだけど、サイドにボールがいっても、頑強な相手ディフェンスにいつも同じようなスピードとタイミングのクロスをあげていて、アイデアのかけらもないので、サイド攻撃の意味が全然なく、日本には点が入る予感がまったくなかった。逆にオーストラリアのケーヒルには危険な匂いがプンプンしていて、やられそう、と思ってたら、案の定、ゴールを2度も決められた。研究も一緒で、言われたことを、言われたとおりにしかやらない人には、ポジティブデータが出る予感がまったくしない。ケーヒルみたいなゴールへのハングリー精神(研究者として生きていかなきゃ、とか)と、俯瞰して考える力があるかどうかが、ほんのちょっとの考え方の問題なんだけど、結構大きく結果を左右してしまう。

“息子”(平成21年4月13日)
週末、家での会話
娘:「お父さんに似て、顔がでかくて嫌だなあ」
私:「…….」
息子:「いや、人間、顔じゃないよ」
妻:「さすが、アツシ、人間やっぱり中身だよねー」
息子:「いや、人間、髪型だよ」
(一同爆笑)。
*そう言えば、彼は、一人だけ、原宿の美容院に、お金を貯めて通っている。

“科学研究費”(平成21年4月8日)
平成21年度に申請していた科研費が無事当たってホッとした。 ウチのような小さな研究室では、科研費の採択は、即、死活問題である。国立大学法人化後、研究費獲得のための、競争が激しさを増している中で、一番不公平に感じるのは、大きなエスタブリッシュされたラボが重複して(教授とそれ以外のスタッフとか)公的及び私的研究費を獲得していることである。このあたりは、principal investigator (PI)制度が曖昧な点(若手研究者が本当の意味で独立できない)に起因しているとは思うけど、他の(国の)予算みたいに、1つの講座が得られる研究費の総額を抑制して欲しいと思う(税金の無駄使いも減らせるし)。既に有名な研究者を、いっぱい支援してどうするんだろう。なるべく広く多くの新しいアイデアをもった無名の研究者に研究費を配分することが、日本の研究の底辺を押し上げると信じる。地方大学の1研究者のひがみかもだけど(- -);。

“ジェネラルルージュの凱旋”(平成21年3月9日)
週末、救急医を志望する高校生の息子を連れて、映画“ジェネラルルージュの凱旋”を銀座に見に行った。日本の救急医療の現状と問題点、救急医療の根底にある基本的な理念(“助けられる人をできるだけ救う”という当たり前のことです)を、見事にエンターテイメントにしていて感動した。改めて、ドキュメンタリーや映画といった映像作品が持っている力の大きさを認識させられた。分野と表現方法は違うけど、このくらい完成度が高くて、社会の矛盾(生命現象の謎?)に言及し、読んだ人の気持ちを動かせるような科学論文を書きたいなと、隣で唸っている息子を見ていて、心底思った。でもエンドロールに出てくる映画製作に関わった人たちの数を見てたら、学生が100人いて、予算が一億円はないと、無理かもな、という気も少しした(笑)。

“バレンタインデー”(平成21年2月16日)
2月14日東京で行なわれた山梨大学/早稲田大学連携事業のシンポジウムで発表した。山梨大学にとって、とても大事な事業できちんと成功させなくてはならないというプレッシャーはあるけれども、理工学系の研究者の人と新しい発想で研究に取り組めるのは嬉しい。早稲田の施設は抜群にきれいだし、学生も山梨大学とは異なるカラーでこれからが楽しみである。懇親会を終えて、家に帰ったら、テーブルの上に、高級そうなチョコレートの空箱と包み紙の残骸が散らかっていた。おそらく家内が息子にあげたチョコレートを二人で食べたと思われた(泣)。そういえば、今年は娘からももらっていない(大泣)。まあ懇親会で山梨大学秘蔵のワイン飲んだからいいか。 (と、書いた文章を事務のオオヌマさんに送ったら、私があげたじゃないですか、と怒られた。)

“至福の瞬間”(平成21年1月28日)
朝、娘を駅まで送ったあと、時間があるときは、病院前のスタバに行ってコーヒー飲みながら論文読んだり、実験について考えたり、ただドーナツ食ったりしている。この時間が結構有意義である。あまり頻度は多くないけど、時々論文読みながら、すごい(?)実験のアイデアが思いついて、興奮のあまり、その日一日中ハイテンションに(僕にしては)なるときすらある。こういうときはさっそく大学院生を捕まえて実験計画話して “インフルエンザさっさと治して実験してね”(実話)となる。大学院生はいい迷惑だけど、僕的には、“その結果を見るまで死にたくないなあ”と思えるワクワクした時間をしばらく過ごせるのである。ちなみに、スタバのお姉さん達とは、すっかり顔なじみで、頼まなくてもカフェミストが出てくる。(注:インフルエンザのくだりはお互い笑顔の中での会話です。大学院生希望者が減ると困るので念のため。)

“アレルギーはもうすぐ解明される”(平成21年1月19日)
理研(ゲノム医科学研究センター)にセミナーに呼ばれて行った。アレルギー疾患の遺伝学をやっている某T先生とセミナーの後じっくり話しているうちに、2人の間ではアレルギー疾患の発症メカニズムが勝手に解明されてしまっていた。詳しいことは残念ながら書けないけど、あと5年くらいでアレルギーは解明されます(笑)。

