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国立大学法人

山梨大学 医学工学総合研究部 社会医学講座

社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
Division of Medicine, Graduate School Department of Interdisciplinary Research,
University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2005.10.19

2005年10月19日 担当:K. S

Paternal depression in the postnatal period and child development: a prospective population study
~父親の産後うつが子どもの発達に与える影響
                      :前向きコホート研究から~
Lancet (2005) 365, 2201-5

著者:Ramchandani P, Stein A, Evans J, O'Connor TG; ALSPAC study team.
<論文の要約>
背景:
乳幼児の発達に対する母親の影響が大きいために、産後うつがあると子どもの発達が阻害される。しかしながら父親の抑うつの影響はあまり注目されていない。
しかしその一方で、父親の抑うつが子どもに影響するという報告がある。抑うつは主要な健康問題であり、また母親だけではなく両親の関係が発達に重要であること、父親についても研究・行政の面で注目されてきていることなどから、本テーマは重要である。
この研究では、父親の抑うつが子どもの発達に影響している、という仮説を検証することを目的としている。

方法:
イギリスの一地域における母子の縦断コホート研究をもとに行っている。対象者は1991年4月1日から1992年12月31日までにその地域で出産した母親で、約85-90%が参加していた。出産後8週の父親(12884人)と母親(13351人)に対して、エジンバラ産後うつスケール(EPDS)を用いて、出産後8週に父親と母親に調査を行った。父親については21ヶ月に再度調査している。
産後うつの評価は産後6-12週に行われることが多い。EPDSは妥当性が担保された、広く用いられている、10の項目からなる自記式の質問紙である。
また、産後の女性を対象に開発されたが、それ以外の時期でも、また男性に対しても妥当性が担保されている。
このスケールは診断に用いるのではないが、12点以上では大うつ障害の診断と高い特異度(95.7%)、感度(81.1%)があり、われわれは12点よりも高い得点を抑うつグループとして分類した。
子どもの発達障害については、3.5歳(42ヶ月)にRutter就学前スケールに基づく母親の報告をもとに評価を行った。
このスケールの各項目は性格や行動について、3つの選択肢を用いて回答するようにできている。それぞれの項目は3つの問題スケール(情緒・振る舞い・多動)と向社会性(社会に対して前向きであるか?)に分類されている。カットオフポイントを上位10%として設定した。

結果:
情報は8431人の父親、11833人の母親、10024人の子どもについて得られた。産後における父親の抑うつは、3.5歳児における情緒や行動の発達の遅れと関連しており、男子の行動障害のリスクを上昇させていた。
これらの影響は母親の産後うつや、2回目に測定した父親の抑うつで調整しても有意であった。

解釈:
われわれの研究結果は、父親の抑うつが彼らの子どもの行動的・情緒的発達に対して、特異的で阻害的な影響を与えることを示唆している。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>

子どもの発達障害をスクリーニングする方法としては、既存のものより簡便でいい方法かもしれない。日本語版は?

母親のうつによる層別化(うつ有り、うつ無し)を行う、うつの母親を除いて解析するなどの方法もあるかもしれない。

父親と子どもの時間的・空間的距離は、母親とのそれに比べて大きい。そのために間に介在する因子が多くなることが考えられるので、母親と子どもとの関連を見ることよりも複雑なモデルになるかもしれない



 ジャー吉:そういえばクラ坊のお父さん、坊が2ヶ月のころ、えらく暗かったよね。

 ナル美:あっ!クラ坊のコメントが常軌を逸しているのは、もしかして…!?

 クラ坊:ぶー、ばぶう!
       (あれはあの頃お父さんは万馬券どぶに落として、落ち込んでた んだよ!)


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