山梨大学大学院医学工学総合研究部
教授 安達登|山梨大学大学院医学工学総合研究部

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教授 安達 登

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教授

安達登(医学博士、医師)

基礎研究棟2階2218室

メール: nadachi◎yamanashi.ac.jp
※メールアドレスは@を◎に置換えて記載しています。

安達登

・学歴および職歴(一部略)

1992年3月 東北大学医学部卒業
1996年3月 東北大学大学院医学系研究科博士課程(整形外科学専攻)学位取得修了[博士(医学)]
1996年4月 東北大学医学部法医学講座助手
1999年9月 東北大学大学院医学系研究科人体構造学分野(旧・第 1 解剖学講座)助手
2003年4月 東北大学大学院医学系研究科人体構造学分野講師
2006年5月 山梨大学医学部法医学講座教授

・資格等

医師免許
死体解剖資格
日本法医学会法医認定医

・所属学会

日本法医学会
日本DNA多型学会
日本犯罪学会
日本解剖学会
日本人類学会
American Association of Physical Anthropologists ( 米国自然人類学会 )

・学外委員

北海道大学・アイヌ文化研究センター・メンバー
日本DNA多型学会評議員
日本人類学会評議員
日本法医学会評議員

研究概要

以下のテーマについて、国内外の研究機関(国立科学博物館人類研究部、北海道大学、Bikal-Hokkaido Archaeology Project)と協力しながら研究をおこなっています。

1)ミトコンドリアDNA解析を用いた古人骨の系統・血縁推定に関する研究

法医学とは一見何の接点もないように思えるテーマです。しかし、古人骨を「死後数百年〜数千年以上経過した白骨死体」と考えると、そのDNA解析が陳旧・微量な法医試料の解析の延長線上にあることがご理解頂けると思います。
法医学領域では、系統・血縁鑑定は通常、父系と母系の双方の遺伝情報を反映し、情報量の多い核DNA解析によっておこないます。しかし、古人骨においては経年変化によるDNAの変性のため、1つの細胞に2コピーしか存在しない核DNAの分析は困難です。これに対し、ミトコンドリアDNAは細胞内に数百〜数千コピーも存在するため、古人骨においても解析できる確率が高くなります。そこで我々は、解析の中心にミトコンドリアDNAを据え、以下のような研究を進めています。

@ 日本列島の基層人類集団の成立課程に関する研究
日本列島の人類集団は、アフリカからユーラシア大陸北東部、ひいては新大陸への人類の移動の上に成立しています。 日本列島人の成立課程を明らかにすることは、東アジアや新大陸への人類の移動の歴史を明らかにすることにつながり、人類史の解明に不可欠な情報を我々に与えてくれます。古人骨DNA解析は、従来、現代人のデータから類推するしかなかった古代人の遺伝的特質を直接明らかにすることができるので、ある地域で観察される遺伝子型の時代的変遷を追うことで、その地域の人類集団の形成過程を明らかにすることができます。

従来、日本列島の基層人類集団の直系の子孫と考えられている縄文時代人は、東南アジアなどの南方に起源をもち、かつ、遺伝的に均質性の高い集団であると考えられてきました。
我々は、北海道礼文島船泊遺跡縄文時代人骨についてミトコンドリアDNA解析を行い、船泊縄文時代人は、現代本土日本人では2 %程度しか観察されないハプログループ(ミトコンドリアDNAの遺伝子型)N9bの頻度が60 %を越える、独特の遺伝子型の種類と頻度をもつことを明らかにしました[Am J Phys Anthropol. (2009) 138, 255-265.]。他の人類集団と比較すると、船泊縄文時代人はアムール川下流域の先住民に近い一方、関東地方縄文時代人集団とは大きく異なり、さらに、琉球列島を含む現代の東アジア人集団のいずれとも大きく異なっていました。このことから、少なくとも北海道の縄文時代人はユーラシア大陸北東部に起源を持つ可能性が高いこと、また、縄文時代人が遺伝的に均質でないことから、日本列島の基層集団は複数の起源を持つ可能性を指摘しました。その後、12遺跡・40個体の北海道縄文時代人を追加して詳細な解析を行いましたが[Am J Phys Anthropol (2011) 146: 346-360.]、観察された遺伝子型の種類と頻度に大きな変化はなく、上記の仮説を裏付ける結果となりました。

