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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2006.04.12

2006年10月4日 担当:永井

Public attitudes toward genetic testing: Perceived benefits and objections
~ 遺伝子検査に対する市民の態度:認知された利益と難点 ~
出典: Genetic Testing Vol. 10, No.2, 2006
著者:Henneman L, Timmermans DR, Van Der Wal G.
<論文の要約>
目的:
このプロジェクトの目的は、遺伝学の発展についての彼ら支持について、これらの問題に関する議論を市民、政策立案者、専門家の間で始める方法について、よりよく知るために遺伝子検査に対するオランダ市民のあまり知られていない態度を検討することである。さらに、遺伝子検査についての態度は、一般市民のあいだで遺伝子検査の理解の重要な決定要因となるかもしれない。

この研究の論点を以下に記す。
(1)オランダ市民のあいだで想定される遺伝子検査の利点と不利点に関する現行の信念は何だろうか?
(2)遺伝子検査の有用性と利用に対する態度はどんなものか?
(3)遺伝子検査の有用性と利用に対する態度は信念や、検査についての倫理、遺伝性疾患や遺伝子検査の熟知、遺伝学の知識、人口統計上の特性(年齢、性別、教育レベル、宗教など)によって影響されるのだろうか?

方法:
想定される遺伝子検査の利点と不利点を評価するための質問紙がオランダの母集団を代表する標本に送られた(n=1308,age≧25)。回答率は63%だった(817/1308)。4項目の尺度で極端な得点をもつ、遺伝子検査の有用性と利用についての反対者と支持者を代表する2つのグループが分類された。

結果:
多重ロジスティック回帰分析の結果、遺伝子検査が身近な人、遺伝子検査の個人的な利益への信念に関する4項目の尺度で高い得点だった人、病気の遺伝的背景の知識は人々がより健康な生活をおくる助けとなるだろうと信じている人は反対者になりにくいようだった。遺伝子検査は自然を改ざんすると考える人は反対者になりやすいようだった。その他の変数、遺伝子決定論についての信念や遺伝学の知識、教育レベル、年齢、性別などは有意に関連していなかった。

結論:
結果は倫理的な受容性に加えて、認知された実用性が遺伝子検査支持の前提条件であると示唆した。さらに、遺伝学の知識と教育レベルは遺伝子検査の有用性と利用に対する態度と関連がなかった。これらの結果にもとづくと、より多くの情報は必ずしも遺伝子検査の支持をもたらさないだろうと予想される。しかし、市民は無知への恐れから遺伝子研究の発展ついてもっと情報を得たいようである。科学と社会のあいだのギャップを埋めるために、市民のコミュニケーションにおけるより多くの配慮が遺伝子検査の起こりうる利点と不利点に対して払われることが望ましい。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
■態度を測る尺度の得点は表によると“Completely disagree”,“Not agree/not disagree”,“Completely agree”の3つに分けられているが、5ポイントのリッカートスケールをどのように分けているのか不明瞭である。
⇒2004年の同著者の同じデータを使った論文をJCの後で見直したところ、“Completely disagree”が得点1,2で(とても反対、反対)、“Not agree/not disagree”が得点3(どちらでもない)、“Completely agree”が得点4,5で(とても賛成 、賛成)ではないかと思われます。
ちなみに、質問紙の原文に関しては以前に著者に問い合わせたのですが、オランダ語のため無理でしょうというメールの返信が来ました。

■態度と知識との関連について、知識とはどういうものを考えているか?
⇒今回の論文で用いられた知識は、「親戚同士の両親は遺伝性疾患をもつ子どもをもつリスクが高くなる」などといった記述に対する正誤問題を得点化したものを知識としているので、高次のリテラシー(情報や知識にもとづいて意思決定できる能 力)とは異なる。 教授から、知識やリテラシーを用いるときは配慮して使ったほうがいいというお話がありました。

■対象が偏っているのではないか?
⇒研究の限界にあるとおり、健康やヘルスケア関連の消費者パネルのメンバーが対象集団になっているので、遺伝子検査に興味がある人が多く、結果に影響しているかもしれない。また、国民性の影響も考慮したほうがいい。

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