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山梨大学大学院総合研究部医学域 社会医学講座

社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
Division of Medicine, Graduate School Department of Interdisciplinary Research,
University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2006.06.14

2006年6月14日 担当:李、鈴木

IL-1beta-mediated innate immunity is amplified in the db/db mouse model of type 2 diabetes.
~ IL-1βによって仲介される先天性免疫は、2型糖尿病モデルのdb/dbマウスにおいて増幅される ~
出典: J Immunol. 2005 Apr 15;174(8):4991-7.
著者:O'Connor JC, Satpathy A, Hartman ME, Horvath EM, Kelley KW, Dantzer R, Johnson RW, Freund GG.
<論文の要約>
慢性的な炎症状態の出現は、2型糖尿病やその合併症において重要な役割を担っている。ここでわれわれは、この炎症状態を制御できない状態がIL-1βシステムに影響し、脳における機能に影響するという仮説を検証した。糖尿病のdb/dbマウスおよび糖尿病でないdb/+マウスにLPSというサイトカインインデューサを腹腔内投与した(100μg/kg/mouse)。db/dbマウスにおける先天性免疫に関連した病的行動は、db/+マウスと比較して、2,4,8,12時間後でそれぞれ14.8、33、44.7、34%多く出現した。LPS投与量を5μg/mouseに固定した場合、db/dbマウスにおける同様の状態は、db/+マウスに比べて4,8,12時間後でそれぞれ、18.4、22.2、14.5%増加した。糖尿病マウスでは潜在的なマクロファージがLPSに対する反応としてIL-1βをより多く産生し、LPSによって導入された腹膜におけるIL-1βレベルが上昇する。重要なことに、IL-1Rアンタゴニストと、2型IL-1受容体(IL-1R2)はdb/dbマウスにおいて、LPSに対する反応としての制御ができない状態になる。最終的には、末梢と中枢におけるIL-1βの投与はそれ自身が、末梢におけるLPSの効果のように見せかけているdb/dbマウスにおいて、病的な行動を招き、その行動はdb/+マウスと比較して有意に強く現れる。これらの結果を両者あわせて考えると、IL-1βによって仲介されている先天性免疫は、db/dbマウスにおいて末梢と脳の両方で増幅されていることを示唆しており、そのメカニズムは糖尿病に関連したIL-1βの反応的な制御(counterregulation)の喪失によるものと思われた。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
・糖尿病マウスの定義は?コントロールはこのマウスでいいのか?ob/obマウスというのもある。

・人における臨床的な知見から、動物実験でメカニズムを明らかにしようとしている。しかしながら、マウスの行動をもって指標として妥当性はどうなのか?観察者は盲検なのか?人と違って、社会的行動、といっていいのか?

・IL-6も炎症に関連しているサイトカインで、治療に使えるという話もある。

・痛みに関連したサイトカインは、今回の結果に関連していないのだろうか?

・今日の論文は、李の研究に関連したもので、普段の疫学論文とは少し毛色の違うものであったが、たまにはこういった実験系の論文を見てみるのも、違った視点が見えてきていいかもしれない。

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