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山梨大学大学院総合研究部医学域 社会医学講座

社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
Division of Medicine, Graduate School Department of Interdisciplinary Research,
University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2006.01.18

2006年1月18日 担当:N. K

Location, location, location: contextual and compositional health effects of social capital in British Columbia, Canada

~ Location, location, location:カナダ・ブリティッシュコロンビアにおけるソーシャルキャピタルのcontextualおよびcompositionalな健康影響 ~
出典: Social Science and Medicine 2005 60巻2059-2071ページ

著者:Gerry Veenstra
<論文の要約>
ここ数十年行なわれてきた、健康に関する個人レベルのリスク要因に関する疫学研究を経て、近年では地理的な「場所」の社会的パターンが健康に与える影響が注目されてきており、このような議論は集団を用いた健康に関する研究の、agency(個別要因)-structure(構造要因) の論争におけるstructureサイドの議論として、注目されている。
今回、2つのオリジナルデータ―カナダのBritish Columbiaの地域データと、同地域に居住する個人データ―を用いて、地域の社会的パターン特性の健康効果について検討した。
特に地域住民の特性、例えば信頼感や自主組織への参加といったことによって示される個人のソーシャルキャピタルの構成要素が、地域のソーシャルキャピタルから影響されるかを検討した。
マルチレベル分析の結果、個人レベルの、)慢性の疾患や障害の有無、主観的健康度、抑うつ的な訴えの有無という、well-beingに関する3つの個人レベルの健康要因のなかで、抑うつ的な訴えのみが地域のソーシャルキャピタルによって、説明されていたが、その方向性は期待とは反対方向であった(ソーシャルキャピタルが高いほど抑うつの訴えが多い)。
総じて、location(居住地)は健康の不平等をほとんど説明しなかった。
多変量マルチレベル分析の結果、最も強く健康を予測していた因子は個人の特性であった。
特に、収入、政治および政府に対する信頼、そして地域の他のメンバーに対する信頼感が強く関連していた。
これまでその効果が指摘されてきた自主的活動ネットワークへの参加はマルチレベル分析では健康とは関連していなかった。

<ジャーナルクラブでのディスカッション>

健康格差の広がる現在において、社会のあり方と健康との関係を疫学的に明らかにする「社会疫学」が盛んになってきている。その分野の論文。

社会疫学のメインテーマである、「経済的な不平等」と対を成す、「ソーシャルキャピタル(地域の人間関係資源、地域や社会が、その構成員同士の高い信頼感と相互扶助の気持ちと、ネットワークで結ばれているその度合い)、」の健康効果を検証した論文。結論としては、ソーシャルキャピタルのcontextualな健康効果を否定するものだった。

ソーシャルキャピタルの測定法については明確なコンセンサスが無く、各研究者が研究のために概念化し、独自の質問項目を用いて行なっているという現状にある中、同様にオリジナルな質問を用いてソーシャルキャピタルを測定している。Contextualな効果(その地域に住むことで、地域の特性が間接的に個人の健康に与える効果)とcompositionalな効果(その人自身の心理社会的要因として、直接的に健康におよぼす効果)を明確に区別して、マルチレベル分析により関係性を検討しており、大変参考になる論文。

オリジナル調査票の妥当性と信頼性については、信頼性係数などを提示してはいるものの、不十分である。電話帳法による無作為抽出の限界も考えると、ネガティブデータの部分に積極的な結論を下すことは慎重になるべきではないかと感じた。

複雑で大量のデータ処理を良くまとめている。

(クラブの課題)目的変数の種類(連続か、2値カテゴリか)によって、構築モデルを使い分けている。この辺の具体的な方法を調べる必要がある。



 ナル美:「私もうみんなのこと信頼できない!この職場のソーシャルキャピタル、最悪よ!うわーん、バタバタ」

 第三者:「大丈夫ですか?地団駄踏んでますが・・・」

 ジャー吉・クラ坊:「お土産のまんじゅう食べ損ねたって言って、癇癪起こしたんですよ。ほっとけ!(ばぶー!)」


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