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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2007.03.07

2007年3月7日 担当:鈴木

Oophorectomy in premenopausal women: health-related quality of life and sexual functioning
~ 閉経前女性における付属器(卵巣)摘出術:健康関連QOLと性的機能 ~
出典: Obstet Gynecol. 2007 Feb;109(2 Pt 1):347-54.
著者:Teplin V, Vittinghoff E, Lin F, Learman LA, Richter HE, Kuppermann M.
<論文の要約>
目的:
子宮摘出術時に、両側付属器(卵巣)切除(BSO)を行った、あるいは卵巣を温存した、閉経前の女性において、健康に関連したQOLアウトカムや、性的機能がどのように違うのかを比較すること。

方法:
これは、良性の婦人科疾患によって単純子宮全摘術(子宮を頚部から体部まで全部切除する)か、子宮体部のみを摘出する膣上部切断術を行った、閉経前の女性に対する無作為化比較試験のデータを利用した2次解析である。BSOは患者の希望、あるいは手術中の病理所見によって手術の施行が決定された。健康関連QOLと性的機能については、SF-36と、Sexual Problems Scalesなどによって評価され、評価は術後4週間、6ヶ月、2年の時点で行われた。

結果:
対象者の平均年齢は、BSO群(49人、45歳)で、卵巣温存群(112人、40歳)より有意に高かった。術後6ヶ月の時点で、BSO群では、卵巣温存群に比べて、ボディイメージ、睡眠障害、SF-36のMental Component Summaryであまり改善していなかった。性的機能については、両群に差を認めなかった。ほてりや、尿もれ、骨盤痛については両群で同様であった。術後2年の時点では、全ての指標において、両群に有意差を認めなかった。

結論:
BSOを施行した女性は、健康関連QOLに関して、術後6ヶ月の時点では、卵巣を温存した女性よりもあまり改善しなかったが、術後2年の時点では、両群に差を認めなかった。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
・RCTのデータを用いて、2次的な解析を行ったものであり、無作為化試験ではない。
→そのことによる研究の限界は大きいかもしれない。

・追跡期間を4週間、6ヶ月、1年…、と設定したのはどういう根拠によるものなのか?本文中ではそのような点には触れていない。

・2次的な研究ということで、4週間後、6ヶ月後といってもかなりの幅がある。このことはどう影響するのだろうか?中には、症状によって、かなり頻繁に診療所を訪問している人などがいて、そういう人にはしっかりインタビューできるものの、それ以外の人にはインタビューが難しい、などの問題点は存在しないのだろうか?
→時間とともに改善する、という傾向が明らかであれば、今回のように、「42日から6ヶ月までを6ヵ月後」というように定義することは、過小評価になるのでいいのか?

・追跡率は高いようだが、その詳細については触れられていない。

・年齢を調整したり、ホルモン補充療法についても調整したりしているが、やはりそういった背景が、結果に影響している可能性が大きいと思われる。

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