PAGE TOP

国立大学法人

山梨大学大学院総合研究部医学域 社会医学講座

社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
Division of Medicine, Graduate School Department of Interdisciplinary Research,
University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2006.09.13

2006年9月13日 担当:鈴木

The incidence of smoking and risk factors for smoking initiation in medical faculty students: cohort study.
~ 医学部学生における喫煙率と喫煙開始に関わるリスクファクター:コホート研究 ~
出典: BMC Public Health. 2006 May 10;6:128.
著者:Senol Y, Donmez L, Turkay M, Aktekin M.
<論文の要約>
Background:
喫煙は世界中、特に途上国における最も重要な公衆衛生問題である。喫煙対策において、医師は重要な役割を担っている。さらに、喫煙に関連した健康問題を扱う際には、医師は喫煙しない生活習慣を持つ人々の代表であることが期待されている。医学教育を行う時期は、このようないい効果を培っていくのにいい時期だと思われる。われわれは、ハイリスクグループを同定し、効果的な対策を考える上で、医学教育を受けている期間にどんな学生が喫煙を開始するかを示すことが重要だと考えた。医学教育を受けている期間の喫煙率をそれぞれの学年で計算できるような、継続的な前向き研究は喫煙開始のリスクの高い時期を明らかにする上で有用である。
この研究の目的は、医学部学生における喫煙開始に関わるリスクファクターを明らかにし、各学年における喫煙率を示すことである。

Methods:
■Design of the study
このコホートは1996年にAkadeniz大学医学部に入学した学生のうち、研究に同意した126人から構成されている。対象者の匿名性を担保するために、学生は最初の調査時につけられたコードナンバーで追跡された。コードナンバーの発行は研究に参加しない学生によって行われた。学生はそのコードナンバーを質問紙で名前の代わりに用いた。7人の学生が、質問紙に正しく回答しなかったために研究から除外された。119人の学生について追跡が可能であった。最初の調査時に喫煙していなかった93人について喫煙開始率が計算された。

■Variables
1日に1本以上喫煙する場合に喫煙者とし、過去において週に1回以上飲酒する場合に飲酒習慣ありとした。一方で、飲酒しない、あるいは機会飲酒のみの場合は、飲酒習慣なしとした。朝食を毎日摂るか、野菜、果物、肉を適切に摂取しているかということで、栄養状態を評価された。運動については、少なくとも週に2回、20分以上の運動をしている場合に運動習慣ありとした。また、GHQ、STAI、BDIを用いてメンタルヘルス状況についても調査を行った。

■Analysis
喫煙率、学年ごとの喫煙開始率、平均喫煙期間について計算した。

■Incidence calculation
喫煙開始率=ある学年の間に喫煙を開始した学生の数/その学年開始時に喫煙していなかった学生の数

■Yearly prevalence
喫煙率=質問紙に回答した時点で喫煙している学生の数/その学年開始時に喫煙していなかった学生の数



Results:
研究参加した119人のうち78人が男性、41人が女性であった。調査開始時に26人が既に喫煙していた。
6年間の追跡において、男性の喫煙期間は女性よりも有意に長かったが、喫煙開始年齢については有意差を認めなかった。
最も喫煙開始リスクの高い期間は最初の3年間であることが示された。6年間で30人が喫煙し、56人が少なくとも1回あるいは6年間喫煙した。
喫煙開始のリスクとなるのは、友人に喫煙者がいること、不適切な栄養状態であった。一方、不安となる状況を想定することによるストレススコアは喫煙を開始した学生で、喫煙開始しなかった学生よりも高かった。
多変量解析については、栄養状況のみ有意ではなかったが、他の有意な結果についてはリスクであることに変わりはなかった。

Conclusion:
結論として、医学教育における最初の3年間が最も喫煙開始のリスクとなる時期であった。男性、同居する友人が喫煙していること、不適切な栄養摂取、不安となる状況を想定することによるストレスが、有意に喫煙開始と関連していた。社会的、心理的な介入の両方を、医学教育の早期から行うことが必要である。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
・喫煙について、学生もうそをつく可能性があるのではないか?
妊婦については90%くらい正確だという報告もあるが、学生の場合、匿名化していたとしても教官の印象を気にして喫煙していないと回答する可能性があるかもしれない。

・栄養に関して、「不十分な栄養」などとして、4つくらいの設問からカテゴリー化しているようだが、その内容がわかりづらい。恣意的な操作があったと疑われても仕方がないので、もう少し明確に記載すべきではないだろうか?

・不安については、今までに経験した不安から来るストレスではなく、入学して大学生活という未知の不安に対するストレスが影響していたので、リーズナブルな結果だといえよう。

前のページに戻る