“オバマ大統領の勝利演説”(平成21年1月6日)
年末に、池袋のジュンク堂に行ったときに、「オバマ大統領生演説CD」がいっぱい平積みされていたので、なんとなく買ってしまった。けっこう売れてるらしい。この年末年始に車の中で、聞いてみたけど、泣ける(汗)。特に、大統領選挙の趨勢が決定したあとのシカゴでの勝利演説は、ほんとに卓越してる。普通の白人大統領が言っていたらそれほど感動的ではないのかもだけど、史上初の黒人大統領が語るアメリカの歴史や未来は、ほんとに説得力に満ちあふれていてポジティブで熱い。アメリカの未来は(たぶん)明るい。 僕らの研究室でも、Yes, We Can (get our papers accepted in Nature?)を合い言葉に今年もがんばりたい。

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“量が質に変わる”(平成20年10月20日)
優秀な学生や研究者はどこが違うか?というと結局、実験する量が圧倒的に多い、というみもふたもないことに尽きると思う。頭がいいにこしたことはないけれど、データを出してなんぼ、という実験科学では、実験すればするだけポジティブな結果が得られる確率が高くなるし、失敗が多いほど、実験の意味やポイント、実験の恐さに普通の頭の人でも気づけるんだと思う。とにかく、絶対、量をこなさないと質に転換しない。ということで、1回や2回ネガティブデータが出たからといって、めげないでもっといろんな工夫をしつつ実験しよう!(P.S. 量が質に変わらない人は何かが間違っているはずだから相談しましょう。)

“サッカー日本代表vs UAE戦を見て”(平成20年10月10日)
どーでもいいけど
とにかくボールをとったらすぐゴールを目指して欲しい。パスの選択肢とか、頭で考えてる暇なんかないから(その間のコンマ数秒でボールとられちゃうし)、体っていうか本能的に反応してほしい。日本代表の問題は、技術じゃなくて、根底にはゴールに対する執着心の問題とスピード感覚の違いがある気がする(既に言いふるされてるけど)。ゴールエリアで躊躇するシーンはほんとに嫌いです。新しい日本代表を早く見せて欲しい。日本サッカーは日本の政治、経済、サイエンスの縮図です。

“ノーベル賞日本人4人”(平成20年10月9日)
周知のように今年は日本人4人が物理と化学の分野でノーベル賞をとられた。みな30-40代での業績なので、今後20年、日本がサイエンスの分野で世界に貢献できるかどうかは、現在の40代以下の人たちの中に将来ノーベル賞をとれそうな発見をしている人がどれくらいいるか、という話になると思う。 私の専門である医学分野では、iPS細胞の京大の山中先生がその筆頭かと思うけど、他に続く人がいっぱい出てこないとなあ、と思う(50代には阪大の審良先生とか京大の坂口先生とかいっぱいいる)。娘とこのニュースをテレビで見ていたとき、
“お父さんは、この流れに乗っていないのかあ?”と言われて思わず苦笑してしまったが、笑い事ではないので、ちゃんとノーベル賞を狙って(?)(ノーベル賞級の課題に取り組むように)研究したい。

“富士山8合目救護所医療ボランティア(平成20年7月20日-22日)”
夏休みの始めで、かつ3連休という最悪のタイミングで参加した。何も考えずに予定を決めてしまう私の悪い癖で(ここしか参加できる日がなかったんだけど)、家族にブーブー言われながら出発した。1日目、様々な方法で(内緒)、高地に体を慎重にならし、2日目、予定通り、生まれて初めて富士山山頂にトライした。が、、、、これが地獄の始まりだった。
8合目から山頂まで距離にして約2キロ、たいしたことはないと思っていたのが大間違い、100メートルも進まぬうちに、息が苦しく足が前に出なくなった。3分の1くらいきたところで真剣に引き返すことを考え始め、半分くらいのところで救護所のスタッフが救助されたらシャレにならない、と思い始め、3分の2くらいのところで、もうここで死ぬ、と覚悟した。幸い、山頂に近づくにつれて吹き始めた涼しく心地よい風に後押しされ、なんとか山頂の鳥居(アルバム写真参照?)をくぐることができた。あー、論文のリバイス出す前に死なないでよかった。富士山(高山病)恐るべし。山頂の富士浅間神社のお守りは高かったけど感動のあまりつい買ってしまった。(もちろん救護所の活動も無事こなしました。)(平成20年7月22日)

“NHKプロフェッショナル(7月8日放送)を見て”(平成20年7月9日)
NHKは、篤姫とサラリーマンネオ以外ほとんど見ないけど、ヤクルトの宮本選手が出るので、(野球好きの私としては)“プロフェッショナル”を久しぶりに見た。練習風景のグラブさばきだけでも見る価値があった。番組のメッセージの1つは“プロである以上努力するのは当たり前、他の人がやらないそれ以上のことをやるかどうか、でプロ野球の世界で生きていけるかどうか決まるんだ”だったけど、僕らのレベル(大学院)では、努力するのが当たり前になってないなあ、厳しい世界だなあと思いながら見ていた。プロ野球の世界には(もういい年なのに)やはり憧れる。

“ワールドカップ予選日本対バーレーン戦を見て”(平成20年6月23日)
研究で(たぶん)大事なことの1つは、研究上の疑問(目的)を、どれだけ速くかつ合理的に実験で解決するか、ということと思っている。最短距離で攻略しないと競争相手に負けてしまうし駄目なら違う方向にさっさと方針を切り替える必要もある。長い間この習性を続けていて短気かつ妙に理屈っぽくなってしまい日常生活ではあまりいいことはない(特に妻とはあまり論理的な話は難しい)。昨日の試合も、日本チームはゴールを速く決める気がないので、見ていてイライラした。

