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国立大学法人

山梨大学 医学工学総合研究部 社会医学講座

社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
Division of Medicine, Graduate School Department of Interdisciplinary Research,
University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2005.11.02

2005年11月2日 担当:N. K

Cognitive Impairment as a Strong Predictor of Incident Disability in Specific ADL-IADL Tasks Among Community-Dwelling Elders: The Azuchi Study
~地域高齢者における特異的なADL-IADLタスクの障害の、
       強い予測因子としての認知機能障害:The Azuchi Study~
出典: The Gerontologist (2005) 45, 222-230

著者:Hiroko H. Dodge HH, Kadowaki T, Hayakawa T et al
<論文の要約>
目的:
ADLとI-ADL(手段的ADL)のそれぞれに対する、認知機能の障害の影響を調査した。

デザインと方法:
日本の安土在住の地域高齢者の3年間のフォローアップの中で、長谷川式認知症スケールを用いた認知機能のチェックを行なった。
まず、
①認知機能障害とADL、IADLのそれぞれの機能障害と横断的関連を検討した。
②ロジスティック回帰を用いて、ADL-IADLのそれぞれの障害を引き起こすリスク要因として、認知機能を観察した。
③3年間のADL-IADL障害の発生および死亡の発生を、多項式ロジスティック回帰モデルを用いて検討した。更に、認知機能障害のADL-IADL障害に対する集団寄与危険割合(PAR%)を求めた。

結果:
横断解析では、認知機能の重症度とADL-IADL障害の重症度と関連していた。
縦断解析では、認知能力の障害が、最小限から軽度の人で、認知機能障害がない人に比べて有意に機能障害のリスクをより高く持っていることがわかった。
認知機能のADL-IADL障害に対するPAR%は11%から36%であり、最もPAR%が高かったのは、自分で食べられる能力に対してのものだった。

解釈:
認知機能障害は、一様ではない。つまり、認知機能の重症度が異なると、ADL-IADLタスクに与える影響が異なってくる可能性がある。
認知機能の重症度とADL-IADLの障害との関連は、更に研究される必要がある。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>

・認知機能の重症な人よりも、軽度の人のほうがADL-IADLの障害がその後おきやすい、というのは興味深い。

・著者はシビアな認知機能の人は、既にADL-IADLが保たれたまま認知機能障害が起きておるので、そのような人よりも軽度の人のほうが、その後の脳卒中の発症などにより身体機能の制限がおきやすいのでは、とそのメカニズムを推定している。

・学生と看護師を調査員として、3年間かけて少しずつベースラインを取って、追跡いく手法は、地域コホートの方法論として参考になった。

・死亡の確認には、小票等の確認はせず、全てインタビューのみで行なったのか?

・エンドポイントの発生が残念ながら少なく、「ns」として標記されていた縦断解析の結果で有意差が出なかった部分の値が気になる(かなり信頼区間が大きいのではないか)。
結果は理解しやすいが、他の研究の結果との一致性は高いとは言えず、この点が気になる。更なる研究の蓄積が必要なテーマだと感じた



 ナル美:食事の支度ができますか?階段を使用していますか?排泄は自分でできますか?…

 クラ坊:うにゃ、うにゃ、うにゃ…(いいえ、いいえ、いいえ…)

 ナル美:うーん、ADLもIADLもかなり障害されていますね。3年前の認知機能はどうだったのかしら?

 ジャー吉:あの、3年前、彼は生まれてませんから!


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