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社会医学講座 | 山梨大学医学部

Department of Health Sciences,Basic Science for Clinical Medicine,
Division of Medicine, Graduate School Department of Interdisciplinary Research,
University of Yamanashi

ジャーナルクラブ通信バックナンバー

トップページ ジャーナルクラブ通信バックナンバー検索 2007.09.19

2007年9月19日 担当:戸澤、今留

Is There a Fetal Origin of Depression? Evidence from the Mater University Study of Pregnancy and Its Outcomes
~ 抑うつは胎児に起因するか?
          Mater大学における妊娠研究からの根拠とその結果 ~
出典: American Journal of Epidemiology, 165(5), 575-582, 2007.
著者:Rosa Alati
<論文の要約>
目的:
成人の抑うつと、児の出生体重、妊娠時の母親の抑うつや不安、他の妊娠中の影響などが関連するか否かを検証することである。

研究方法:
1981年~1984年の間に、出産前に最初にMater Misericordiae病院(オーストラリアのブリスベン)を訪れた母親とその子どもたちを対象とした出生コホート研究であるThe Mater University Study of Pregnancy(MUSP)を用いた。対象者は、出生3-5日後、6ヵ月後、5才時、14才時、21才時に追跡調査された。最初の登録は7223人(内52%が男性)であり、21年間の追跡をした3843人(最初の集団の53%にあたる)を本研究の対象者とし、有効回答3719人を解析対象とした。
妊娠情報は、出生前訪問や記録から得た。妊娠中と出産後の母親の抑うつと不安はDSSIを用いて測定した。アウトカムの21才時の抑うつはCES-Dを用いて測定した。多変量解析を行った。

結果:
女性では、出生体重とうつ症状には逆の関連があり、最も多くの因子で調整したモデルでは、オッズ比=0.82(95%信頼区間=0.73-0.92)を示し、出生体重が1SD増えると、21才時の抑うつは減ることを意味した。
男性では、出生体重とうつ症状には関連がみられなかった。

結論:
出生体重と青年早期の抑うつには関連があることを見出した。女性にだけ関連したことには根拠がある。この関連は、妊娠中の抑うつや不安、喫煙、アルコール摂取などの母体の因子を考慮しても見出せた。従って、成人の抑うつは胎児に起源があるとする理論を支持できた。この関連を裏付ける生物学的メカニズムを解明する更なる研究が必要である。


<ジャーナルクラブでのディスカッション>
・大病院で生まれた7223人を対象に21年間追跡したことは、追跡率が53%になってしまってもすごいデータである!

・なぜ「21才」としたかが分からないため、その理由や意味をIntroで述べてくれるとベター。

・児の出生体重と母親の喫煙の関連の影響は、これまでの文献でかなり指摘されているため、喫煙の考慮(調整)がもう少し丁寧(例えば層化する、など)でも良いのでは。

・脱落者が結果に及ぼす影響について、丁寧に書かれていた。

・多変量解析で、モデルに入れた因子の順番や規則が不明瞭である。また、結果の表からは、モデルに入れた因子のオッズ比およびその変化が分からないが…。

・多変量解析で、21才の横断面での因子の調整がなされていないが、抑うつと横断面での因子の関連を見ないでいいのだろうか。

・上記の若干の疑問があり、本当にfetal originと言えるのか?の疑問もあるが、コホート研究としては規模も大きく、丁寧に解析され、分かりやすく論文にまとめられており、参考になる文献であった。

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