“ドライブ”(平成20年6月18日)
単身赴任なので毎週末、山梨/東京間を車で往復している。特に東京へ帰るときは週の疲れがどっと出て眠くて危ない。眠気防止に、いろいろ試してみたが、最近は、フルボリュームでパフィームのアルバムをかけながら運転することにはまっている。無機的だけど軽快なサウンドが妙にドライブにあう。頭の中が無になって“チョコレートディスコ”とか変なリフレインを知らずに口ずさんでいることが多い(- -);。まだ正気があるときは、このアキバ系のテイストを自分の研究に出すにはどうしたらいいか、とかボーっと考えたりしてる。

“誕生日”(平成20年4月6日)
誕生日だったので奮発して某3つ星レストランに妻と行った。自分の誕生日なのに支払いは自分持ちなのが解せなかったが、料理のアイデアはものすごく研究の参考になった。例えば
1 オリジナルな料理を一度解体して本質的部分だけで料理を再構築すること
2 まったく新しい素材を使って、既存の料理をつくってみること
3 従来使われている素材を使うけども、その調理法(火の通し方など)を工夫して既存の料理をつくること
いずれの場合も新しい料理が既存のものより美味しくならなければダメなのはもちろんである。とにかくオリジナルな新しい料理を作るんだという哲学がすごかった。ほとんど研究と同じだと思って感動して帰宅した(途中酔っぱらって気持ち悪くなったが、、、)。

短歌1(研究者編)(平成20年3月31日)
たまたま「ショートソング」(枡野浩一、集英社文庫)という短歌小説を読んだらとても面白かった。以下、研究室にて詠める(字余り):
えっ おまえ、全然理解してないじゃんと、ちょっとした会話でわかる衝撃

春分の日の妄想(平成20年3月20日)
今日は休みだったので朝からスタバでコーヒー飲みながら喘息における炎症とリモデリングの関係に関する総説(Broide DH. J Allergy Clin Immunol 121:560, 2008)をゆっくり読んだ。ちょっと優雅な気分だった。
さて、その総説はすごくよく書けていて大変勉強になったけれども、炎症とリモデリングの概念的な関係を知りたい、という根底にあるテーマは、なんとなく腑に落ちなかった。両者が独立した概念であるかとか、一方は他方に依存したものであるとかいう議論は不毛な気がした。そもそも炎症しかない喘息、リモデリングしかない喘息っていうのは、あり得ないのではないだろうか?
ここ数年の免疫学の進歩(自然免疫系の解明や新たなT細胞分化経路の発見など)があらためて教えてくれたことは、免疫系は病原体から我々の体を守るために高度に進化した精巧でとても合理的なシステムだということである。
アレルギー反応も生体防御反応の1つであるから、炎症はともかく、その表現型の1つであるリモデリングも外からきたあるいは外にいる病原体(ダニや寄生虫)から身を守るしくみの1つはずである。
だからアレルギー研究の正しい方向は、アレルゲンや寄生虫がどうして生体に選択的にTh2タイプの炎症反応やリモデリング応答を惹起させるのか?を明らかにすることだと思う。具体的にはダニや花粉、あるいは寄生虫抗原が上皮細胞や間葉系細胞、免疫担当細胞にどのように認識され、どのように選択的にTh2タイプの炎症反応やリモデリング応答を惹起するのか、を調べることが重要だと思う。
“認識”の部分のベースは、PAR2や(細菌、ウイルスなら)TLR/Nodとか、かなりわかってきているので“認識”の修飾とか、“認識”後の上皮細胞や間葉系細胞の応答について我々は特に調べたいと思う。特にTGF-βが発現あるいは活性化するしくみがとても気になる。ともかく、リモデリングの概念は、複雑化しすぎている。だから、僕らは、炎症とリモデリングの概念を統合したより単純なモデルをここ数年で提唱(データが出ればの話だが)できたらと思う。

“アレルギー”は、ほとんど何もわかっていない(平成20年2月17日)
日本アレルギー協会山梨地区主催の患者さん向けシンポジウム(2月17日)に出て、研究のきっかけのはずだった素朴な疑問を思い出した。忘れないように書き記すと、

  1. 乳幼児は食物アレルギーにどうしてなりやすいのか?
  2. 年齢を経るにつれて食物アレルギーが治る子が多いのはなぜか?
  3. 逆に成人になってきて魚介類などにアレルギーになるのはなぜか?
  4. 多種類の食物アレルゲンに反応していく子がいるのはなぜか?
  5. 食物アレルギーによるアトピー性皮膚炎の機序はどうなっているのか?
  6. 食物負荷試験をしなくても食物アレルギーを診断する方法はないのか?
  7. 食物除去以外に積極的に食物アレルギーを治療/予防する方法はないのか?
  8. 喘息による気道の炎症はどうしておこるのか?
  9. 喘息を本当の意味で治すことはできないのか?
  10. リモデリングは慢性気道炎症の2次的変化か?リモデリングを治せば喘息も治るのか?
    等々。
    以上の問題を解決して患者さんへ正しい情報を提供できるようにしたい。上記の疑問を持つ人はぜひ一緒に研究しましょう。このようなシンポジウムは基礎研究の現場では見えない患者さんの顔や声を実感することができてとても有益な機会だった。でもこうして書くと、あらためて、アレルギーはほとんど何もわかってないことがわかる。