A アイヌの成立についての研究
従来、北海道の先住民であるアイヌは、北海道縄文時代人の直系の子孫であると考えられてきました。しかし、現代アイヌのミトコンドリアDNAデータと、先に述べた北海道縄文時代人のそれを比較すると、現代アイヌは北海道縄文時代人に特徴的なハプログループN9bなどの遺伝子型を保持しつつも、縄文時代人にみられないハプログループYを高い頻度で持っていました。つまり、アイヌは北海道縄文時代人の子孫であることは間違いないものの、「直系の」子孫ではなく、その歴史のどこかで北海道縄文時代人に他の人類集団が流入して成立したと考えられます。

北海道の歴史を振り返ると、およそ 5 世紀から 10 世紀にかけて、オホーツク海沿岸を中心にオホーツク文化と呼ばれる、シベリアに起源をもち、縄文文化とは異なる文化を持った人々が居住していたことが分かっています。北海道大学のグループによるオホーツク文化人についてのミトコンドリア DNA 解析の結果、この集団がハプログループ Y を高頻度で持つことがわかりました。この結果から、北海道縄文時代人にオホーツク文化人が合流してアイヌが成立したと考えるのが最も自然と考えられます。

この仮説が正しければ、北海道の人類集団の時代的変遷は、ユーラシア大陸北東部の人類集団の移動に新たな知見を加えることになります。つまり、縄文時代からオホーツク文化期にかけてのいずれかの時代に、ユーラシア大陸でハプログループ Y を主体とした人類集団の拡散があった可能性が指摘されるのです [科学 (2010) 80 (4), 368-372.] 。北海道へのオホーツク文化人の流入も、この拡散の一環であったのかもしれません。

従来、日本列島の人類集団の成立史は、均質な縄文人が弥生時代以降の渡来民により中央と周辺に分離してゆく過程と捉えられてきました。しかし、北海道の地域史は、弥生時代に渡来民が渡ってきたとされる日本列島中央部より、ユーラシア大陸北東部と密接に関連した独自のものであり、従来の日本人集団の形成シナリオに再考を迫るものと考えられます。

B 「エミシ」とはどのような人々なのか?

古代の東北地方には、大和朝廷よって「エミシ」と呼ばれ、他民族視された人々が暮らしていたとされています。本当にこのような人々がいたのでしょうか。
我々は、東北地方の基層人類集団の直接の子孫と考えられる、東北地方縄文時代人 19 個体についてミトコンドリア DNA 解析をおこない、この集団は N9b の際だった高頻度( 60 % 以上)という特徴を北海道縄文時代人と共有することを明らかにしました [DNA 多型 . (2008) 16, 287-290.; DNA 多型 . (2009) 17, 265-269.] 。ただし、東北縄文時代人には現時点では北海道縄文時代人に存在せず、現代本土日本人で 30 〜 40 % と最も多く観察されるハプログループ D4 が1個体のみではあるが確認され、また、ハプログループ M7a の頻度が北海道に較べてかなり高頻度でした。ハプログループの頻度に基づいた population differentiation test の結果でも北海道および東北縄文時代人には5%レベルで統計的な有意差があり、これら2集団は母系的に近縁ではあるものの、均質の人類集団とまではいえないと考えられました。

東北地方縄文時代人の解析結果を、山形県酒田市飛島・狄穴洞窟遺跡出土の平安時代人骨 [庄内考古学 (2006) 22, 96-102.] および青森県南郷村・畑内遺跡出土の江戸時代人骨 [J Archaeol Sci. (2004) 31, 1339-1348.] と比較してみると、これら平安および江戸時代人は、ハプログループ D4 を主体とする現代日本人型の遺伝的構成を既に持っており、東北地方の縄文時代人とは大きく異なる人類集団であることが分かりました。今後、この遺伝的構成の大きな変化がいつ起きたのか、各時代における解析個体数を増加させて検討していく必要があります。

