私を変えた言葉18

淘汰されないんだよね

これは、某大学某教授の言葉である(詳細は伏せさせていただく)。

以前の「早めに連絡して」や「これだけでいいんじゃないか?」でも述べた通り、私は研究者としてのポジション獲得にはかなり苦労(回り道?)した。

某インターネットサイトでの検索や、学会会場での名刺交換はもちろん、自分の研究内容に近い研究をされている先生へCV(履歴書)を添付してメールを送ったりもした。

残念なことに、大抵は返事すら来ない。

返事が来たとしても、

「貴方のCVを見る限り、うちの研究室のプロジェクトには合致しないと思われます。」

というお返事をいただくのが大半であった。

「とりあえず話だけでも」というお返事をいただき、喜び勇んで面談へ伺っても、

「一応雇って『今後に期待』でもいいけど、困るのは君だよ。結果が出ないと研究費も獲れない、昇進もできない、任期も更新できない。数年後、今と同じ状況で職探しすることになる。否、年齢重ねてる分、今よりひどいと思うよ。」

「母校の知ってる先生に連絡とってみたら?」

「せっかく獣医師免許あるんだから、獣医関係で探してみたら?」等々

いずれも返答もご尤もである。

注)いずれの先生にも、貴重な時間を割いて下さったことへの感謝のメールは後日お送りした。

そんな中、某大学某教授と面談の機会を得ることがあった。その際、某教授は下記のような言葉に終始した。

「研究者のポジションって、どんどん減らす方向に動いてるんだよね。」

「大学から研究室に支給される予算も右肩下がりでさ、秘書さんも雇えないんだよね。」等々

特に私が今も心に引っかかっているのは以下の言葉である。

「昔はね、『オーバードクター』って云って、学位取っても無給の人たちがゴロゴロいたんだよ。今のポスドクって、とりあえず生活できるだけの給料はもらうんでしょ?能力のない人間も淘汰されないんだよね。」

これまでに、私よりもはるかに能力も熱意もある人たちが、様々な事情で研究者の道を断念したのを見てきた。

そんな苦渋の決断を下した人たちが、「淘汰」という一言で片付けられてしまうことが悲しかった。

私もそろそろ当時の某教授と同じくらいの年齢になろうとしている。

今後、もし私にそのような機会があったら、どんなに「他人事」「無責任」と云われようとも、「あなたならできます。頑張って希望を叶えて下さい。応援しています。」とエールを送りたい。

次世代を担う若者に夢と希望を与える、そんな「能天気なおじさん」が一人位いても、世の中の害悪にはならないだろう。