“日仏先端科学(JFFoS:Japan France Frontier of Science)シンポジウム”(平成20年1月25日-27日、ロスコフ、フランス)
日本とフランスにおける30-40代の研究者が先端科学の進展についてDiscussionするという極めてユニークなシンポジウムに参加した(日本学術振興会とフランスのCNRS: Center National Research Scienceが主催)。
3日間、素粒子物理、燃料電池、地球外生命、暗号(コンピューターサイエンス)、脳科学、センサー、免疫など現在のサイエンスのトピックについて各分野の専門家が意見を交換した

参加した一番の収穫は、医学関係以外の人と、ホテルと会場の往復缶詰、“どこにも遊びに行かせないぞ”、状態のなかで、とても仲良くなれたことだった。普段接する機会がない他分野の専門家の人たちの問題意識や医学に対する認識を知ることはとても新鮮だった。また観測を主とする天文学者は世界を放浪するのが仕事だったり、エンジニアは政治や経済に明るかったり、数学者も仕事探しとセンター試験の監督に苦労するただの社会人だったりと、意外な側面も知り親近感がわいた。自分の研究(アレルギー)に対する新たなヒントも彼らの素朴な疑問を通して見つけられた気がする。

ロスコフという町は、静かで、お店もなく、かつタイトなスケジュールでお土産を買う時間もなかったけれども(たぶんもう二度と行かないだろう)、シンポジウムそのもの、(および多分それ以上に)滞在ホテルでのランチやディナーでの会食を通じて、日本では味わえないとてもよい時間が過ごせたと思う。シンポジウムの成功は、あくせくせず気楽で自由なフランスの雰囲気に逐うことが大きかったと思う(詳細は書けません)。来年は、日本開催とのことだが少し心配である。(平成20年2月1日)

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“経口TGF-β作用の未だ不明な点”(平成19年11月21日)
1 腸管で活性化されたTGF-βシグナルはどこにどう作用するのか?粘膜樹状細胞が標的?
2 ビタミンAや他の食物含有成分との関係
3 腸管内常在菌との関係
4 胃における作用
5 制御性T細胞、Th1、Th2、Th17細胞分化との関係
6 腸管内環境との関係
7 Toll-like receptorシグナルとの関係
8 血中TGF-β濃度上昇の意味
9 腸管に恒常的に発現しているTGF-β2との関係
10 治療効果
などなど

“講義のポイント”(平成19年11月21日)
講義をとてもエキサイティングに楽しくするポイントは、“新しい考え方をわかりやすく提示してあげる”ことだと思う。でも新しい考え方を毎回提示するような授業をするためには、その学問が絶えず進歩していなくてはならないし、教える方もその進歩に常に追いつき、時には自身の考えが追い越していくくらいじゃないとダメである(実際、自分のセミナーだったらこれがないと話にならない)。その意味で大学の教員にとって一番大事なことは、教え方も確かに大切ではあるけど、自分がいつも先端的な研究を続けて世界と戦っていることだと思う。

“NHKプロフェッショナル(10月16日放送)を見て”(平成19年10月17日)
NHKプロフェッショナルという番組で、国立大学合格者を100倍にした京都の市立高校の校長先生の話をやっていた。その鍵は、生徒の“知りたい”と思うことを自由に追求させることだった。自分の“知りたい”を追求する過程で生徒は自発的に勉強の面白さに目覚めていくのである。ほとんど研究者の世界である。つまり、「研究的姿勢」っていうのが教育の本道かつ王道であることが、よくわかって意を強くできた。また、もっと頑張らないと、我が大学/大学院は高校にも負けていると思った。あと、僕が“知りたい”のは、どうしたら、何かを“知りたい”と思ってくれる生徒を育てられるのか、という点だったが、そこは放送されていなかった。

“第1回学長杯ソフトボール大会(平成19年10月14日)”(記:平成19年10月17日)
基礎研究棟4階フロアー連合軍の4番サードで出場させてもらった。試合は施設・環境部チームに18対7で負け、自分は4打数1安打1打点と納得できない結果に終わった(泣)。特に娘の前でのエラーは悲しかった(大泣)。昨日、プレーオフでインディアンズに負けた松坂の気持ちが痛いほどわかる。レベルは百万倍違うが悔しさは一緒である。なんか野球と研究は一緒だなあ。まあ楽しめればいいんだけど。

“研究者として目指すレベル”(平成19年9月14日)
自分が以下のどのレベルか、よく見極めて、レベルがあがるように頑張ろう!!
レベルマイナス:言ってもやらない(;;)
レベル0:言われたことはやる。(でも失敗したらそのまま)
レベル1:言われなくても、自分のできる範囲だったら、考えて実験できる。(失敗しても、自分で工夫して修正実験ができる。
レベル2:自分のプロジェクトや実験(結果)を、第三者的に評価できる。(まだまだ駄目とか、結構いい線いってるとか、判断できる。)
レベル3:自分で遂行可能なオリジナルなアイデアをだして実験できる。

学部生ならレベル0でもいいけど、大学院生なら、レベル2くらまではいかないと。大学院出てる人はもうレベル3で自立してないと駄目です。(本当を言うと、アメリカだったら、大学院生は皆レベル3です。自分で考えることが身に付いているかどうか、自分を俯瞰して見れるか、独自のアイデアを生み出せるか、は、別に研究に限らずどの分野でも現代社会では必須です。

