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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2007.05.23

2007年5月23日 担当:戸澤、小竹

Have there been changes in children's psychosomatic symptoms? A 10-year comparison from Finland.
~ 子どもの身体症状に変化はあるか?フィンランドにおける10年間の比較 ~
出典: Pediatrics 115(4) 434-442 2005
著者:TSantalahti P, Aromaa M, Sourander A, Helenius H, Piha J
<論文の要約>
目的:
本研究の目的は、身体症状(頭痛、腹痛、他の痛み、嘔気か嘔吐)の有病率の1989年と1999年での違いと、子どもの症状に関して保護者と子どもの認識の類似性について明らかにすることである。さらに、身体症状同士の併存と、身体症状と精神医学的症状の関連性を明らかにすることである。

方法:
2対象の横断研究の代表性のあるサンプルが比較された。対象児は、1981年生まれ(1989年サンプル、n = 985)と1991年生まれ(1999年サンプル、n = 962)で、南西フィンランド地方の対象に選ばれた学区で生活している。回収率は1989年サンプルが95%、1999年サンプルが86%であった。子どもの身体症状に関しては子どもと保護者に、子どもの精神医学的症状に関しては子どもと保護者と教師に質問した。精神医学的症状についての質問には、CDIと Ruter尺度(保護者・教師用)が用いられた。

結果:
頭痛と腹痛の有病率は、1989年より1999年の方が高かった。保護者はしばしば子どもの身体症状の認識に欠けていた。子どもが回答した身体症状は、行為・多動症状に関連していた。身体症状と精神医学的症状の関連は、1989年サンプルと1999年サンプルでいくつか差がみられた。

結論:
臨床において、身体症状や精神医学的症状についての質問は、子ども自身にも聞く必要がある。なぜなら、保護者や教師が常に子供たちの身体症状を認識しているわけではないからである。身体問題を判断する時には、精神医学的症状について問う必要があり、逆も同様である。身体症状有病率の増加の理由と、精神医学的症状との関連を明らかにするために、さらなる研究が必要とされる。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
・対象者は「8才」であったが、その理由は本文中に述べられていない。なぜこの年齢を選択したか、8才児に問う根拠を記載した方が良いのではないか。
・CDIの項目を一部除外しているが、これで測定したいものを十分に測定できるのだろうか。
・1989年サンプルと1999年サンプルを合わせて分析している箇所があったが、合体させることは妥当だろうか。10年間における、さまざまな背景の変化を考慮すべきであろう。
・解析方法が分かりにくい。特に3つ以上の症状が関連していないという解析は、難解である。
・教師に質問しているが、教師が全生徒を把握できているかは疑問である。しかし、保護者は我が子を客観的に評価することが難しい(そのため過大評価になりかねない)、家庭と学校では子どもの様子や違うことを考慮すると、教師に質問することにも意味があると考えられた。
・身体と精神の結びつきは一般的にも言われている(心身医学も存在している)。乳幼児や学童の調査を行うことも意味が大きいと考えられた。

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