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国立大学法人

山梨大学 医学工学総合研究部 社会医学講座

社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
Division of Medicine, Graduate School Department of Interdisciplinary Research,
University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2005.06.30

2005年6月29日 担当:N. K

Hyponatremia among Runners in the Boston Marathon
      ~ボストンマラソンのランナーにおける低ナトリウム血症~
出典: New England Journal of Medicine (2005) 352. 1550-6

著者:Almond C. S. D, Shin A. Y, et al.
<論文の要約>
低ナトリウム血症はマラソンランナーにとって、時に生命の危険を引き起こす重要な原因であるが、そのリスク要因についての前向き研究は無く、この研究ではボストンマラソンにおいてコホート研究を行なった。

2002 年のボストンマラソンの参加者をレースの 1~2 日前に募集し、レース前にdemographic informationやトレーニング歴に関するアンケートを行い、レース後、その場で採血とアンケート(レース中の水分摂取量や尿量)、体重測定などを行ない、多変量解析により低ナトリウム血症の危険因子を同定した。

その結果、64%(466人/766 人)の血液サンプルをとることができ、うち13%で低ナトリウム血症(血清ナトリウム値 135 mmol/L 以下)、0.6%は重度(120 mmol/L 以下)であった。多変量解析により、レース中の体重が増加した人、(オッズ比(OR) 4.2、95%信頼区間(CI):2.2-8.2)、レース時間が4 時間を越えた人(3 時間 30 分未満の人に比べOR :7.4、95%CI: 2.9-23.1)、そして BMIが極端に多いか少ない人はハイリスクだった。

以上のように低ナトリウム血症13%と一定の割合で起こっており、水分摂取しすぎ(体重増加)の人や、ゴールまでに時間のかかる人、BMIが極端な人は要注意である。一方で女性であることや、スポーツドリンクの使用の有無、NSAIDsの使用というこれまで指摘されていたリスク要因については関連は見られなかった
<ジャーナルクラブでのディスカッション>
追加:
考察では、結果を受けて、画一的に水分摂取制限などの啓発、指導を行なうことは危険である、最も推奨するのは各ランナーがレース前後の体重変化を測定して、個人にあったレース中の水分摂取プランを立てることだと書かれていた。

・ ランナーの低ナトリウム血症についての初めての前向きデータであり、貴重かつ興味深い知見である。
・ 追跡率は比較的高く、内的妥当性は担保されている。しかし、参加者のリクルートに関しては、”Subjects were approached at random in an area adjacent to rave registration and invited to participate”とかかれており、無作為化されたサンプルでなく、外的妥当性に問題がある。
・ 一般回帰モデルとロジスティックモデルを比較して関連の線形性を検定している点は評価できる。勉強になった。今後、その方法について学びたい。



 ジャー吉:「歴史あるボストンマラソンではたくさんの研究もされているみたいだ。
          今度出てみたいな。」
 ナル美:「ジャー吉のBMI、ハイリスクじゃない?」


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