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山梨大学大学院総合研究部医学域 社会医学講座

社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
Division of Medicine, Graduate School Department of Interdisciplinary Research,
University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2006.05.16

2006年5月16日 担当:関口、永井、安藤

CYP2A6 polymorphisms are associated with nicotine dependence and influence withdrawal symptoms in smoking cessation.
~ CYP2A6遺伝子多型はニコチン依存度と、禁煙時の離脱症状に関連する ~
出典: The pharmacogenetics 6,115-119; 2006

著者:Kubota T, et al.
<論文の要約>
背景:
CYP2A6はニコチンをコチニンに変化させる触媒作用を及ぼす主要な酵素である。ニコチン代謝の個人間の違いは少なくとも一部分はCYP2A6遺伝子の多様な変異に起因するものである。本研究では喫煙の臨床的な表現型(喫煙習慣・離脱症状)に関するCYP2A6遺伝子多型の影響を評価した。

方法:
被験者は107人の喫煙者である。特定した遺伝子型は、日本人の主な多型であるCYP2A6*1,CYP2A6*4, CYP2A6*9型である。*1型は標準酵素活性を持つ、wild-typeの遺伝子型である。*4型は全欠損型、*9型は一塩基多型を持ち酵素活性が低下している。 本研究はCYP2A6遺伝子型に基づいたオーダーメイドの禁煙プログラムを考える上での見識を提供する。

結果:
酵素活性が高い遺伝子型を持つ群(*1/*1,*1/*9,*1/*4,*9*9)は、低い群(*4/*9,*4/*4)に比べ、喫煙本数が多い傾向にあった。また同様にニコチン摂取量も多い傾向にあった。

① ニコチン依存の指標として起床後5分以内に最初の喫煙をする人の割合を計算した。被験者の割合は、酵素活性が低い群より、高い群の方が有意に高かった(p<0.05)。

② (ニコチン依存と酵素活性)ニコチン依存を表すトータルスコアーは以下のように計算した。自己報告した一日の喫煙した本数と、1日の最初の喫煙までの時間をスコアーである。スコアーはCYP2A6酵素活性が高い群の方が、低い群と比較したところ、有意に高かった(p<0.05)。以上よりCYP2A6遺伝子型はニコチン依存と関係していることがわかった。

③ 離脱症状について、CYP2A6遺伝子型の影響を調べた。被験者は禁煙を試みた一群。離脱症状の程度はアンケートを使って評価した。(a)酵素活性が高い群は離脱症状が、低い群に比べ、有意に重かった(p<0.05)。(b)ニコチン代替療法を用いて禁煙を試みた集団での離脱症状の程度と遺伝子型を調べた。ニコチン代替療法を用いて禁煙を試みた集団では、重度の離脱症状は、活性が低い群より,活性が高い群のほうが顕著であった(p<0.01)。

考察:
結論として、CYP2A6遺伝子型は喫煙習慣、ニコチン依存、禁煙時の離脱症状に影響していることを観察した。CYP2A6遺伝子型特定は、個別化した健康ケアとして、禁煙プログラムの新しい薬理ゲノム学の方法である可能性がある


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
① 背景と仮説が上手にまとめられていて読みやすい。

② 被験者の年齢、性別、喫煙期間などの属性が明らかにされていない。これら背景要因も共変量に加える、あるいはこれら属性で層別分析するなどして検討することの必要性はないか?→あるだろう。



 ジャー吉:「ワシがタバコやめたときは、まだニコチンパッチが無くて辛かったな~。きっとCYP2A6がワイルドタイプなんだよ」

 クラ坊:「ばぶー(僕はパッチつけてるよ。スーッとしてイライラしないや)」

 ナル美:「それは虫刺されパッチでしょ!」


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