“哲学とサイエンス”(平成19年9月3日)
何かの本で読んで、今でもすごく記憶に残っているドイツの大学の建築学科の話がある。そこの授業では、”その場所にどうして窓をおくのか?”とか”なんで部屋数は4部屋なのか?”とかものすごく根本的なところから議論するらしい。(知り合いのドイツ人に聞いたら、そんなことしねーよ、って言ってたから嘘かもだが)。僕もスウェーデンに留学していたとき、あちらの学位審査に何度か立ち会ったことがあるが、まるまる半日、研究のバックグラウンドだけを議論していて、とても疲れながらも感動した。日本の大学院でも、それをやると、きっと優秀な学生は反応してくれるんじゃないか(と思う。)また、優秀でない学生ももっと研究の意味や楽しさをわかってくれるんじゃないか(と思う。)これまでは、実利的なことの議論がどうしても優先してしまっていたが、そろそろ哲学的な議論も、折りに触れおこなっていこうと、何故か、ふと思う今日この頃である。

“感動する論文”(平成19年8月22日)
最近、読み終わったら立てないくらい打ちのめされた論文を立て続けに数報読んだので、何に感動してしまうのか、(はっきり指摘できるものでもないだろうが)少し分析したい。

  1. タイトルの付け方がすばらしい。抽象的なメッセージと具体的な結論とのミックスの仕方が絶妙である。
  2. 研究目的が、真にオリジナルであり、にもかかわらず理にかなっていて誰もが(たぶんその分野の素人でも)うなづけて、シンプルで明快である。その目的(疑問)を見つけたこと。
  3. イントロダクションに>著者独自の考えによるその分野の要約がされていて誰かの論文のイントロをコピーペーストしてるわけでない(深く反省)(;;)
  4. データが多い。これでもかこれでもか、と伝えたいメッセージを証明しようとしている。証明する実験方法の種類も多彩である。性格がねちっこくならないとだめである。
  5. 全体が、ミステリーのようなストーリー仕立ての構成になっていて、しかもその構成が少なくとも3幕以上ある。よって自然に論旨を追え次のデータが見たくなる(疲れるが)。また尻切れとんぼにならず読み終えるとある種の満足感が得られる。
  6. ディスカッションでは、著者のその分野に対する深い知識、造詣が読み取れる。もちろん結果の解釈を様々な角度から考察するのは当然である。読んでいて著者が目の前にいる気分になる。
  7. 英語表現が明快、絶妙な単語や文章を使っていてすばらしい。(これはちょっと日本人にはきつい)
    以上、当たり前のことだったかもしれないが、参考にして次の論文はちゃんと書きたい。

“最後は個人の資質です”(平成19年8月21日)”
「選手に共通のアイデアを持たせ、同じようにパスをつなぎ、サッカーをさせることはある程度訓練すればできる。その先は個人で解決しなければいけない。」これは、オシムサッカー日本代表監督が今年のアジアカップでの敗戦後に記者団に語った言葉だけれど、まったく同じことが研究にもあてはまると思う。ぜんぜん研究マインドがない人でも毎日やることを指示しつづければ、インパクトファクターの低い論文(と呼べるかどうかわからないが)は出すことが可能である。でも、世の中に出す価値が本当にある論文をものにするためにはそれでは駄目だろう。よいデータをだすには、入念な準備や工夫、知識と経験、柔軟性、思考の明快さ等々、直接的な言葉だけでは伝えられない個人の資質としかいいようのないファクターが重要だからである。中村俊輔とかが人からの指示だけで、あるレベルに達したわけじゃないように、この部分ははっきり言って教えられない。いろいろヒントを与えようとは思うけれど、最後は、本人が気づくことである。

“国際粘膜免疫学会(品川、東京)7月9-12日”
「粘膜免疫(mucosal immunology)」の学会にはじめて参加して発表してきた。経口免疫寛容の機序や腸内細菌との共生のしくみ、食物の免疫系への影響など粘膜免疫は魅力的な疑問がまだいっぱい残っていて、どの演題を聞いていてもとても興味深く勉強になった。発表も受けたし、今まで縁のなかった分野の外人とも、いっぱい話せて充実した2日間だった。粘膜免疫の分野の人は、アレルギー分野の人よりTGF-βに対する食いつきが鋭敏で、粘膜免疫にもっと研究をシフトしようか、と思ってしまった(そもそもTGF-βの本質は粘膜免疫にあるかもしれないし)。いずれにせよ、2年後のボストンでの学会にもよいデータがでればまた参加したい(ほんとは松坂が見たい)。(平成19年7月12日)

“退屈な古い免疫学”からの脱却”(6月20日)
TGF-βが制御性T細胞やTh17細胞の分化誘導に関係することが示されてから、T細胞分化のパラダイムが変わった。Th1とかTh2という議論はいったいなんだったんだろうか?でも今のモデルのほうがよほど理にかなっている。どういう風に今後免疫学が進歩していくのかとても興味深い。再び混沌とした状況の中、TGF-βシステムの進化における意味付け(免疫系を含む)を考えるのはとても重要と思える。将来、理論だけの論文をNatureとかにだせたらカッコいいのになあ。

“日本アレルギー学会春期臨床大会”(横浜、6月10-12日)
普段は参加しない日本アレルギー学会の春期臨床大会に、今回は用事もあって参加した。発表はすべて臨床関連なので、主に招請講演を聞いて勉強した。Dr. SchleimerとDr. Holgateは、期せずして、二人とも、気道の上皮細胞がアレルギー性鼻炎や喘息の病態形成の鍵である、という同じ趣旨の話をした。
TSLPの話題も二人とも共通であり、この方向にアレルギーの世界は動いていることがよくわかる。2年前にKey stone symposiumに参加して既にこの方向への流れを感じていた私は一人内心ほくそえんだのであった(きもい)。
でも僕の今の考えは、TSLPはアレルギーだけの分子でないし、線維芽細胞もけっこう重要だということなのである。このアイデアが数年後に証明されるか、まったくあさっての方向なのか、楽しみである。

