PAGE TOP

国立大学法人

山梨大学大学院総合研究部医学域 社会医学講座

社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
Division of Medicine, Graduate School Department of Interdisciplinary Research,
University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2006.05.10

2006年5月10日 担当:朱、佐藤、近藤

Parental feeding attitudes and styles and child body mass index: prospective analysis of a gene-environment interaction
~ 親の食事に対する態度およびスタイルと、子どものBMI:遺伝子環境交互作用の縦断的解析 ~
出典: Pediatrics 2004;114;429-436

著者:Faith MSほか
<論文の要約>
背景:
親の食事の与え方に関する態度とスタイルが、子どもの体重に関係していることがいわれているが、それを明らかにした縦断研究は無い。

目的:
2年間の上記態度とスタイルのが、2年間にわたり一定しているか、これらの要因が2年後のBMIを予測できるか、そして、これらの関係が子どもの肥満の遺伝的素因にどう影響を受けるかを明らかにした。

方法:
Infant Growth Study ofChildrenに登録された57家族を対象者として、母の妊娠前の過体重、および低体重により、その子どもの肥満の遺伝的リスクを、それぞれ高リスク、低リスクとみなした。
身長、体重を3、5、7歳時点で評価。
親の食事の態度とスタイルを子どもが5、7歳のときにChild Feeding Questionnaire(CFQ)を用いて確認した。
5歳時点での親の食事スタイルが2年後のこどものBMIを予測しているかどうか相関分析と階層線形モデルによって検証された。

結果:
親の食事の態度は子どもが5歳から7歳までの間一定していた。
低リスク群では、5歳時点での親のperceived responsibility(子どもの体重に対しての食事を与えるものとしての責任感)が7歳のBMIのzスコアの減少と関連。
ハイリスク群ではchild weight concern(子どもの体重への関心度)およびperceived child weight(子どもの体重の認識度)が7歳時点でのBMIスコアの増加に関係していた。
食事スタイルでは、低リスク群ではmonitoring(脂質摂取量の管理)が7歳時点でのBMI zスコア低下と関係。
反対に高リスク群ではrestriction(食事量の制限度)がBMI zスコア上昇と関連、pressure to eat(食事摂取の促し)がBMI zスコア低下と関連していた。
これらの関係は3歳時点での子どもの体重での調整後も有意であった。

結語:
親の食事の与え方に対する態度やスタイルとこどものBMI zスコアの関係は、子どもの肥満素因に左右されている結果が得られたことから、遺伝子-環境交互作用の存在が示唆された。
肥満素因の強い子どもでは、体重が増加すると食事量を親が制限する傾向になるように思われるが、反対に過度な制限によってむしろ体重増加を発生させることがわかった。
体重増加予防に関しては子どもの肥満の状況や、その素因などの特性をもとにした個別の介入を行なうことが有効だろう。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
準備的解析時に各変数同士の交互作用を観察し、必要に応じて層別分析しているなど、丁寧な解析手順が踏まれており参考になる。
サンプルサイズの少なさが大きな限界。CFQはアメリカで開発されたスケール。これを日本や中国で使うには、文化背景等の相違も考えつつ、再度、妥当性・信頼性の検討が必要だろう。

前のページに戻る