C 合葬された古人骨の血縁鑑定

埋葬された人骨およびその副葬品は、先史時代の文化を知る上で多くの情報を我々に与えてくれます。特に、 合葬人骨には血縁あるいは強い社会的関係がある可能性が高く、こうした人骨同士の関係を明らかにすることは過去の生活史を復元する上で極めて重要です。我々は、ミトコンドリア DNA 解析による母系の血縁推定に、母系と父系の双方の系統を反映する形態学的類似性を組み合わせることで、古人骨においても妥当性の高い血縁鑑定が可能な方法を開発しました。

法医学領域では、血縁鑑定は通常、父系と母系の双方の遺伝情報を反映し、情報量の多い核 DNA 解析によっておこないます。しかし、古人骨においては経年変化による DNA の変性のため、 1 つの細胞に2コピーしか存在しない核 DNA の分析は困難です。これに対し、ミトコンドリア DNA は細胞内に数百〜数千コピーも存在するため、古人骨においても解析できる確率が高くなります。しかし、ミトコンドリア DNA は母親からのみ子供に伝わっていく ( 母系遺伝 ) ので、父系の血縁を知ることができません。自然人類学領域では、従来から歯を中心とした骨格の形態的類似性を用いて血縁の推定をおこなってきました。この方法は正答率こそ低いものの、母系と父系の双方の系統を反映する利点があります。そこで、遺伝的要因が大きいと考えられている歯の形態的類似性と、ミトコンドリア DNA 解析を組み合わせることで、古人骨においても妥当性の高い血縁推定ができる方法の開発を目指しました。

まず行ったのは、北海道有珠モシリ遺跡出土の約 2,000 年前の小児 2 体合葬人骨の分析です [Anthropol Sci. (2003) 111 (3), 347-363.] 。ミトコンドリア DNA の塩基配列は検査した範囲で完全に一致し、両者の間に母系の血縁関係が示唆されました。また、両者の歯冠形態は類似性が非常に高く、一親等の血縁関係と考えても矛盾しませんでした。これらの所見に、両者の推定年齢と埋葬状況を併せ考えた結果、この両者は“キョウダイ”である可能性が高いものと考えられました。この研究は、 2 体合葬古人骨の血縁推定に DNA 鑑定を適用した 2 例目の論文です。

次に、合葬されていながら頭位(頭の向き)が正反対という特異な埋葬状況から、その相互関係について考古学的・人類学的に注目されていた、北海道有珠モシリ遺跡出土の約 2,500 年前の成人女性 2 体合葬人骨について血縁推定をおこないました [Anthropol Sci. (2006) 114, 29-34.] 。先に述べた小児合葬事例とは異なり、両者のミトコンドリア DNA の塩基配列は全く異なっており、母系の血縁関係は否定されました。加えて、両者の歯の形態的類似性は低く、血縁関係は示唆されませんでした。これらの結果を併せ考えて、両者の間に血縁関係が存在する確率は低いものと考えられました。この研究は、縄文時代に血縁関係が存在しない合葬事例があることを人類学的に証明した最初の論文になりました。

2)日本版ボディーファーム:大型動物死体を用いた死体現象再現実験

死体現象は、その死体が置かれた状況に強く影響を受けます。我が国においては、特に晩期死体現象に影響を与える要因について総合的に検討した研究がないため、晩期死体現象が進行した死体については、死後経過時間を推定する際の客観的な判断基準が存在しないのが現状です。

そこで、大型動物死体を用いた死体現象の再現実験を行い、死体現象の進行に天候・気温・湿度・動植物の関与といった環境条件がどのように影響するのかを明らかにし、死体現象から死後経過時間を推定する際の客観的な根拠を確立することを目的に研究を進めています。

研究業績

  • 2021年〜
  • 2018年〜2020年
  • 2015年〜2017年
  • 2012年〜2014年
  • 2009年〜2011年
  • 2006年〜2008年
  • 2003年〜2005年
  • 2000年〜2002年
  • 1996年〜1999年

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Graduate School of Medicine and Engineering Department of Legal Medicine