研究内容

当教室では、ヒトと動物を対象としたシステム神経科学研究を推進しています。視覚、聴覚、高次機能をテーマに、心理物理学、電気生理学、計算論的神経科学、脳画像、疾患モデルなど多様な研究に携わっています。

具体的な研究テーマは以下の通りです。

柔軟な判断の研究

ヒトはどのようにして柔軟に判断をし、多様な選択を行うことができるのでしょうか。ヒトは、同じ感覚入力に対して、取り得る行動の選択肢が多数存在する場合、状況に適した選択肢をひとつだけ選びます。このように、複数の選択肢を一つに絞る推論のプロセスを私たちは判断と呼んでいます。判断は画一的なものではなく、環境によって変化します。こうした柔軟な判断を、ヒトは当たり前のようにしますが、その神経機構を理解することは簡単ではありません。

本プロジェクトでは、2つのルールに基づき、判断の内容を柔軟に切り替えるタスクスイッチ課題を用い、柔軟な判断の神経基盤に迫ります。ヒトの心理物理学では、柔軟な判断の多様なプロセスを明らかにします。霊長類を用いた研究では、電気生理学的手法に最新の光遺伝学や化学遺伝学的手法を組み合わせ、柔軟な判断に関連する神経活動とマクロ神経ネットワークを明らかにします。げっ歯類を用いた研究では、判断に関わる神経細胞を同定し、判断の計算に関わる局所神経回路や分子の情報を取得します。さらに、これらのデータを統一的に説明できる、柔軟な判断の神経回路モデルを構築します。

精神神経疾患の認知機能障害の研究

精神神経疾患の病態をシステム神経科学レベルで理解することを目指します。精神神経疾患研究の多くは、げっ歯類で、遺伝子・分子病態の理解を目指して進められています。本プロジェクトでは、脳の構造と機能がヒトに近い霊長類を用いた研究を推進します。

精神神経疾患と関連することが知られている聴覚関連電位を、皮質脳波法(ECoG)を用いて計測します。聴覚関連情報がどのように変化し、神経ネットワークがどのように障害されるのかなどを、薬理学的疾患モデルを中心に調べていきます。