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山梨大学大学院総合研究部医学域 社会医学講座

社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2007.1.10

2007年1月10日 担当:不明

Compliance, satisfaction, and quality of life of patients with colorectal cancer receiving home chemotherapy or outpatient treatment: a randomised controlled trial
~ 在宅か外来における化学療法を受けている直腸・結腸癌の患者のコンプライアンス、満足度、およびクオリティ・オブ・ライフ: ランダム化比較試験~
出典: BMJ. 2001 April 7; 322(7290): 826
著者:J M Borras, A Sanchez-Hernandez, M Navarro, M Martinez, E Mendez, J L L Ponton, J A Espinas, and J R Germa
<論文の要約>
はじめに:
結腸・直腸癌患者の在宅と通院患者の化学療法における安全性、コンプライアンス、医療資源の使用、クオリティ・オブ・ライフ、および治療に対する満足に関しての比較をすること。

方法:
・デザイン: ランダム化比較試験
・場所: 大きな教育病院
・対象: 87人の補完療法か症状緩和のための化学療法を受けている直腸・結腸癌患者
・介入: クリニックの外来に通院している患者、または、在宅患者でフルオロウラシル(フォリン酸かレバミゾールのあるなしにかかわらず)がある治療を受けていること
・メインアウトカム: 治療の毒性、 患者の治療へのコンプライアンス、クオリティ・オブ・ライフ(EORTC QLO C-30)、ケアへの満足度、そして、医療資源の使用。


結果:
42人の患者が外来通院用の診療所で、45人を在宅で治療した。 2つのグループは年齢、性別、癌の所見、および病期で調整した。 治療に関連する毒性は2つのグループにおいて同様だったが、通院患者グループには在宅のグループより自発的の退出(治療中断)があった。 グループの間には、クオリティ・オブ・ライフスコアに関しての違いが治療の前後には全くなかった。患者の満足度のレベルは在宅治療の患者において特に、情報の提供とナーシングケアに関して、より高かった。2つの群では、 使用できる医療社会資源においてはどんな重要な違いもみられなかった。

結論:
在宅の化学療法は結腸・直腸癌の患者において、入院治療と同じような安全性があり、患者の治療に対するコンプライアンスと満足度を改善できるかもしれない代替手段と考えられた。

この話題に関して既に知られていること:
在宅の化学療法プログラムは入院治療に代わる手段として提案された。しかしながら、それらは、より高価で、そして、コンプライアンス、クオリティ・オブ・ライフ、または他の医療資源の使用などの結果へのそれらの影響に関する証拠がほとんどなかった。

この研究が示唆するもの:
在宅化学療法は患者のQOLには効果がなかったが、治療へのコンプライアンスを増すことや満足度、特に看護ケアに関するものには効果がみられた。在宅化学療法は外来通院治療に変わる安全な利用しうる代替手段となりうるのではないか。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
・日本ではこの研究のような内容の化学療法が行われているのだろうか(投与方法も複雑で、強めの抗癌剤を投与している)。また、在宅でのフォローアップはどのような体制なのだろうか。
・この研究は非常にわかりやすく、結果が明確である。
・サンプルはもともとコンプライアンスが比較的よい群なのではないか(複雑な治療をするため)。

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