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法医学では交通事故などによる頭部外傷事例を取り扱っています[Forensic Sci Int. (2005) 154, 206-209, Leg Med. (2002) 4, 127-130]。これら事例において受傷機転や受傷後経過時間の推定は、事件・事故解明に不可欠です。また、外傷性脳損傷と内因性血管障害を鑑別する事も重要な仕事の一つです[Am J Foren Med Path. (2007) 28, 73-79, Med Sci Law. (2003) 43, 127-131, Med Sci Law. (2002) 42, 233-236]。さらに、頭部外傷は高次機能障害などの後遺障害や神経変性疾患(孤発型アルツハイマー病など)の危険因子であることが報告されており、受傷後の脳病態を理解することは重要です。
頭部外傷時の脳損傷は、物理的な一次損傷(脳実質の欠損・出血など)と、その後に連続して起こる二次損傷(脳浮腫・細胞死など)に大別されています。しかしながら、一次損傷後に引き起こされる二次損傷の分子応答機構の詳細については未だ不明な点が多く残されています。そこで、私たちは受傷後の脳病態を分子レベルで解明するために、脳挫傷モデルラットを用いて解析を行っています。
これまでの研究で、シナプス小胞膜タンパク質の一つであるシナプトフィジン(SYP)が軸索損傷部位やシナプス変性部位に蓄積している事を明らかにし、SYPは神経変性マーカーとして有用であることを報告しました[Brain Res. (2006) 1078, 198-211]。また、受傷後に惹起する神経細胞のアポトーシスは早期に生じる炎症により誘導されることを明らかにしました[Neuroscience (2010) 171, 1273-1282]。さらに現在、 頭部外傷による二次損傷生成機構の解明に向け、研究を推進しています。法医学では死体の生活反応を可視化し、死因や事件・事故との因果関係を明にすることは重要です。これまでの法医診断の多くのは、組織や器官レベルでの形態変化や生活反応に言及しているものです。そこで本研究では、これまで法医診断では余り利用されていなかった細胞内小器官の形態変化に着目して解析を行っています。
ミトコンドリアはエネルギー生産を通じて生命に必須であると共に、ネクローシスやアポトーシスなど細胞の死をも司る細胞内小器官です。その形態は、ミトコンドリアの機能や細胞の機能を反映していると考えられています。また、ミトコンドリアを構成するタンパク質の多くは核の支配下にあるため、細胞に急激な死がもたらされた場合、直前の構造が維持されたままミトコンドリア内に保持されている可能性があると考えられます。そこで、私たちはミトコンドリアに着目し、生活反応や死因との相関について検討しています。
実際の法医解剖例を中心とした実践・実証研究を行っています[Res Pract Forens Med. (2011) 54, 251-255]。 また、順天堂大学(中西宏明, 斉藤一之)の先生方と分子生物学的手法を用いた法科学鑑定法に関する共同研究を実施しています[Forensic Sci Int Genet. (2013) 7, 176-179, J Forensic Sci. (2011) 56, 156-161] 。その共同研究成果一部が、第11回INPALMS国際学会でベストポスター賞を受賞しました。
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