私を変えた言葉5

愚直でも一つの物事を

これは、私が実験手技を習いに一時期出入りしていた研究室のD教授(女性)の言葉である。

D教授は、帰国子女であったためか、歯に衣を着せない口調が特徴であった。

特に、学生の指導には全身全霊を傾けておられ、一切の妥協を許さないというスタイルだった。

しかし、素晴らしいデータを目にした時は、学生よりも素直に喜びを表現されるという「竹を割ったような」性格の方だった。

隔週で行われる勉強会は非常に刺激的で、D教授が学生に浴びせる鋭い指摘には舌を巻いた。

ある日のミーティング中、一人の大学院生が、自身の研究テーマから派生した新たなテーマの可能性について次々と話し始めた時、

「愚直でも一つの物事を突き詰めること! あれこれ手を出す人は結局は大成しないよ!」

とD教授の檄が飛んだ。

自然科学全般に広範な知識を持ち、かつ、Muse細胞という一生涯をかけて取り組む価値のあるテーマを見つけたD教授だからこそ、言える言葉だったと思う。

その言葉に触発され、私も今の研究テーマを愚直に突き詰めようと思った。ただ、私はD教授と違い「〇〇の一つ覚え」とも云われかねないが・・・。