“TGF-βは、世界の中心である。”(平成19年4月25日)
最近NatureにTGF-βが免疫反応の正と負の調節に関与するTh17細胞とTreg細胞の分化誘導に必須であることが報告され、免疫学の分野で、再び?TGF-βが注目を浴びている。これだけで驚いていけない。今年のNature Medicineには、TGF-βを阻害すると筋ジストロフィーが良くなる(マウスだが)話が載ったし、N Eng J Medでは、TGF-βとテロメラーゼの関係が特発性肺線維症の原因としてクローズアップされている。いったいTGF-βは、何者なのか?ほぼすべてのヒト細胞がTGF-β受容体を持っており、TGF-βがまったく関係ない生命現象やヒト疾患を探すほうが大変なことを思うと、TGF-βは、世界(生命現象)の中心に位置する分子なのかもしれない。この考えは、この分野に従事する研究者のバイアスと以前は自戒していたけど、マジに本当のことのような気がしている今日この頃である.

“研究はやらせてもらうものでなく、やるものです。”(平成19年4月25日)
娘と最近、“バッテリー”という青春野球映画を見た。“野球はやらせてもらうものでなく、やるものです。”という、主人公が、子供が野球をするのを止めさせようとしているお母さんを諭す場面はジーンときた。野球という好きなことに出会えた幸福な人が言えるセリフかもしれないが、我が大学院生にも問いかけたいコトバであった。もちろん、もっと心配なのは娘が“野球”のようなものに果たして将来出会えるのかどうかということではあった。

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“論文を出す”ということ(平成18年11月9日)
最近、論文を出すときの意識が変わって来ている。以前は、よい結果が出たら、それをまとめて、投稿するだけという意識(なんて平和!)だったけれども、最近は、エディターやレビィーワーとの“勝負”である。一種のゲームだけれども、地位と名誉(と研究費)がかかっているので、真剣勝負である。それもこれも、ここ数年出す論文がほとんど第一志望の雑誌に通らないという現状とそれに対する危機感がなせるわざである。近年、投稿論文数がオンラインサブミッションの普及で増加していること、技術レベルが高くなり論文の質が全体に向上していることなどによって科学雑誌における競争レベルが激化したのは事実だが、自分の感性の衰えを憂慮してしまうのもまた事実である。新しいアイデアをとにかく早く発表したいという気持ちを抑えつつ、いかにエディターやレビィーワーに文句を言わせる隙を与えないか熟慮する日々は、楽しい反面、ちょっと苦しくせち辛い。

“自分はいったい何をやりたいか?”(平成18年10月30日)

研修医時代に喘息になり、膠原病グループでSLEの患者さんをいっぱい診たことをきっかけに、千葉大内科のアレルギー研究室で喘息の研究をはじめ、留学先のスウェーデンで免疫を調節する分子であるTGF-βの研究をスタートした。

その後、“TGF-βは喘息やアトピー性皮膚炎に抑制的なシグナルを入れる分子だ”ということを提唱する論文をいくつか出した。だから、“TGF-βはアレルギーを抑制する”ということを科学的に証明することが、私がやりたいすべてである。実証的な研究だけでなく疫学的研究などもどんどんやってこのメッセージを世の中の人に広められるよう努力したい。

また、“粘膜免疫におけるTGF-βの役割”をきっちりと明らかにしたいと思っている。このことは留学からもどった7、8年前にも何かに書いた記憶があるが、その後、世の中も僕も全然進展していない。これには粘膜免疫の実験技術が必要なので、もっとラボの力をつける必要がある。粘膜免疫におけるTGF-βの役割はTGF-βの本質を明らかにするかもしれない。

最後は、最近、はじめたTSLP研究である。TSLPと骨細胞との関係や関節リウマチとの関係は、すごく面白い。部外者として、骨やリウマチの研究者があっと言うような発見をぜひしてみたい。

でも、以上の事柄を、あと2?3年で形にしないと、研究をドライブする気持ちと研究費が持たなそうなのが、最近の心配ごとである。(= =)

“じょく創とTGF-β”(平成18年10月28日)
外勤先の病院で、ひどい“じょく創”の患者さんを数年ぶりに診る機会があった。臀部にできたその10センチくらいの円形の“じょく創”は、えぐれた皮膚の部位を、コアグラ(凝集した血の固まり)がすっぽりと埋めており、チョコレートが貼付いているようであった。コアグラは主に血栓であり血小板に含まれたTGF-βがいっぱい存在する。やっぱりTGF-βは創傷治癒に効いてるんだなあ、と、妙に身近に納得できたのだった。

“研究活動に対して、どうしたら大学(院)生のやる気をださせることができるのか?”についての私的考察。
(平成18年7月24日)

  1. 最初の原初的な(素朴な)疑問から説明する。
  2. 臨床とリンクさせて説明する。意義を理解させる。
  3. シンプルでかつ面白い研究テーマを与える。(これを探すのが一番大変!)
  4. 顔を見たら、質問をして、実験結果を見る。
  5. なんでもいいから褒める。
  6. 小さい論文でいいから1報、出させる。
  7. 学会発表する。(できたら外国)
  8. 以上を通して創造性や独創性、研究の快感の本質(の一端)を理解してもらう。

