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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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ジャーナルクラブ通信バックナンバー

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2006年11月15日 担当:津田

Children's food consumption during television viewing
~ テレビ視聴中における、子どもの食物摂取について ~
出典: The American Journal of CLINICAL NUTRITION 2004;79:1088‐94
著者:Matheson DM, Killen JD, Wang Y, Varady A, Robinson TN.
<論文の要約>
はじめに:
TVの視聴は子どもの肥満に関連している。テレビの視聴中に食事をすることと、よく広告された食品を食べること、これらはテレビ視聴が子どもの体重に影響するということを説明する、二つの仮説である。
子どもがTV視聴中に摂取する食品の量と種類を調べ、またこれらと他の時間帯の摂取食品と比較し、さらに子どものBMIとテレビ視聴中に摂取する食品の量・種類を調べることを目的とした。

方法:
・対象者について
Sample 1:TV視聴の減少についての学校ベースの臨床研究に参加している子ども。カルフォルニア地方の12の小学校のうち、2つの民族的に多様な小学校を選択し、1999年9月入学の全ての3年生より抽出。追加で2000年春にデータを収集した12学校の残りの生徒より抽出。

Sample 2:子どもの肥満を抑える学校ベースの臨床試験の一部として行われた、食事摂取に影響する環境要因の横断調査より対象者を選んだ。サンノゼ(カルフォルニア)の8つの低所得小学校の5年生。

・測定方法
平日2日と週末1日における24時間の食事を思い出し、子どもにまず回答してもらった。
更に、各食事か軽食摂取中にどの活動に参加したかを尋ねる。(車でのTV鑑賞、ビデオ・映画鑑賞、TV・コンピューターゲーム、読書や下調べ、屋内外での遊び)この情報を摂食した食物と栄養に関するデータにリンクさせた。
最初の思い出し調査は対面により実施し,2回目は電話で情報収集した。身長は携帯用の直読スタジオメータにて2回測定の平均値または3回測定の中央値を使用し、BMIを計算する。

・統計解析
最初にTV視聴中、そうでないときに分けて、摂取している食品数、総カロリー、食品群に分けた摂取量について集計した。また、平日と週末に分けて、TV視聴中の食品摂取割合を比較した。そしてSpearmanの相関係数を用いて、BMIとTV視聴中の総カロリー、脂肪からのカロリーとの関連を検討した。
次にTV視聴中の食品のタイプと、子どもの体重について検討した。
最後にTV視聴中かそうでないかに分けた場合の摂取食品タイプ、また平日と週末の食品タイプを検討し、相互作用についても検討した。

結果:
*3年生では平日73.6%、週末62.9%,5年生では平日76.0%、週末58.2%がTV視聴中に食事をしている。
*3年生2名(2.3%)、5年生5名(4.1%)が週末にTV視聴中に全ての食品を摂取していた。

Figure 1:Sample 1募集のフローチャート。

TABLE 1:平日と週末に分けた、TV視聴中、そうでないときの子どもの食物摂取状況。
TV視聴中の食事摂取総エネルギー割合は、3年生の平日16.6±16.4(%)、週末26.2±30.6(%)、5年生の平日18.3±19.9(%)、週末では26.4±29.8(%)と平日より週末が高かった。

TABLE 2:平日と週末に分けた、TV視聴中に摂取した食事・軽食割合

TABLE 3:TV視聴中に摂取した一日の総エネルギーにおける割合、および脂肪からのエネルギー摂取割合と、子どものBMIのスピアマンの相関係数(平日と週末に分けた)

TABLE 4:平日と週末における、TV視聴中、そうでないときの、脂肪からのエネルギー摂取割合、エネルギー密度、様々な食品の種類からのエネルギー摂取割合

TABLE 5:TV視聴中の脂肪からのエネルギー摂取割合とエネルギー密度と、子どものBMIとの相関(Spearmanの相関係数)。唯一3年生の脂肪からのエネルギー摂取割合とBMIの相関関係に有意差が出た。平日>週末


考察:
TVを見ている間の食事摂取は週末と平日で異なる。
週末の摂取エネルギーの4分の1はTVを見ている間に摂取されていた。
平日は約20%であった。
食品の内容とエネルギー密度の間に関係性の違いは見られなかった。
週末の摂取食品カテゴリーからはBMIとの相関は見られなかったが平日には関連が見られた。
TVのONとOFFを週末と平日に分けたことによって、解析上、食物と栄養摂取の信頼性と違いを検出するためのパワーが減少したかもしれない。
食事摂取量、特に太った子どもの食事摂取量に地域差や民族による違いが出たかもしれない。
5年生のサンプルは低所得者であり、ラテン系の食事(豆類が多い)のために結果が出なかったかもしれない。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
・サンプル数が不明瞭でわかっているだけでは少な過ぎる、前に行っていた研究のサンプルを利用したのか、この年代に設定にした理由が明記されていない。
・なぜ64サンプルだけでなく、ポストテストにより新たに追加でコントロールグループを設定したのか不明である。
・他の研究のサンプルを利用しているが、サンプルに偏りはないのであろうか。
・思い出し法なのでその正確さに欠くのではないか。
・食事摂取中の活動について尋ねているが、その定義は何であるかが不明である。
・TABLE 2では基本的なデータとして、どの位の人が朝食を摂取しているかを載せなくても良いのであろうか。
・TABLE 4はTVのON・OFFと平日・週末が一緒のテーブルで表現されているため理解しにくく、不明確である。
・本文内容と表の意味との合致がしづらい。また、表自体も理解しづらい。

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