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山梨大学大学院総合研究部医学域 社会医学講座

社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
Division of Medicine, Graduate School Department of Interdisciplinary Research,
University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2006.01.11

2006年1月11日 担当:K. S

Impact of job and marital strain on ambulatory blood pressure results from the double exposure study.
~ 二重曝露研究からの、仕事と結婚の緊張が自由行動下血圧に与える影響 ~
出典: Am J Hypertens. 2005 Aug;18(8):1138

著者:Tobe SW, Kiss A, Szalai JP, Perkins N, Tsigoulis M, Baker B.
<論文の要約>
背景:
社会心理的なストレス、例えば仕事や結婚生活のストレスは持続的な血圧の上昇に関連している。しかしそれらの相互作用については検討されていない。
この研究では正常血圧と高血圧のサブグループを用いて、自由行動下血圧に対してどの程度仕事のストレスと結婚生活の相互作用が働いているかを検討した。

方法:
われわれは仕事のストレスや結婚生活が、正常血圧あるいは高血圧に対して治療されていない労働者における血圧上昇と関連するかどうかを、二重曝露試験におけるベースラインデータを用いて評価した。
2001年7月~2003年8月に参加者を募集し、1年間にわたって自由行動下血圧と結婚、労働の因子との関係を検討した。参加者は40~65歳の男女で、最近6ヶ月降圧薬を服用していない人である。また、冠動脈疾患、糖尿病、腎疾患を疑う所見のある人も除外した。加えて、参加者は同居人がいて、最低6ヶ月は常勤として雇用されている人である。パートナーについての情報は収集していない。参加者は大学病院から、冠動脈疾患についてのセミナーと、地域の広告に対して応募してきた人から募った。
血圧は、自由行動下血圧をモニターした。参加者は労働時間、結婚相手との接触時間、睡眠時間について毎日記録した。
仕事と、結婚生活のストレスについてはそれぞれ、Job Content QuestionnaireとDyadic(一対の、二つの部分からなる) Adjustment Scaleを用いた。
全部で608人が参加を表明したが、除外基準によって327人が除外され、254人が調査に参加し、248人のベースラインデータが得られた。150人は医療従事者で、98人はボランティアであった。
全ての参加者に対して、インフォームドコンセントを口頭および文書で得た。倫理委員会の承認を得ている。

結果:
対象者の54.4%が女性で、平均年齢は50.8歳(標準偏差6.6歳)。21.3%が仕事のストレスを訴えた。
24時間の収縮期血圧とアルコール摂取、仕事のストレス、男性、年齢と関連があったが、運動と血圧はそれらとは逆の関連があった。
24時間の収縮期血圧と仕事のストレス、そして結婚生活の間の相互作用については、仕事のストレスを持つ対象者において、強い結婚生活の結びつきが、低い収縮期血圧と関連していた。

考察:
今回の検討では仕事のストレスとそれぞれの収縮期血圧との間に強い関連があることが明らかになった。このことは最近の他の研究でも明らかである。
今回の参加者は社会的地位が高く、女性は大部分が高い教育を受けていた。しかしながらこれらの因子については調整してある。
われわれの過去の検討では、結婚生活における低い接触度が拡張期血圧の上昇と関連していたが、今回は直接の関連を認めなかった。
しかしながら過去の検討では正常血圧の人が含まれていない。今回は1/3以上が130/80mmHg以上であった。
このコホートでは血圧に対して過去の身体的な因子よりも社会心理的な因子の影響を受けやすかった。今回の検討では、大部分が正常血圧の参加者であり、軽度高血圧の参加者における強固な血圧への影響が現れにくかった。
しかしながら結婚生活の因子は過去の報告と同様に血圧の上昇に関連していた。

精神的なストレスの急性反応として収縮期血圧の上昇がある。このことは収縮期血圧と仕事のストレスが関連していることで説明されるだろう。
今回の参加者の大部分は一般的な労働者ではなく、心血管系のリスクに関する広告とセミナーで募集している。また一般人口よりも高血圧者の割合が高く、これらは今回の検討の限界である。

結婚生活と仕事のストレス、血圧上昇との相互関係は、収縮期血圧と仕事のストレスが高い参加者で、結婚生活における接触度が血圧上昇を緩和することで示された。
このことは結婚生活における接触度が、仕事のストレスと血圧の関連を仲介することを示している。それゆえ、結婚生活が仕事のストレスの血圧上昇効果に対して保護する働きを示している。このことは結婚生活が高い24時間血圧と弱い関連しか見せていないことで説明されるだろう。

結論として、結婚生活における接触度は、仕事のストレスが高い人にとっては血圧の上昇を緩和することが明らかになった。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>

・重回帰分析の際に、どのようにしてサンプルサイズを決定するのか?

・仕事のストレスにはJob Content Questionnaire、結婚生活についてはDyadic(一対の、二つの部分からなる) Adjustment Scaleを用いているが、どのようなスケールか?

・血圧と仕事のストレス、結婚生活の相互作用を検討しているが、本文中に記載があるのみで結果の表がなく、少しわかりにくいかもしれない。



 ジャー吉:「健診で血圧高いって指摘されて奥さんに報告したら、「体調崩して仕事休んだら承知しないよ!」だって。」

 ナル美:「ひゃー、怖い奥さんね。くわばらくわばら」

 クラ坊:「ばぶー(ジャー吉家の場合、家庭がストレスと血圧の関係を倍増させているらしいね。ネガティブな交互作用だね。かわいそうに)」

 ジャー吉:「おお、クラ坊よ、わかってくれるかい、この苦労…」

 クラ坊:「ぶー(わかるわかる。さあ、我が胸で眠れ。安心して血圧を下げよう)」かわいそうに)」

 ナル美:「(クラ坊、きっといい医者になるわ)」


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