CIC新技術説明会(平成18年7月21日、東京)
はじめて、経口TGF-β摂取によるアレルギー疾患の予防(や治療)の可能性について企業関係者向けにプレゼンした。主に地方の国立大学の参加が多く、それぞれの大学が切磋琢磨して、工夫をこらしたポスターやパンフレット、発表を行っていた。大学は知の拠点として存在するのであって、その新しい成果を、大学の外部にアピールして社会の発展に貢献しなくてはいけない、という、考えてみれば当たり前のことが、ようやく当たり前の活動として行われるようになったのだと実感した。国立大学法人化にともなうゴタゴタは、いろいろあるけれども、全体としては良い方向に向かっているのだろうと思えた。この状況が進めば、自分の研究内容の価値は、ますます科学的かつ社会的にさらに厳しく問われることは自明である。がんばらないと。(平成18年7月24日)

TGF-β meeting in Uppsala, Sweden(May 13-14, 2006)
毎年ウプサラで開かれるclosedなTGF-βに関するシンポジウム。朝から晩まで行われ(夜はパーティー)、インビボの仕事からmolecularな仕事まで多彩に発表される。今年は天気がものすごく良くて、スウェーデンの自然の良さを堪能できた。今回は家族も連れて行ったので、彼らにも、とてもよかったと思う。
私は、経口TGF-βのアレルギー抑制作用について話した。質問も多かったし、そのあとご飯を食べてるときもいろんな人が話題にしてくれて良かった。いろんな質問から、これからまだまだ詰めなくてはならないところを、はっきりさせていかないと、と改めて思う次第であった。(平成18年5月22日)

Keystone Symposia: Allergy, Allergic Inflammation, and Asthma (April 6-11, 2006, at Beaver Run Resort, Breckenridge, Colorado)
今回は初めてスキーをした。スキー場のお兄さんを相手にああだこうだ言いながら(靴のサイズをcmで言っても通じないのである)ようやくスキーを借りて、やれやれと思ってリフトに乗ったとたん、<線路は続くよどこまでも>のメロディーが頭に流れた。前方を見るとリフトは山の頂まで気が遠くなるまで延々に続くのである。当然ながら、帰りのスキーも、地獄であった。距離が日本のスキー場の10倍くらいあるのに、おだやかなダウンヒルかと思ってると突然、急勾配になったり、道がいくつも分かれてたり、といっためくるめくバリエーションに、本当に目がまわった。10回以上は転んだが(もともと下手なのだけど)、その度に出発地点にもどれるのだろうか、と何度も不安に襲われた。さて、シンポジウムである。Genetics, Innate Immunity, Regulatory T cell, Th2 responses, effector cellsといった様々な視点から、アレルギーを解き明かそうという趣旨で構成されたプログラムはすばらしい情報を我々に与えてくれた。とりわけ、今後のアレルギー研究の基本的な方向性として、アレルギーは感染と密接な関係にある、ということを強く感じた。アレルギーの発現には(も?)感染がもっとも重要なイベントであり、上皮細胞によるバリア機構の障害とそれに続いておこる自然免疫応答が鍵であることがいくつかの報告から強く示唆された。今回の報告を聞いていると、楽観的過ぎるかもしれないが、数年のうちに、アレルギーは自然免疫応答のメカニズムの1つして理解され、臨床的にもほぼ克服されるだろうと思われた。ある意味やや特殊な反応として扱われていたアレルギーが免疫の本質にちゃんと組み込まれ理解される時が近いということかもしれない。

個々の講演では、Kim Bottomly, Bart N Lambrechetによる吸入抗原に対する肺の樹状細胞の役割についての話は圧巻で吸入アレルゲンによる樹状細胞応答からTh2応答への流れが非常によく理解できた。残された課題は、アレルゲンが樹状細胞の活性化(あるいは非活性化:トレランス)を起こすまでの仕組み(アレルゲンそのものの性質や上皮細胞の役割など)の解明にあるのだろう。またDale UmetsuによるNKT細胞こそが喘息における主要細胞であるとの主張は、真実であれば喘息の概念を再び変えるかもしれない。さらにTSLPやChitineといった分子はT細胞なしに肺好酸球浸潤を惹起できることなど、新しい形のアレルギー性炎症の形成なども報告されエキサイティングだった。あと、TGF-βとアレルギーの関係に興味がある人が少なかったのは(いつものことではあるけれでも)少し寂しい気持ちであった。早くみんなその重要性に気付いてください(笑)。

さて、日米のスキー場の違いは、当然、日米におけるスキーの概念の違いに結びつくだろう。箱庭的な日本のスキー場では、スキーの仕方もたいして違いがなくなるしあっというまに滑り終えてしまう。ダイナミズムとは無縁である。一方、アメリカのスキー場の広さは、スキーのディテイルや他の人の滑り方なんてまったくどうでもよくしてくれる。まず、ふもとまでおりるのが大変なのである。自分に向きあうしかないではないか。こちらのほうが本当のオリジナリティーや、強い覚悟が生まれるに決まっている。なんか少し日米のサイエンスを取り巻く環境の違いに似ている。

最後に、たわいのない会話のなかでいろいろな示唆を与えていただいた参加者の善本先生(兵庫医大)、玉利先生(理研)、出原先生(佐賀大)には感謝感謝でした。今回の学会に参加している人がreviewerとなるような雑誌に論文をのせるのはやはり並大抵のことではないと思えた。(平18.4.13)

