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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
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University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2007.09.12

2007年9月12日 担当:永井

Knowledge and attitudes towards preimplantation genetic diagnosis in Germany
~ ドイツにおける着床前遺伝子診断に対する知識と態度 ~
出典: Human Reproduction Vol.20, No.1 pp. 231-238, 2005
著者:U. Meister, C. Finck, Y Stobel-Richter, G. Schumutzer and E. Brahler
<論文の要約>
背景:
着床前遺伝子診断(PGD)は、倫理的、社会的問題のためにしばしば感情的な議論にかかわる技術である。世界的にさまざまな法律が存在し、ドイツは優生学への懸念と国家社会主義時の障害者の処遇のために、興味深い例となった。PGDは現在、合法でないが、未だに対立する立場が存在し、合法化には問題が残る。一般集団のPGDに対する態度の研究はまれである。

方法:
データは2003年11月に行われた調査で集められた。対象者はドイツ居住の18-50歳の2210人である。調査はインタビュアーによって社会人口学的特徴についてたずねられ、態度については質問紙によって回答してもらい、インタビュアーによって回収された。質問紙はPGDに対する態度(ある場面においてPGDを社会的に容認すべきか、個人的に利用したいか)、知識(知っていたかどうか)、PGDの適用できる範囲について、PGDについての感情についての項目から成る。

結果と結論:
回答者はPGDについての知識がほとんどなかった。PGDの適用できる範囲についての誤った思いこみと基本的な遺伝学の知識の欠如があった。医療の指標としてのPGDを全面的に容認する傾向がみられた。性別の選択のような非医療的な指標はほとんど容認されなかった。PGDについてすでに考えをもつ回答者はPGDを聞いたことがないとした回答者よりも、その診断の可能性を過大評価し、将来、ゆくゆくはPGDを利用するだろうと答えることがわかった。私たちの発見は適切な情報供給の重要性とこの意味で現代の生殖医療における新しい技術について一般の人々を教育することの重要性を強調するものだった。PGDの合法化は政府、疾患をもつような集団、さらに一般の人々にとって重要な課題となるだろう。これは一般の人々が適切に情報を与えられるだけでなく、このことについて考えをもつことが必要とされる。
現代医療の発展における社会的問題は今後の世代のために私たちが取り組まなければならない責務である。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
・2000人以上からインタビューし、調査できていることはこの研究の利点としてあげられる。
・対象者の年齢が18-50歳だが、50歳以上の人(60歳代くらいまで)も対象にすべきだったのではないだろうか。
・結果の図表が多いが、何に焦点を合わせて何を述べたいのかがわかりづらい。多変量解析が必要ではないか。
・着床前診断で生まれた子どもの長期的リスクがまだわかっていないし、その評価もほとんどされていない。

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