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山梨大学大学院総合研究部医学域 社会医学講座

社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
Division of Medicine, Graduate School Department of Interdisciplinary Research,
University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2006.04.26

2006年4月26日 担当:李、薬袋、鈴木

Glycemic responses of oat bran products in type2 diabetic patients.
~ オート麦食品による2型糖尿病患者の血糖反応への影響 ~
出典: Nutr Metab Cardiovasc Dis. 2005 Aug;15(4):255-61.

著者:Tapola N, Karvonen H, Niskanen L, Mikola M, Sarkkinen E
<論文の要約>
背景と目的:
高血糖の管理に、血糖反応が穏やかな穀物食品は役立っている。穀物に多く含まれる、粘性を持つ食物繊維のβグルカンが豊富であると、血糖変化が穏やかになるという報告がある。一方で朝食におけるシリアル食品は、速やかに糖質を吸収し血糖上昇を促すように働く食品である。
この研究では2型糖尿病患者において、2種類の異なるオート麦食品(オート麦粉(オートミール?)、オート麦クッキー)を用いて食後血糖の変化について探った。加えて、経口的な糖負荷後の食後血糖変化におけるオート麦の効果についても検討した。

方法:
無作為化した2つの実験系を用いた。診断基準を満たす12人の2型糖尿病患者が5回の2時間糖負荷試験に参加した。
Series 1は、オート麦粉の摂取、オート麦クッキーの摂取、12.5gの糖負荷のみを行う(レファレンス)、のそれぞれにおける血糖値の変化を比較した。
Series 2は、25gの糖負荷のみ摂取、25gの糖負荷とオート麦粉30gを同時に摂取、の両者における血糖値の変化を比較した。
指先から、空腹時、食後15、30、45、60、90、120分に採血を行った。

結果:
Series 1における血糖変化
 オート麦摂取群では、15、30、45分値で対照(糖負荷のみ)よりも血糖値は低値となり、一方90分では高値となった。血糖の増加量は15、30、45分値では対照よりも小さく、120分値では大きかった。オート麦粉と糖負荷を比較すると、30分で2.5mmol/l、45分で1.8mmol/l、対照で血糖上昇が大きかった。オート麦クッキーと対照では差が認められなかった。AUCについては60分、120分値ともにオート麦粉で対照よりも有意に小さくなった。オート麦クッキーでも60分値については有意に小さかった。

Series 2における血糖変化
 オート麦粉と糖を一緒に摂取した群では、対照(糖負荷のみ)と比べて30、45、60分の血糖値が低く、120分の血糖値が高かった。血糖変化の平均値については30分で1.6mmol/l、45分で1.5mmol/l対照より低かった。言い換えればオート麦粉の摂取が血糖値の上昇を45分値で34±13%減少する。AUCについてもオート麦粉群で対照と比較して有意に小さかった。

結論:
オート麦粉群では血糖の変化曲線が平坦になった。このことは2型糖尿病患者にとっては有益である。急激な血糖低下による空腹感が間食の原因となり、そのことが体重増加につながるからである。
今回の検討では、糖と一緒にオート麦を摂取したほうが、ピークの血糖値を下げる結果となった。過去にも健康な人で同様の結果が得られている。今回の結果はそれに加えて、血糖降下も緩やかであった。つまり糖負荷に対する反応を遅くする効果が示唆された。
ベータグルカンを多く含むオート麦粉は2型糖尿病患者において、食後の血糖変化を緩和し、糖負荷に対する反応も軽減する。オート麦粉は水溶性の繊維を増やしたり、GI値を下げたりするのに有用な食品である。
オート麦はβグルカンに富んでおり、血糖値の変化を緩和し、2型糖尿病患者における糖負荷後の食後血糖変化を低下させる重要な因子として働いている。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
・シリアルは血糖値を上げる食品、ということはあまり糖尿病の人には向いていない食品ということになる。今回の検討では、そういった食品でも糖尿病の人むけにできる、ということをアピールしたのではないか。
・担当の李は、マウスにおいてβグルカンと血糖値の研究をしている。今後そちらの結果と、この論文の結果が結びついてくるかもしれない。
・もう少し、論文中でこの研究の限界と利点について述べたほうがいいかもしれない。
・時系列ごとのデータを解析するときには、このような繰り返しのプロシージャが用いられることが多い。
一方、限界も大きい。横断研究である点が最大の限界点であり、仮説を提示するにとどまる。近所の同様の経済状態のコントロールを得て行なった研究、とされているが、そこの選択バイアス(参加したくないのか、参加できない理由があったのか?)を否定できない。



 ジャー吉:「麦飯にとろろ、うまいよね」

 ナル美:「オートミールにジャム、おいしいよね」

 クラ坊:「ばぶー(麦チョコに牛乳、サイコーだよね)」

 :「麦っていいねえ!」


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