新しい年が始まった。今年は、石の上にも(?)山梨で3年めであって、オリックスの清原か、免疫の私かというくらい勝負の年である。
平成18年の目標:
1 質の高い論文を数編(10数編と言いたいが)出す。
2 TGF-βの経口投与をアレルギー疾患に臨床応用できるよう、より詳細なデータの採取とコマーシャル活動を国内外でして、この企画に賛同してくれる企業を探す(なかったら自分で作る)。
来年この文章みて恥ずかしくならないように願います。(平18.1.10)

11月17日サッカー日本代表対アンゴラ代表戦を見て
少しでも研究というものがわかってきた人なら、誰でも感じていると思うけど、決定的なよいデータというのは、ほんとにたまにしかでない。サッカーのゴールと一緒で、入りそうで入らない(よいデータがでない)ことがほとんどの世界である。それだから、希少な、面白いデータが出たときこそ、勝負をかけて、もっと実験しなくては、いけないのである。人生にチャンスはほとんどない。でも、なんであれだけゴールを外しまくるフォワードが、いつも代表に選抜されるのかなあ?不合理を感じる研究者は、僕だけだろうか。(平17.11.18)

臨床アレルギー研究会(大阪)(10月8日)
主としてアレルギーに携わる臨床医(内科、小児科、皮膚科等)、研究医の集まり。討議のレベルは予想外に高かった(すいません)。講演は、すごく好評だったし(と、皆に言われた)、今後の研究へのいろんなサジェスチョンももらえてすごくよかった。3連休中に家族にブーブー言われながらも、大阪まで、出かけた甲斐はあった。会の終了後、阪大の先生とそこの大学院生と男3人でクラブでなぜかカラオケ大会となった。気がついたら4時間歌っていて、かつスピードのホワイトラブも振り付きで歌っていた。自分の振り付けに納得できなかったので、東京に帰ったあと、スピードのDVDを買ってしまった。(平17.10.12)

山梨大学国際交流事業 ”先端医学講座”:中国医科大学、内蒙古医学院、北京大学(中国)(9月5日-14日、2005)
中国の各都市で学生や研究者、お医者さんを相手にセミナーや講義をするという珍しい機会を得た。どの場所でも、約50分間の講義で、そのあとの質疑応答が1時間以上という非常に熱心な集まりだった。講義やセミナー中にまったく寝ている学生はいなかったので、授業中に寝るというのは日本人独特のものなのだろうか、と思った。集中するしないのメリハリのつけ方が上手じゃないのか、勉強しなければ将来食べていけないという切迫感がないのか、等々、考えてしまった。そこの君、寝るくらいなら授業でなくていいです(免疫学は)。(平17.9.28)

最近、ユニクロの若手社長が更迭された。ほんとの実情はわからないけど、まあ 3年間で明らかな業績向上がなかったという点は大きいのだろう。わが身に置き換えるとあと1年である(冷汗)。あと、病院の外勤に行って、生きるか死ぬかのシリアスな臨床の現場を見てると、基礎医学の意義をやっぱり考えてしまう。つまらない論文を書くのは止めて、ほんとの意味でイノベーティブな仕事をしないと、税金を使って研究して、かつ給料もらってる意味はない。スピードと新しいアイディアが大事です。みなさん とにかくがんばりましょう(誰に言ってるんや)。(平17.7.21)

TGF-β meeting in Uppsala, Sweden(June 3-4, 2005)
留学以来久しぶり(1997年以来)のスウェーデン訪問。飛行機がアーランダ空港に降り立つときに、レンガ色を基調にしたスウェーデンハウスや鮮やかな緑色の針葉樹林を見たときに、こみあげるものがあった。ウプサラの街並みを歩いたときも当時の不安定な感情がプレイバックしていた。ミーティングはヨーロッパ人ばかりだったので、はやりの研究(epithelial mesenchaymal transition (EMT)など)は少なくて、派手ではないが地道なものが多かった。自分の発表は結構、好評を得ていたが、アイディアをしゃべっちゃったので、とにかく早く論文にして発表しなくては(汗)。お土産にスウェーデンのICAというスーパーマーケットで、留学当時よく食べていた?食べ物を買って帰ったら、家内に、全然違うと言われ、いったい何を覚えてるの?とか、散々だった。(平17.6.13)

Keystone Symposium "Roles of TGF-β in the pathogenesis of diseases"(March28- April 2, 2005, Keystone, Denver, Colorado, USA)の感想:
高名なTGF-β研究者が勢ぞろいしたオールスターゲームだった。みんな個々にオリジナルな説得力ある発表をしていて、聞いていると世界(生命現象)の中心にはTGF-βがいる(叫ぶ?)と思えるほどだった。ただ、昼食時に東大の宮園浩平先生と歓談している時に
”ああ言っているのは彼だけなんですよねー。ははは。”とかいう話を聞くと、いったい何を信じたらいいの?って思ったのも事実である。いずれにせよ、都会の喧騒も何もない田舎でひたすら勉強していた1週間はとても貴重だった。(平17.4.5)

山梨に来て早くも2年になろうとしている。この間に進歩したことは
1山梨産のワインの銘柄を把握したこと
2料理(自炊)が生まれて初めて少しできるようになったこと(単身赴任なので。やれやれ)
3野球が少し上手になって(?)少し筋肉がついたこと(脳外科のチームに入れてもらい週2回朝練してるし、医局でもいつもバットを振っているので。注)誰かを殴っているのではなくて、ストイックな素振りです。
くらいである。
今年はちゃんとした論文を出して高価なワインで乾杯したい(笑)(平17.4.5)

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