私を変えた言葉8

早めに連絡して

これは、某大学の某教授の言葉である(詳細は伏せさせていただく)。

私は以前、某大学某学部の助教の公募に応募したことがある。

私がこれまでに在籍した学部とは多少違ったが、その研究室の研究内容と私の専門分野は割と近かった。

当時の私は、論文数や外部資金の獲得数という点において、助教というポジションに相応しいと(勝手に)思っていた。

履歴書や業績目録などの書類を郵送した数週間後、面接の案内が届いた(交通費等は自己負担)。

私は、呼んで下さった先方に感謝し、自分なりに周到にプレゼンの準備をし、面接へと臨んだ。

ところが・・・。

係りの人に案内され、面接室に入室した時から只ならぬ違和感を感じた。

私は、「よろしくお願いいたします。」と一礼したが、某教授と2人の他の面接官は、私と目を合わせようともしなかった。

プレゼンを開始して間もなく、某教授と面接官は顔を見合わせ、私をせせら笑っていた。

某教授は、「これは○○なのかね!?」「何を云っておるのかね!?」等々、矢継ぎ早に文句をつけ、それはプレゼンの終りまで続いた。

私は、「これは所謂『圧迫面接』の一種で、こういった状況で冷静な対応ができるかを試しているのかもしれない・・・。」と思い、丁寧かつ冷静に受け答えした。

一通りプレゼンが終わった後、件の某教授は、

「うちの学部の教育は、兼平さんが思っているようなもんじゃないんですわ。」

「兼平さんは岩手大のOBですから、岩手大の公募に出られたらどうですか?」 等々、木で鼻を括ったような態度で私に言った。

退室する際、面接の機会を与えて下さったことに感謝し、「ありがとうございました。よろしくお願いいたします。」とお礼を述べた。

しかし、件の某教授は追い打ちをかけるように、

「あぁ、辞退するなら早めに連絡して。」

と私に言い放った。

人を疑うことに疎い私は、そこでようやく、自分は公募という体裁を整えるために呼ばれた、所謂「当て馬」だったことを知った。

数か月後、(予想通り)「厳正かつ公正な審査の結果、不採用といたします。」という通知が届いた。

人づてに聞いたところによると、採用されたのは、大学院を修了して間もない、異なる研究分野の人だったそうだ。また、その人の面接は終始和やかに行われたらしい。

勿論、採用する側にはそれなりの事情があることは重々承知している。件の某教授を批判するつもりは毛頭ない。

ただ、私はそれ以来、人と接する時はもちろん、電話やメール等で顔が見えない相手に対しても、(いかに自分の立場が優位であっても)常に相手を一人の人間として慮り、人格を尊重するように心掛けている。